箸休め2

「貴方が、お姉様を誑かしている男ですか!!」


ダリアの妹は開口一番そう言った。

ダリアをそのまま縮めたような少女だ。


「やめて、キリアそんな事ないから。」


「いいえ、言わせてもらいますお姉様!!毎晩、毎晩外に出かけて男に会いに行くとは淑女としてどうなんですか!!」


(それは、そう。)


「違うって、レックスは弟みたいなものだから。可愛がってあげてるの。」


「それでは何故、実の妹と弟をほったらかしているんですか!!」


「それは、ごめんなさい。」


ダリアは13歳なのに、おそらく7歳くらいのフィーネと同い年であろう少女に言い負かされてた。


「ダリア、これはどう言う事だ?」


「私の妹のキリアが私が毎晩いなくなるのを怪しがって、それで着いて来ちゃったな。」


「そうか。後、お前全然頼れる姉って感じじゃ無いな。嘘ついてたな。」


「そんな事はありません。お姉様は頼れる、私の尊敬するお方です!!」


「ありがとう、キリア。」


ダリアがキリアちゃんの頭を撫でる。

キリアちゃんは嬉しそうに撫でられる。


「そうか。姉妹仲直りできてよかったな。じゃあ、俺は眠いからもう、寝るな。」


「ちょっとお待ちなさい!!」


「なんだい、キリアちゃん。子供はもう寝る時間だよ。」


「私は一人前の淑女です。子供扱いしないでください!!」


「そうか、ごめんよ。」


俺は、キリアちゃんの頭を撫でると、噛まれた。ついでに血も吸われた。


「美味しいです。オレンジジュースの味がします。なるほど、お姉様はこの血を吸うために毎晩この方と密会してなさるのですね?」


「そう、そうよ。キリアよく分かったわね。」


「なるほど、では今晩から私もご一緒します。」


今日から、俺の吸われる血の量は増えそうだ。

それから、毎晩キリアちゃんはダリアと一緒にくるようになつた。

ついには、ダリアのこない日まで、キリアちゃん一人で来るようになった。


「一人で来るのは流石に危ないよ。」


「大丈夫です。夜なら私たちの一族ならこの街の好きなところに転移できますから。」


「それは、すごい力だね。でも、それでも危ないよ。」


「その時はお兄様が守ってください。」


キリアちゃんはいつしか俺のことをお兄様と呼ぶようになった。

要は、この子は甘えん坊で、俺にダリアを取られてさびしかつたのだ。

そして、ダリアが長期休暇が終わり、貴族学校が始まって、俺に甘えて来たのだ。


「そういえば、キリアちゃんは双子だったね。」


「根暗な弟がいます。ずっと図書室に困っているような根暗です。」


「勉強熱心な弟なんだね。うちの母さんも知識は力って言ってるしね。」


「ただの根暗ですよ。まともに友達もいませんもの。」


「それはこれから作ればいいさ。」


キリアちゃんは本当に甘えん坊で、膝に乗せないと怒って血を吸って来る。


「キリアちゃんは友達はいるの?」


「もちろんいます。社交も貴族の務めですから。」


「キリアちゃんは偉いね〜」


キリアちゃんの頭を撫でると嬉しそうに抱きついて来る。


「お兄様は人の頭を撫でるのが本当に上手ですね。」


「まあね。妹が頭を撫でられるのが好きだから、よくねだって来るんだ。」


「そうですか。羨ましいです。」


最近は屋上にハンモックを作って、そこで夜明けまで寝ている。


今は、ハンモックで寝ている俺の上に、キリアちゃんが乗っかってる形になる。


「キリアちゃんは甘えん坊だからな。」


「そうです。私は甘えん坊です。なのにお父様もお母様も忙しいのか全然甘えさせてくれません。お姉様も学校に行ってしまいますし。」


「そうか。屋敷には他に甘える相手は居ないの?」


「いません。こんなこと、家族以外は恥ずかしいです。」


「俺は良いんだ。」


「お兄様は血が美味しいので。」


「そうなんだ。」


(さっぱり分からん。)


「お兄様は私に甘えられるのが嫌ですか?」


「嫌では無いよ。でも、寝不足にはなるな。」


「そうですか、、、。」


「今度、フィーネにキリアちゃんのことを紹介して、3人で寝よう。そしたら、もっと長い間甘えられるよ。」


「本当ですか!!」


俺はフィーネと母さんにキリアちゃんの事を紹介した。母さんには吸血鬼って事で突っ込まれたが、この子が領主の娘と知ったら、了承してくれた。

と言う事で、俺は普通に夜寝れるようになった。

キリアちゃんは俺たち家族3人で寝ている布団入って夜を過ごしているらしい。

寂しく無くなって、俺の血も吸えて嬉しいと言っていた。

俺も夜寝られて嬉しい。


フィーネとキリアちゃんは最初はぎこちなかったが、徐々に仲良くなっていた。

一件落着だな。


後日、ミランダに言われて薬屋に行った。


「出来たよレックス!!」


「何が?」


「増血剤!!欲しいって言ってたでしょ。」


「ああ、うん。この前のオークの魔石で?」


「そう!!」


「つまり、増血剤は量産できないって事?」


「そう!!」


「そうか。ありがとな、ミランダ。」


「どういたしまして!!」


(魔物に大量に血を吸われたら、使うか。)


俺は、今日も寝不足なミランダをおんぶして散歩した。

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