奇襲奇襲あんり

作戦。簡単な作戦だ。

クランの幹部を殺害して、そこにわざとらしく痕跡を残して、他のクランと争わせて弱らせる作戦だ。


「お兄様、本当に大丈夫なんですか?」


「何がだ?」


「幹部と言ったら、レベル3の人。さらにはレベル4の冒険者もいると思うのですが。」


「大丈夫だよ。少なくとも大丈夫なやつを狙うさ。キリアは近くまで運んでくれればいいさ。」


酒に酔った冒険者を殺せばいいんだ。

格上だからといって、そこまで気にすることはない。


それから、数日間殺せそうな幹部と敵対組織を調べ上げた。(主に魔女の婆さんと領主軍の情報網を使って。)


ーーー作戦決行の夜


俺は全身に黒いナイフの鎧を纏って


「それじゃあ、俺が合図したら、近くに転移してくれ。」


「分かりましたお兄様。お気をつけて。」


「ああ。」


眷属のキリアに対して距離的な制限はあるものの微量に魔力を流せる。

今回はこれは転移の合図にした。


事前に調査した通りに酔っ払った幹部を暗殺する。


「最初はレベル4の幹部か。」


俺はキリアにそいつの真上に転移してもらって、キリアは即座に転移して俺の家で待機してもらう。


俺は真上から、全力で串刺しにする。


グチャリ


幹部はなんの抵抗もできずに死亡した。


「残りも殺さないとな。」


おそらく同じクランの仲間だと思われる、周りにいる奴らも瞬殺する。


「えっ!?」

「なんだ!?」


普通に路上を狙ってこっろしたので、周りに人が集まってきた。

レベル4の装備を盗んで、他のクランの紋章の入った布を何枚か置いてきて、現場を離脱する。

適当に屋内に入ってから、周りに人がいないのを確認して、キリアに合図を出して、転移を使って迎えにきてもらう。


「すごい速いですね。傷も見当たりませんし。」


「だから言っただろう。レベルが高かろうと人間24時間ずっと好きのない奴なんかいないって。」


「そうですね。お兄様の言う通りでした。」


「よし、次に行くぞ。」


「はい!」


それから1人は同じく路上で。2人は店の中で串刺しに。

一日で合計4人の幹部を殺して回った。


「反応を待つか。」


「そうですね、お兄様。」


「キリア、お疲れ様だな。今日はゆっくり休めよ。」


ーーー2週間後



「おかしい。なんの動きもない。」


「そうですね。特に目立った動きは何もないですね。」


「あれか。あまりにも派手に動きすぎて警戒しているのか。」


「そうかもしれませんね。でも、そのおかげで街でカンザスクランは大人しくしてます。」


「そうなんだよな〜。もうそれで行くかな。」


「と言うと?」


「他の目ぼしいクランも同じやり方を続けていったら、大人しくなるんじゃいないかと思ってな。」


「そうですね。もしかしたらそうかもしれません。」


「そうと決めたからには、他の目ぼしいクランを調査するか。」


「はい!」


素直で可愛いキリアだった。


ーーー鍛冶屋


「アンリ、お前に奴隷を紹介する。」


「奴隷?」


俺はクランの幹部達から奪った武器を素材としてアンリに渡して再利用するついでに俺が買った奴隷を紹介した。


「ああ。元は下級貴族の末娘でな。一時期は高級貴族の家に家政婦として働きに出てた女だ。」


「リリーシュです。よろしくお願いしますアンリ様。」


長いウェーブのかかった栗色の髪をしたスタイルの良い若い女だ。


「こいつはな惚れた男に騙されて奴隷に落とされたらしいんだ。人間恐怖症のお前とは気が合いそうだろ。だから、いい加減布団から出てこい。」


「嫌です。見知らぬ人ですよ!!」


「これから知り合っていけばいいだろ。子供は大丈夫だったじゃないか?」


「子供は大人と違って純粋ですから。」


「リリーシュは家事技能検定で金判定なんだぞ。高かったんだ。」


技能検定とは高く奴隷を売るために付加価値をつけるためのものだ。

基本、金、銀、銅の3段階で評価され、金が一番高評価だ。


「そんなの関係ないです。」


「関係あるんだ。生活能力の低いお前には家事ができる人間が必要なんだ。だから、さっさと布団から出てこい。」


「嫌です!!」


「まあ、腹が減ったら出てくるだろ。家事を頼んだぞリリーシュ。」


「かしこまりましたご主人様。」


「ああ。アンリ、仕事はしろよ。」


今日からクラン狩りだ。


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