ダンジョン

「私もダンジョンに連れて行きなさい!!」


リアスは開口一番そう言った。



「なんでだ?」


「なんでもよ!!別にいいでしょ!」


「良くない。俺はシャーロットを守りながらダンジョンに潜るんだ。なんでリアスも守らないといけないんだ?」


「足手まといにはならないわよ。」


「嘘つけ。」


「嘘じゃないわよ。だって、あんたはダンジョンのこと知らないんでしょ。私は知ってるもの。」


ダンジョンの情報は階層が深ければ深いほど価値があるものだ。

関係のない人間には相当、ふっかけてくるだろう。

それに、その情報がただいい保証もない。


「分かった。連れて行く。」


「当たり前よ。」


「明日、出発するから準備しとけよ。」


「分かったわ。あんたもちゃんと準備しなさいよ。」


「当然だ。」


「ふん。」


「それで、帰りはどうするのじゃ?」


「「あっ。」」


シャーロットは一日に一回しか自分以外を一緒に転移できないのだ。



ーーー翌日


「あんたのせいで、怒られたわ。」


「そうだな。じゃあ、出発するぞ。」


「ちゃんと聞きなさいよ!」


「楽しみなのじゃ!」


俺はシャーロットとリアスの3人でダンジョンに潜ることにした。

昨日、リアスに言われて準備できるものは全部準備した。


「本当はダメなんだけど、特別にダンジョンの裏口から入れてあげる。」


「裏口?」


「そう。表の入り口は大きいけれど、裏口は小さいの。だから、私たち領主一族の専用出入り口なの。」


「へぇ〜。ありがとな。」


「ふん、当然よ。」


「涼しいのじゃ〜。」


「そういえばそうだな。」


「これは、もうダンジョンの中なのか?」


「そうね。もうそろそろよ。」


俺は、生まれて初めてダンジョンに入った。


ーーーダンジョンの中


「涼しいな。」


ダンジョンの中は洞窟だった。

そこらじゅうに光苔があるので、暗くはない。むしろ明るい。


「第一層は洞窟なの。敵も弱いし、さっさと行くわよ。」


「地面、掘って下の階層に進めないのか?」


「無理よ。とてつもなく硬いもの。少なくともわたしたちじゃ無理よ。」


「そうか。それとは別にお前の実力が見たい。杖を持ってる時点で大体わかるが。」


「私の魔法はこの場所じゃ使えないのよ。」


「そういえば、前もそうだったな。お前の力はいつ見せてくれるんだ?」


「5階層で見せてあげるわよ。」


「分かった。それまではあまり俺から離れるなよ。」


「大丈夫よ。言ったでしょ。ここら辺は雑魚ばっかりなの。」


「それでもだ。ダンジョンでは何が起こるかわからないんだろ?」


「ふん。」


どうやら、リアスの口癖は『ふん』らしい。


それから、数時間で5層にたどり着いた。かなり速いペースだと思う。

リアスを連れてきて良かった。


「それで、お前の実力を見せてもらえるんだろ?」


「分かってるわよ。見ときなさい。」


第5層はだだっ広い平原だ。中には太陽らしきものがあり、平原を爛々と照らしている。


「暑いのじゃ。」


「そうだな。暑いな。ちゃんと水飲むんだぞ。」


「ありがとうなのじゃ。」


俺はシャーロットに水筒を渡して水分補給させる。


「よく見とくのよ!私の大魔法を!!」


「見とく、見とく。」


リアスは、呪文を詠唱し始めて、リアスの先に赤い魔法陣が大きく輝く。


「フレア!!」


爆発音が第五層の平原に響き渡る。


ドゴンッッ!!


「おおっ。すごい魔法だな、シャーロット。」


「いや、フレアはこういう魔法じゃないのじゃ。」


「えっ、どういうことだ?」


「フレアは大きい火球をいくつも高速発射する魔法なのじゃ。少なくとも爆裂魔法のようなものじゃないのじゃ。」


「そうなのか、リアス?」


「そうよ。私は出来損ないだから。」


「出来損ない?」


「お兄様とお姉様達と違って私は魔法が上手じゃないの。」


なんか、リアスは急にしおらしくなった。


「要は、魔力が澱んでいるだけだろ。流せばいいじゃないか。」


「どういうこと?」


「どういうことって、言葉の通りだよ。魔法を打つときに杖に魔力を集中させすぎて、、魔力が澱んでいるんだよ。魔法ってのは魔力を集中させながらうまく流さないと発動しないだろ。」


「そうなの?」


「そうなのじゃ。兄上は物知りなのじゃ。」


「シャーロットも魔力感知ができるのか?」


「できないのじゃ。ただ、そういう知識は知ってるのじゃ。」


「そうか。まあ、そういうことだリアス。魔力をうまく流すんだな。」


「どうやってやるの?」


「まずは、魔力を体ん循環させろ。」


「分からないわよそんなことは。」


「しょうがないな。本来ならしないんだが、今は時間がないからな。少し我慢しろよ。」


「我慢?」


俺はリアスの手を握り魔力を流す。


「急に何するのよ!!」


「そんなことより、目を瞑って、流れる魔力に集中しろ。」


「分かったわよ。」


「分かるか?」


「なんとなくは。」


「そうか。じゃあ、なんとなくでいいから、さっきと同じ魔法使ってみろ。」


「分かったわよ。」


リアスは先ほどと、同じ呪文を唱えた。


「フレア!!」


先ほどと違い、一つだけだが大きな火球が平原に着弾する。


「出来た!!」


「そうだな。」


「ダンジョンにいる間は私に魔法を教えなさい。分かったわね!!」


「はいはい。」


「私も教えてほしのじゃ!!」


「分かった、分かった。」


ダンジョン捜索が始まった。



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