6

「瘴気病が悪化してるわね。」


母親はフィーネの容態を見て開口一番そう言った。


「原因は毎日体を動かしたから?」


「違うわよ。この子の場合は私よりも瘴気を体内に溜め込みやすい体質なのよ。」


「それって治るの?」


「体質だから、治らないわよ。大人になったら元気になるとは思うんだけど。」


「それまで、フィーネは生きていられるの?」


「分からないわ。急に悪化するかもしれないし。」


「どうにか出来ないの?」


「せめて、治療が受けられればいいけど。」


「でも、お金がかかるんでしょ?」


「かなりのお金がかかるわよ。瘴気を体内から出すのは光属性の魔法が必要だから。」


この異世界では魔法を使える人間は少ない。

その中でも光属性の治癒魔法を使える人間など極一部だ。

もちろん金持ちたちがこぞって独占しているだろう。


「他に方法はないの?」


「私がどうにかするから、レックスはフィーネのそばにいなさい。」


母さんはそういって、夕方なのに家を出て行ってしまった。

俺とフィーネは家に取り残された。


「おにいちゃん。」


「フィーネ起きたか!どこか痛いところはあるか?」


「いたいところはないよ。でも、からだがうごかないの。」


「そうか。」


「こわいよ。おにいちゃん。フィーネしんじやゃうの?」


「大丈夫だよ。お兄ちゃんがなんとかするから。」


「ほんとに?」


「約束だ。」


「うん、やくそくだよ。」


フィーネは力無く笑い、また寝入ってしまった。


「俺もとりあえず、明日に備えて寝よ。」


俺はフィーネの手を握りながら、フィーネと一緒に寝た。

明日はとにかく朝早く起きて行動しないと。


翌朝、俺は貧民街の奥で人探しをしていた。

俺はこじんまりとした店に入り、店の奥で品物を漁っている爺さんに声をかけた。


「ジジイ、瘴気病に効く薬屋を知らないか?」


「なんだ急に?後、敬語を使え。」


このジジイは、貧民街で盗品を換金してくれるジジイだ。

この一年でたまに落とし物を払うことがあって、それを換金するために母さんに相談したところ、その母さんの紹介でここを知った。


「盗品を売ってるやつに敬語を使ったら盗人だとバレるだろう。それより、瘴気病だ。」


「ここを出入りしている時点で盗人だと周りは思うのじゃが。それで、瘴気病の薬か。妹のことか?」


「そうだ。悪化してな。いかんせん金がないから治療を受けられない。だから、薬があるか聞きたくてな。」


「治す薬はないが、進行を止める薬はある。高いがな。」


「それでいい。どこで買える?」


「どうせ盗む気じゃろうが。辞めとけ、お前さんみたいな子供が薬なんて高価なもの盗めるわけがない。仮に盗めても殺されてしまうのが、おちじゃ。」


「そんなに難しいのか?」


「瘴気病の薬は高いからな、それ相応の盗み対策はしてるじゃろ。」


「そうか、でもどうしても必要なんだよ。」


「そうじゃな、儂の古い知り合いの薬屋なら紹介できるが、薬を買えるかはお前さん次第じゃな。」


「本当か!そいつを紹介てくれ!!」


「情報量として金貨2枚じゃ。」


金貨2枚は日本通貨で20~30万円ほどの価値だ。


「それは高すぎるだろ。あんたは人を紹介するだけだろうが。」


「別に足元見てこの値段を言ってるわけじゃない。金貨2枚が払えないやつはどっちみち薬を買えんじゃろう。そんなやつを紹介したら儂の信用が下がるじゃろ。」


このジジイの言ってることは間違ってないが、子供の俺に金貨など払えない。


「何か稼げる話はないか?」


「子供のお前さんができることなど、しれてるじゃろうが。しかし、子供ながらに妹を守ろうとするお前さんに特別に交換条件でもいいぞ。」


「交換条件?」


「魔石100個と交換ならいいぞ。」


魔石とは、

魔物の心臓部分にに存在する石であり、よく薬に使われる。

魔石を持っている魔物は稀であるが、魔石を持っている個体は普通の個体よりも数段強いらしい。

実際に戦ったことがないから、母さんからの受け売りだけど。


「どんなクズ魔石でも一個銀貨5枚はいくはずだぞ。」


銀貨5枚は5千円ぐらいだ。つまり、こいつは俺に倍ぐらいの金額を払わせようとしているのだ。


「よく知ってるな。でも5歳のお前は俺以外のどこで魔石を売れるんだ?」


「冒険者に売ればいいだろ。一個銀貨5枚で売れるだろ。」


「そう思うならそうやってみればいい。儂は知らんぞ。」


「それでいい。それより金貨2枚を稼げば薬屋を紹介してくれるんだな。」


「もちろんじゃ。」


「一日で用意してやるさ。」


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