捕まる
「下水道の中か。」
ミランダからもらった薬を水増ししまくってようやく、さらわれた先が分かった。
下水道の中は、ミランダにネズミの生捕りを頼まれたときに走り回っているから、道はなんとなく分かる。
下水道の中を走りながら、ミランダからもらった薬を使いまくって、矢印に従って走っていてたらある場所を境に矢印は反対を向くようになった。
「この先か、、、、」
この先は昔、牢獄があった場所だ。攫った子供を管理するには一番適した場所だろう。
気配がする、人がいる気配がする。おそらく人攫いどもの奴らだろう。
「抜け道を使うか。」
監獄の話をフィーネにしたら脱獄ごっこを付き合わされた。
その時に作った抜け道を使って、監獄に向かう。
ちゃんとした鉄格子付きの牢屋は一つしかなかったから、多分そこにミーニャちゃんがいると思う。他は錆びてたし。
黒いナイフを魔力を通してから、巨大化させ鎧のように、服の下で体の全身を覆う。今の俺の最強装備だ。
顔の部分を覆い方はメリンダが手助けしてくれた。
下水道のタイルをいくつか崩すと、子供一人で入りできる穴を見つける。
(良かった、まだ穴は使える。)
奥に匍匐前進で進んでいくと、タイルにぶつかる。このタイルを外すと、牢獄にたどり着いた。
ゴンッ!ゴンッ!
「おっ!ようやく出たか。」
牢屋を見渡すと、4人の少女がいた。その中に獣人のミーニャちゃんがいた。
4人の少女達は俺の急な登場に驚いていた。俺が頭を黒いナイフでフルフェイスのヘルメットみたいにしてるからだろう。
俺はミーニャちゃんに話しかけた。
「ミーニャちゃん。俺だ、レックスだ。」
「レックスお兄ちゃん?」
「そうだ。匂いでわかるだろ。」
ミーニャちゃんは猫獣人なので匂いにはある程度敏感なのだ。
ミーニャちゃんは俺に近づいてくんくんと小さい鼻で俺の匂いを嗅ぐ。
「本当にレックスお兄ちゃんだ!!」
「フィーネにミーニャちゃんが攫われたって聞いてな。急いで探したんだ。じゃあ、帰ろうか。」
「ちょと待ちなさいよ。」
俺がミーニャちゃんを抱っこして牢屋から逃げようとしたが、背後から声がかかった。
「なんでだ?」
「見てわかるでしょ。私たちも助けなさいよ。」
俺と同い年ぐらいの少女だ。この上から目線な感じは貴族に違いない。
「知らん。」
「少し待って下さい。」
今度は他の少女に話しかけられた。
「待たない。じゃあな。」
「このままでは逃げきれませんよ。」
俺は歩みを止めた。
「どういうことだ?」
「奥の部屋で悪魔召喚が行われています。そして、その悪魔召喚は2分と経たず、成立します。」
(2分か、俺一人なら問題ないがミーニャちゃんと一緒なら間に合わないかもな。)
「悪魔?」
「そう悪魔です。66人の子供の魂を使って悪魔は召喚されます。そして、子供の魂を使って召喚された悪魔は子供の魂を求め、暴れます。」
悪魔崇拝のやつらか。この世界には本当に悪魔がいるからな。
「説明されてもな。なんでお前らの魂は使われてないんだ?」
「私たちは召喚された悪魔を強化するために生かされてるんですよ。私たちは色付きの貴族ですから。」
色付きの貴族。暴力溢れるこの世界では貴族は優秀な子供同士を掛け合わせてサラブレッドな子供を作る。
そんな貴族の中でも特別、優秀な血筋の一族。色付きの貴族。
生まれながらにして、精霊魔法が使えるらしい。
魔法は限られた才能のある人間の中で、レベルアップして発現する能力だ。
精霊魔法はさらに使える人間は限られる。
これが生まれつき使えるのは特別を通り越して異常。
「ミーニャちゃんは?」
「単純に間違えて、一人多くさらってきただけでしょ。」
最初に話しかけてきた少女が答える。
(それが本当だったら運が良かったなミーニャちゃん。)
「とにかく、私達と協力して悪魔召喚を阻止して下さい。」
「お前らは何が出来るんだ?」
「私が悪魔召喚を阻止することが出来ます。この子が風魔法を使って助けを呼べます。」
「じゃあ、偉そうにしてるお前は?」
「私の魔法は狭い場所じゃ使いにくいのよ。」
「役立たずってことか。それで、助けってどれくらいで来るんだ?」
「3分もあれば、必ず。」
(やるしかないならしょうがない。ミーニャちゃんを見捨てたら流石にフィーネに顔向けできない。もしもの時は逃げるが。)
「なんで、助けを呼ばなかったんだ?」
「この、魔封じの手錠のせいです。これがなければいくらでも魔法が使えます。」
「分かった。だが、やばかったらお前らを見捨てて逃げるぞ。」
「ふん。平民のくせに生意気よ。」
「それで構いません。」
(どうでもいいが、一人だけずっと喋ってない奴がいるんだが。)
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