「他のパーティから食糧奪えて良かったな。」


「良くないわよ。それにしてもなんであんなに襲われたのかしら?」


「俺たちみたいな子供が良い装備してたからな。良い鴨に見えたんだよ。」


「今まではこんなことなかったのに。」


「どうせ、今まで騎士達ときてたんだろ。だからだよ。」


「そうかもしれないわね。」


「それより10階層のボスだ。どうやって逃げるんだ?」


「簡単よ。トロールは遅いの。出口に向かって回り込むように走り切れば良いだけよ。」


「そうか、じゃあ、俺がしんがりを務めるから、二人は全力で走ってくれ。」


ーーーー階層主前


10階層にはいくつもの扉があった。

おそらく石でできたであろう重厚な扉だ。


「なあ、これのどれが階層主に繋がるんだ?」


「全部よ。全部同じ部屋に出るわ。階層主がいる場所は広いの。」


「なるほどな。出口はどうなってるんだ?」


「出口も同じよ。ちなみに入口も出口もレックスが扉を開けてね。重いから。」


「分かった。シャーロット準備はいいか?」


「大丈夫なのじゃ!」


俺は重厚な扉を蹴って開けた。


ガンッ!!


黒いナイフで足に囲んでいて良かった。


「重っ!!」


開かなかった。重すぎる。


「当たり前よ。横着しないで普通に開けなさいよ。」


「分かったよ。そうする。」


俺は、ゆっくりと全体重をかけながら、扉を開けた。


瞬間


「キャァァァァ!!!」


中から、少女のものと思われる悲鳴。


リアスは飛び出す。シャーロットもそれに一歩遅れて飛び出す。

俺は、重い扉が邪魔で飛び遅れた。


「待て、お前ら!!」


このパーティーでは基本俺が先頭をこなしているので、二人が悲鳴の発生源に近づいたら危険なのだ。

特に、リアスは後衛だし。シャーロットが転移できるから大丈夫そうだが。


俺も二人を追いかける形で飛び出した。

そして、今まで、扉のせいで見えなかったが、悲鳴の発生源を目視で確認する。


「あれが階層主か。」


大きい。確かに階層主はトロールだ。

しかし、あまりにも大きい。おそらく、地上のトロールの3倍はあろうかという巨体だ。高さは15mはありそうだ。

そして、その足元におそらくは犬獣人と思われる大きいバックを背負った少女が逃げ回っている。

逃げ回っていると言ってもすでに満身創痍といった様子だ。


「シャーロットは転移で救出して、リアスの元に転移!!リアスはその場で呪文詠唱しとけ!!」


「分かったわ!!」


「分かったのじゃ!!」


二人は俺の指示通りに行動する。

今までのダンジョン内でも俺が指示をして行動していたから、すぐさま行動に移せたのだろう。


シャーロットがすぐさま、犬獣人の少女を転移で救出して、リアスの元に転移する。

俺は、呪文詠唱しているリアスの前に飛び出た。

前に飛び出たと同時に攻撃を展開する。


「大きくなってもトロールはトロールだろ!!」


トロールは巨体で重いので。足元が弱いのだ。つまり、攻撃するなら足。

俺が、トロールの右足元を串刺しにする。


ザチュ!!


トロールの右足が串刺しにされ、半分は穴を開けただろう。その足はトロールの巨体を支え切れずにトロールは思いっきり転倒する。


「今だ、リアス!」


「言われなくても!!」


リアスはありったけの魔法をトロールにお見舞いする。

一つだけだが大きい火球だ。


「逃げるわよ!!」


「なんでだ!?」


「いいから!!」


俺は、3人を背負って、開けた扉まで全速力で後退する。

すると自動で、扉は閉まったが、扉が閉まる一瞬見てしまった。

トロールが起き上がってこちらに走ってきている姿を。


「なんだあれは?」


「簡単よ。魔物は魔力を使って回復するの。ダンジョン階層主はダンジョンから魔力を提供され続けているから。瞬時に回復して、無制限の体力を持つのよ。」


「どうやって倒すんだ?」


「魔石を壊すのよ。」


「魔石があるのか。じゃあ、簡単だ。」


「無理よ。だって、魔石はあの巨体の中を動き回っているんですもの。」


「そうか。確かに俺一人の攻撃じゃあ、骨が折れそうだな。無視したほうが効率が良さそうだ。」


「二人とも、階層主の前にこの子の手当てが先なのじゃ。」


「そうだったな。まずはこの子から話を聞かないと。」


犬獣人の少女は怯えた様子でこちらを見ていた。


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