街人Aは本気出す
@ininininin
幼児編
家族失ってからの転生
佐藤 健一郎 26歳 トラックとの接触事故で即死。
事故の原因がトラック運転手の過労死ギリギリラインでの運転だったので、
ニュースにはなったがこのニュースで悲しんだ人の中に彼の家族はいなかった。
生まれてすぐに施設に預けられた彼は勉学に打ち込み、奨学金の免除を受けながら、国家公務員試験に合格し大卒で公務員になった後は、23歳に素敵な人に出会い結婚する。
その一年後に女の子を授かり、仕事と子育てに余裕のない日を過ごしていたが、彼にとっては充実した日々だった。心の中で育んでいた家族への憧れが叶ったていたからだ。
しかし、その幸福は長くは続きなかった。25歳の夏、妻が子供を連れて先に妻の実家に帰省していた時、土砂崩れに巻き込まれて二人とも死亡した。
この事実は、少しずつ、少しずつ彼の心を蝕んでいた。
虚な日々を過ごしていた彼の人生は妻と子供が死んだ1年後に唐突に終わった。
「と、思ってたんだが。なんだこれは?」
目が覚めたら、子供になっていた。江戸川コナンみたいな感じだな。
アポトキシン4869でも飲まされたのかもしれない。
「どうしたの?レックス?」
痩せほそった女の人が俺の頭を撫でてきた。びっくりした。
おそらくの俺の母親だと思われる。
「なんでもないよ。おやすみ母さん。」
「母さん?急にどうしたの?」
「なんでもない。」
俺はボロボロの布団の中にくるまって、これ以上のコミュニケーションを拒絶する。
まずは現状理解が必要だからだ。
「そう。おやすみ。」
しばらくすると母親も寝入った音が聞こえた。
「思い出すんだ。この子の中の思い出を。」
取り敢えず、この子の中の記憶を捻り出す。
昔の自分にこんな思い出はないはずだし、何より母親なんていなかった。
この子の記憶に集中すると、多くの情報が頭に入ってきた。
情報はこの子目線ばっかりで、あやふやなところが結構多い。
自分の名前はレックス。
家族構成は母、自分、妹の3人構成。全員銀髪だ。
俺は4歳、妹は2歳だと思う。父親はいない。父親は商人だったと思う。もしくは行商人。しかし、いつからか姿を見なくなった。母親は帰ってくると言っているが。
母親はここ最近体調が悪い。持病が悪化したのだろう。妹もかなり体調が悪い。
おそらく栄養失調と母親の持病が遺伝したのだろう。
「それにしても、二人はやせ細っているのに、俺はそうじゃない。なんでだ?
持病が関係してるのか?」
分からない事は聞いていけばいいか。4歳のいうことだ、質問には快く答えてくれるだろう。
父親がいなく、母親もまともに働けると思えない。
これは、俺が頑張って働いて稼ぐしかないか。でも俺、4歳だぞ。無理があるだろ。
「この二人は俺の妻と娘に重なるな。」
失意のまま死んだ健一郎にとっては良くも悪くも運命的な事だった。
「もしかしたら2人も転生してたりしてな。それはないか。」
死んだ2人のことを思い出して、感慨深くなっていると、記憶の片隅に興味深いものを発見する。
それは、異世界物のアニメでよく見た獣人、エルフ、魔物の存在。どうやら異世界転生らしい。もしかしたら、冒険者とかいるのかもしれないな。
「一応やってみるか、ステータス。」
レベル 1
力 :8
身の守り :7
素早さ :10
器用さ :8
魔法力 :3
頭の中に急に数字が頭の中に流れ込んだ。おそらくこれがスータスなのだろう。
「本当にあるのか。これについても母親に聞かないとな。」
知らないといけないことが山ほどある。
言葉が通じているのも気になるし、不思議と落ち着いているのも気になる。
これからどうするか考えていたら自然と寝入っていた。子供の体には夜更かしは難しかったのだろう。
◇ ◇ ◇ ◇
翌朝、布団から起き上がれない妹に母親がご飯を食べさせながらいろいろな事を質問していった。
ステータスのこと、病気の事、魔法の事、思いつくことはいくらでも聞いた。
母親は息子の変わりように驚いていたが、快く答えてくれた。
レックス君は昨日まで4歳の子供だったしな。
朝食のクソ硬いパンを食べた後。
俺は石造りのボロボロの集合住宅の外に出て、周囲の散策を開始した。
「取り敢えず、家族の食い扶持ぐらいは稼いでくるか。」
どう考えても、家族の食事量が少ない。
4歳の俺の食事量が一番多いってどういうことだ?
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