第39話 再会
「要殿はサナ殿への永遠の愛を誓いますか?」
「はい、誓います」
結婚式は順調に進行し、神父から誓いの言葉を問われていた。
要は少し前までが嘘のように、本心からサナへの愛を誓った。
「サナ殿は要殿への永遠愛を誓いますか?」
「誓います」
サナは要より即答をする。
要に助けられた日から心は決まっていたので、サナはむしろ待ちきれないくらいであった。
「では誓いの口づけを___」
神父の言葉に従うように、二人はキスをした。
「おぉぉぉ!」
「トルギス王国の未来に祝福を!!」
勇者とオルフェウス王国で力のあるフォルマー家がトルギス王国に来たことで、会場に居る貴族たちは歓喜した。
結婚式と挨拶回りを一通り終え、会場内ではそれぞれが自由に料理を食べたり、談笑する人たちで溢れかえっていた。
そんな中、要とサナは涼むために熱気に包まれた会場から広めのバルコニーへと移動する。
「わたくしは幸せです。これからはより一層、要様に尽くさせていただきます」
サナは要の右手を両手で包み込むように握り、幸せ一杯の表情で告げる。
「こんな僕ですが、サナさんを幸せできるように頑張りますっ」
サナの想いに応えるように、要は幸せにすると意気込む。
「わたくしだけではなく、子供のこともお願いします」
二人の間に体の関係は未だにないが、想いが通じ合った今日からは子作りにも励むことになる。
そうなれば遠くない未来に産まれるであろう二人の子供についてもサナと要は考えを巡らせるのであった。
「はい、幸せな家庭を築きましょう」
「ふざけるなぁ! 要殿の隣に居るべきは貴様ではないっ」
顔を隠すようにフードを深く被り、会場の隅で結婚式を見ていた人物が要とサナの前に現れて叫び散らかす。
高ぶった感情を抑えきれないその人物は要の目の前まで歩み寄ってフードを取る。
「要殿、レーナだ。迎えにきた!」
気迫のある表情で顔向けをしたレーナは短く正体を説明し、要の手を取ろうとする。
しかし、その手は要に触れることはなかった。
「誰ですか……?」
近づいて手を取ろうとしてくるレーナから要は距離を取った。
真剣な面持ちで要は自分に名乗ってきたレーナに聞く。
「何を言っているのだ……? ワタシはレーナだぞ!?」
思いもよらなかった要からの問いにレーナは驚愕する。
そして、チラッと横目で見たサナがうっすらと笑っている姿から、レーナは自身に関する記憶を要は封印されていると直感で理解する、
そのことに気づけたのはレーナの持ち味である野生の勘だけではなく、実際にアイギスが記憶を封印する魔法を行使している現場を何度も見たことがあったからである。
「許さんっ、絶対にこのままでは終わらせないぞ!」
レーナは血走った目でサナを睨み、怒りを体現するかのように腰から剣を抜く。
この場でサナを殺し、要を連れ去ろうとレーナは試みる。
「この侵入者を捉えなさい。殺しても問題ございません」
サナが命令口調で言うと、すぐさま暗殺部隊と警備兵が出てくる。
いくらレーナでも敵地で囲まれれば無事ではいられない。
無茶なことはするが無謀なことはしないレーナは、出した剣を納めた。
「必ず、要殿を取り戻すっ。その時まで待っていてくれ!」
今は要を連れ戻すことが出来ないと悟ったレーナは撤退することにした。
最後にレーナは要の顔を目に焼き付けるように見つめたのち、バルコニーから飛び降りて走りさっていくのであった。
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