第2話 流されるまま新生活が始まってしまった。
やっとのことで見つけた日本へ帰るゲートが消滅したことにより、要はその場から一歩も動けないくらい気を落としていた。
そんな要に忍び寄る影があった。
「あらあら、唯一の帰還方法であるゲートが消滅していますねっ」
絶望している要とは対照的に、ユアはにこやかな表情と声音から分かるほど上機嫌であった。
「僕は、これからどうすれば……」
「とりあえずは私達の城で暮らしましょう! それがいいですわっ」
こうして、要の異世界生活は延長戦に入ることになった。
ユアは疲労により地面で寝ていたレーナを起こし、要の手を引き馬車へと乗った。
馬車には既に出発の準備を終えているアイギスとサナが席に付いていた。
ゲートが消滅したことで動揺をしていない要なら、酔いつぶれて寝ているはずの二人が身支度をして馬車に乗っていることに疑問をもっただろう。
しかし、冷静さを欠いている状態では、出かける準備支度が良い二人に「最初から出かける予定だったのですか」と聞くことはできなかった。
馬車に揺られること三日。
ようやく、王城に到着した。
流石に立ち直れはしないが、要はまともに考えることができるまでには回復していた。
そして、要は城を見てまたもや驚いていた。
「ここはどこですか?」
要はオフェウス王国に召喚されてた時に拠点としていた王都と思っていたので、新しい場所に驚いていた。
オルフェウス王国の国王夫妻も住んでいる王都の城ではなく、周りが海に囲まれた海上にある城に連れてられていた。
「ここは新しい私たちの新居です」
エッヘンと効果音が聞こえてくるような胸を張った態度でユアは要の疑問に答えた。
「これからずっと、ここで暮らしていくのですよ?」
サナは「ずっと」の部分を強調させ、要の腕に絡みつく。
「うむ。ワタシも近衛騎士団の団長という責務はあるが、要殿の傍に居ることにした!」
王国の剣と称されるレーナが王都から離れてまで要と居ることを選んだ。
王国よりも自身を優先された要は気持ちが重たいなと心の中で感じていたが、それを言わずに心中に留めることにした。
「日本のことは忘れて、これからのアイギス達のことを考えよ?」
アイギスは要の背中を押すように城の中へと誘導していく。
そして、要たちと使用人達が城へと渡りきると、海上の城と陸地を繋いている唯一の橋が閉ざされてしまった。
そこはまるで囚人を逃がさないために孤立させた監獄そのものであった。
そんなことなど知らない要は城の一番奥へと引っ張られるように進んでいくのである。
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