第8話 城の外へ
「城の外に出たいです」
リビングでくつろいでいる女性達に要は要望を伝える。
海上の城に来てから二週間もの間ずっと閉鎖的な空間で生活をしていたので、要は解放感を求めて城の外に出たい気分になっていた。
本当なら外出するのに誰かの許可など必要ないが、ここではそうはいかなかった。
なぜなら、要はリビングに足を運ぶ前に外へつながる大門へ行ったところ、門番に女性達の許可がないと通せないと言われていたからだ。
もちろん、要は仕事の一環として門の開閉は許可制になっているだけだと思っており、まさか自分が閉じ込められているとは考えもしていない。
「どうして外に出たいのですか? ここに何か不満でもあるのですか??」
ユアが若干焦りながら要に聞く。
平静さを装っているが、内心は要が遠くに行ってしまわないか不安になっている。
「衣食住が整っているこの城に不自由はありません。ただ、偶には外の空気を吸いたいです」
「そ、そうですね。では、バルコニーがあるのでこちらへどうぞ」
「いや、草原や街並みなど陸地の風景が見たいという意味で……」
ユアがバルコニーへと案内しようとするので、正しく自分の要望が伝わっていないと思った要は改めて説明するが、途中でレーナに遮られることになる。
「さぁ、早くこちらへ!」
強引にレーナに引っ張られるがまま、バルコニーに要と女性達は移動した。
女性達が自分の願いを叶えようと努力してくれたので、これ以上要は何も言う事は出来なかった。
「あの、なぜ僕の両腕を掴んでいるのですか?」
バルコニーに出た瞬間から右腕にはレーナ、左腕にはアイギスがガッチリと要の両腕を掴んでいた。
要と触れ合いたいという気持ちもあるが、逃げないようにするためという意味をある。
「ワタシに腕組をされるのは嫌なのか?」
「いえ、こういうのに慣れてないので気まずいです……」
レーナの豪快さの前に要は成す術がなかった。
そのタジタジな要の反応を見て、レーナはますます上機嫌になっていく。
このままでは居心地が悪いので、要は遠回しな表現で離れて欲しいと伝えることにした。
「別に逃げたりなんかしないので、拘束を解いてくれると嬉しいです」
まるで犯罪者を逃がさないために拘束されている様に似ているなと要は感じたので、そのまま思っていたことをレーナとアイギスに伝えた。
「え? それどういう意味??」
アイギスは自分たちが要を監禁していることがバレたのかと勘繰る。
監禁されている真実を知らない要は深い意味で言った訳ではないので、迫真なアイギスの問いに少しだけ違和感を覚える。
「モノの例えで言っただけです。すみません、失礼な言い方でしたね」
違和感の正体は失礼な事を言われて気分を害したからと勘違いした要は、アイギスとレーナに頭を下げる。
「許す。だから、今日はこのままくっつかせて」
美少女二人に腕を組まれるのは男子の憧れであるので、要も悪い気はしていなかった。
ただ恥ずかしいだけであるので、失礼な事を言った責任としてしばらくの間は羞恥心を我慢することにした。
そして、日が落ち始める頃には場内へ戻り、それぞれがお風呂に入ったりなど自由な時間を過ごしていた。
だが、要はどうしても外に出歩きたかったので、再度こっそり門番のところへ足を運んでいた。
「すみません、外出したいので門を開けてください。あ、ユア達に話はしています」
外出の許可などは貰っていないが、話は通していたので十分だろうと要は楽観視していた。
「え、本当ですか!?」
ただ外出するだけで随分な慌てようだなと要は感じたが、門番の質問に対して「はい」と肯定した。
こうして、要は二週間ぶりに城の外へ出ることが叶った。
この外出が原因で、後ほど城の中で大騒ぎになることを要は知らない。
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