第45話 知らない内に男になっていた
ナターシャの遺体を使用人に始末するように指示をした後、ユアは食事と風呂を終えて部屋で眠りにつこうとしている要の部屋へ行く。
ユアが使用人にナターシャが死んだ理由を適当に説明した際、聖女と祀り上げられているユアの言葉を微塵も疑わずに受け入れるのであった。
「起きていますか? ユアです。入りますね」
ユアはマナーとして部屋に入る前にノックをするが、中からは何の反応もない。
そのことが心配になり、要の許可を待たずにユアは部屋に足を踏み入れる。
ユアが部屋の中に入ると、ベットに横たわっている要を発見する。
「どう、して……」
要は汗でびっしょりと服を濡らしており、泣き声のように何かを呟く。
上手く聞き取れなかったユアは要が起きていると思って傍にいくが、近づいて様子を確認すると夢にうなされていると理解する。
苦しそうな夢から要を開放するため、ユアは要の体を揺さぶって起こすことにした。
「要様、起きてください!」
「危ないっ、避けてください!」
大声を出しながら要はバッと上半身を飛び跳ねるように起こす。
「大丈夫ですか!? ここは要様の部屋ですから安心してください」
まともではない要の挙動から精神に傷を負っているとユアは察知する。
そして、夢と現実の区別がつかなくなっている要を落ち着かせる。
「ここは……。戦地じゃない……」
要は周囲を見渡し、王城にある自分に宛がわれた部屋に居ることを確認する。
要は戦地で一緒に戦った兵士が死ぬ夢を見ていた。
それは実際に起きた事であり、勇者の力を持ちながら仲間の命を救えなかった後悔が原因で悪夢として何度も体験をしていた。
要は少し前まで普通の高校生だったので、仲間の死忘れられないのも無理はないのである。
「何も心配いりません。全部悪い夢だったのです。だからゆっくりと休んでください」
仲間の命が消えていく絶望に苦しむのは初めて戦争から帰ってきた兵士が通る道なので、要も同様の理由だと察したユアは要が苦しまないように戦地で起こったことは夢であると囁く。
そして、ユアは自分の服を脱ぎ捨てて産まれた状態の姿になる。
「なので、今は私に身を委ねてください___」
廃れた心と体を癒すため、ユアは要に奉仕する。
要も目は虚ろながらも快楽に身を任せ、本能のままに最後まで遂げるのであった。
次の日、要は久しぶりに安眠をとれたことで体も心も晴れていた。
「でも、昨日はあんな夢を見るなんて___」
起きてから最初に要の頭に浮かんだのは、ユアと肉体関係になるという妙にリアルな夢だった。
そのことを思い返し、要は顔をリンゴのように真っ赤に染める。
また、ユアは要が目を覚ます前に部屋から出ており、身だしなみを整えていたので要が夢と勘違いをするのも仕方がないのである。
実際には要とユアはお互いに初めてを捧げたのだが、ユアは意識がハッキリとしている状態の要から求められることを望んでいるので真実を告げることはしない。
ユアは要が起きたのを確認してから、素知らぬ顔で部屋へと入る。
「おはようございます。昨日はよく眠れましたか?」
「あ、ユアさん。はい、その。すみません……」
要が昨日の事を覚えているのか確認するためにユアは聞き、それに対して夢で見たことが頭に過ぎったことで要は咄嗟に謝ってしまう。
「どうして謝るのですか……?」
もしかして要は全てを覚えているのかと勘繰り、確認するためにユアはさらに質問をする。
「夢で僕とユアさんが___。いえ、何でもありませんっ」
要は思わずユアと男女の関係になった夢を見たと言いそうになるが慌てて誤魔化す。
その様子から、ユアは要が狙い通りに勘違いをしてくれていると分かったことで安心する。
そして、要の視線がジロジロと眺めるように自分の体を見てくるのを感じたユアは、好きな人を欲情させていることに胸が高鳴るのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます