第28話 要は遂に決心する
「何ですか、その主従の儀式? というのは……」
ユアは主従の儀式について知らないことを要にアピールする。
いつもなら騙されていた要だが、仲間というフィルターを外してユア達を見定めているので不自然さが目に付いた。
「いえ、知らないのならいいんです。すみませんが、明日は何も手伝えないです」
そもそも儀式に出なければ主従の契約によって拘束されることはないと要は考えた。
それと同時に、この提案を受け入れてくれればヘレンの言っていたことは勘違いだったとなる。
いや、要は勘違いと思いたかったのである。
「要の手伝いは必須。居ないと困る」
アイギスの言葉によって要の僅かな希望は潰える。
しかし、実際にユア達の暴挙を直接見た訳ではないので完全に見限ることはできなかった。
「要様は誰かに変なことを吹き込まれたのではないですか?」
サナは確信に迫ったことを言う。
自分たちは要の前でボロを出していないので、急に疑い持った発言をしたことから第三者の介入に勘付いていた。
サナは要のことを本人以上に知り尽くしているからこそ、要らしからぬ言動には敏感であった。
「そんな人は居ないです。僕が明日の儀式について気になっただけです……」
このままでは命を懸けて危険を知らせてくれたヘレンに危害が及ぶと感じた要は、あくまでも自分の意志での発言と伝える。
「優しい要様を私利私欲ために利用しようと、私たちから切り離そうと考える者もいますので心配なのです」
サナの指摘通り、過去に要の力を利用するために近づくものは沢山いたのである。
そのことを引き合いに出すことで自分たちは要の味方であり、他の者が敵であると認識させようとしていた。
しかし、明日の儀式への不参加を了承してくれない限りは要がユア達を信じることは不可能である。
要も大切な仲間であるユア達を信じたい気持ちが大きいので、儀式への不参加を認めて欲しいという気持ちで一杯であった。
「ブロンズの髪の使用人と護衛の方々、前に出てきてください」
ユアは要に余計な事を吹き込んだ犯人捜しをするため、ブロンズ色の髪の者を呼び出す。
要の接触出来る者は使用人と護衛くらいだったため、容疑者はこの中に居ると分かっていた。
当然ユアの命令に逆らう事や髪の色をごまかすことなど出来ないため、五名の使用人と三名の護衛が前に出てくる。
その中には当然ヘレンの姿もある。
「まず、男性の方は下がって構いません」
ブロンズ色の髪が長かったことに加えて要からした女性の匂いを鑑みた結果、ユアは男性を下がらせる。
残ったのは四名の使用人だけになり、容疑者が絞られていく。
「私は責めるつもりはないのです。ただちょっとした行き違いによって、要様に間違った情報が伝わっただけと考えています。なので、自分から名乗り出てくださいませんか?」
ユアは使用人の目を一人ずつ見ながら言う。
ユアと目が合う使用人は例外なく抗えない恐怖心で青ざめる。
使用人たちは要が見ているので表向きは罰しないとユアは言っているが、そんなことはありえないと分かり切っていた。
「こんなことは辞めてください……。僕の変な思い付きだったので、第三者は存在しません」
要はユア達の言動にショックを受け、残念なりながら言う。
そして、間違いであって欲しかったユア達の一面を知り、要はヘレンからの警告を信じることにした。
「要様がおっしゃるなら、そうしましょう。 誤解という事なら、明日の儀式には参加してくれるのですよね!」
「はい……」
ユアは要の意に背く行動はこれ以上無理だと判断して切り上げるが、最後に要の儀式への参加については取り付けた。
その後、容疑者四人の使用人は別室に隔離され、常に監視されることになる。
ユア達が要に今まで隠していた本性を一面だけとはいえさらけ出すようになったのは、明日の主従の儀を絶対に成功させるために躍起になっているからである。
主従の儀さえ結べば、例え憎まれていようが関係なく、心から要を支配可能だからであった。
犯人探しが行われ、儀式を明日に控えた夜___
要はヘレンが隔離されている部屋に忍び込み、助けることにした。
監視役が十名以上居るが、弓の勇者は隠密行動が得意なのでいとも簡単にかいくぐる。
そして、ヘレンを連れてアイギスの家から二人は抜け出した。
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