第23話 突破口
「そんなに泣かないください」
要は泣き止まないアイギスを頭を撫でて妹のようになだめる。
それでもアイギスの涙が止まるのにはしばらくかかった。
「だって、要の目が……」
「このくらい大丈夫です。それよりもアイギスから何も取っていかれなくて良かったです」
要は本心から自分よりもアイギスの体を心配していた。
そして、アイギスは気付いく。
ケンタウロスはアイギスの大切なモノが対価だと言っていたことに___
一言もアイギスから奪うとは明言されていない。
この一カ月間でアイギスの中で要の存在はとてつもなく大きなモノとなっていた。
身動きのとれない要に迷惑をかけるのが心苦しく、これ以上この地に留める理由を無くすために死にたいと感じていたのであった。
それ程までにアイギスは自分よりも要のことを遥かに大切に想っていた。
だから、アイギスは対価を奪われよりも辛くて苦しい嘘を吐くことにした。
「約束を守れない要なんて嫌い。だから、もうアイギスの前から消えて」
心が引き裂かれるような痛みを乗り越えて、アイギスは微塵も考えていないことを言う。
すぐには要のことを嫌いにはなれないけど、要のために一か月後には嫌いにならなくてはと決意を固める。
だから、これ以上要の事を好きにならないためにアイギスは自分から離れてはなれてもらおうとした。
「辛い思いをさせてごめなさい。でも、アイギスから奪われないのなら約束は無効ですね。次は必ずこの呪いを解きます」
冷たくなったアイギスの体を温めるように、要はアイギスの顔に手を添えて絶対に殺さないという意思を伝える。
「要もアイギスみたいになっちゃう。その前にアイギスを殺せば、要は何も奪われない。だからお願い……」
アイギスは必死に訴えかけるが、要が頷くことはなかった。
好きなご飯や日本の話をして欲しいなどとリクエストをすれば絶対に叶えてくれた要だったが、このお願いだけは何があっても受け入れるつもりはないのであった。
それから半年後__
要は右耳、左足、嗅覚、味覚、免疫力などあらゆる方面から体の機能を奪われていた。
「お願い、もう耐えらない。要が奪われていく姿は見てられない……」
アイギスにとって次第に弱っていく要を見るのは生き地獄だった。
今日も要に自分を殺してもらうように説得するが、いつものように躱されてしまう。
そんな頼みごとをするアイギスの様子から、要は遂に現状を打開する方法を閃く。
「そうか、最初からそうすれば良かったんですね」
要はアイギスから教えられた召喚陣をかいて発動させる。
同じ召喚陣だからといっても同格の他の悪魔が召喚される可能性もある。
しかし、アイギスが行使した時と同じく光が怪しい黒味を帯びた色に変わっていき、召喚陣から赤い角を生やしたケンタウロスが姿を現した。
「ようやく会えましたね」
ずっとアイギスを苦しめていた元凶を前にした要は、仇を取れるチャンスに恵まれたような感覚になって不敵な笑みを浮かべる。
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アイギスの回想に思いのほか熱が籠ってしまい長くなりました<(_ _)>
次で回想は終わりますのでお付き合いくださいませ!!
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