第51話 ユアの本当の力

「んんんっ!!」


今もレーナに口づけをされている要は抵抗を続けているが、力の差がありすぎて何度も振りほどこうとするも無駄であった。



しかし、唐突にレーナは要を開放することになる。



「その汚い体で要様に触れないでくださいっ!」


サナは侮蔑の言葉を吐きながら短剣をレーナの首を目掛けて振りぬく。



だが、短剣はレーナの首筋を捉えることはなく、代わりに金属音が鳴り響いた。




「なんだ。要殿に群がる虫ではないかっ」


レーナは目に見えない速度で腰から剣を抜き、サナの短剣を受け止める。

そして、侮辱されたお返しといわんばかりに暴言を放つ。





剣のぶつかり合いの均衡は長くは持たず、徐々にサナの方へと押し込まれていく。

暗殺などの影から奇襲を掛けることを主戦場にしているサナよりも、近接特化型のレーナの方に力勝負になれば軍配が上がるのであった。





流石にこのままでは押し込まれて殺さると察知したサナは地面を蹴って後方へと移動し、レーナとの距離を取る。



「あなたみたいなゴリラは要様に相応しくないと思うのですが、自覚がないのですか?」


サナは本心と挑発を兼ねた言葉をレーナに投げ掛ける。

上手く挑発に乗り、冷静さを失って突進をしてきたところを刈り取ろうと試みていた。



しかし、サナの発言に反応したのはレーナではなかった。




「まったくその通りですね。女はもとより、人間を捨てている者に要様は渡せないです。まぁ、人間相手でも私の要様は誰にも譲らないですけどね」


サナの暴言に便乗するようにユアは言葉を用いてレーナを貶めようとする。




そして、暴言を聞いたレーナは標的をサナからユアに変え、一直線に最短で斬りかかっていく。




「止まりなさい」



あと数センチでレーナの剣がユアの顔に触れる距離でピタリと止まってしまう。




「なんだこれはっ! クソ女が目の前に居るのに……」


レーナはユアの命令のままに体が止まってしまったことに驚愕をする。


その滑稽な様子を見たユアは満足そうに説明を始める。



「上手くいくものですね。これは言霊といって、全ての生き物は私の命令に従うのです」


魔王を討伐をする旅でユアは言霊の力を一度も使っていなかった。


なので、レーナだけではなく、サナも初めて見るユアの力に動揺するのであった。




「何故、今までこの力を隠していた?」


言霊を使っていればパーティーメンバーの危機をもっと簡単に対処出来ていただろうと思い、レーナは問いただす。




「確かにレーナやサナの命の危機は何度もありましたね。その度に私は心の中で思っていたのです。早く死ねば良いのにと__」


ユアは動けないレーナを品定めするように背後へと回りながら言い放つ。


言葉の端は死にはユアの狂気が込められており、一般の人は聞くだけで震え上がるくらいにおぞましさを醸し出していた。




「ということなので、そろそろ退場していただきますね」


ユアは小さな針を胸ポケットから取り出し、それを動けないレーナの首に突き刺す。


すると、レーナの顔色は次第に悪くなっていき、最終的には倒れんでしまった。



「えっ。その人を殺したのですか……?」


衝撃的な一幕のあまりに要はユアに問いかける。



「安心してください、生きています。まだ、役割がありますので」


要からの問い掛けなので、要の傍まで歩み寄りながらユアは笑顔で邪気のはらんでいない言葉で答える。




「何をするんですか……」


要はユアが顔に手を伸ばしていく。

先程の光景を見ていた要は、何かされるのではと心配になる。



「早く私で上書きをしないとですね」


ユアは要の疑問に答えるなり、すぐに要にキスをする。



自分の舌を要の舌と絡ませるように芯までしゃぶり尽くすのであった。

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異世界を救ったから日本へ帰りたいのに、ヒロイン達が全力で邪魔をしてくる 富士町ペンシル @fujimachi777

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