第29話 リリアナの友達


 翌朝。俺達二人は街へと繰り出していた。リリアナの友人であるサラという少女に会うためだ。

 ちなみにだが、今の俺の姿は完全に人間の姿になっている。服装も普段着ているものを着ている。ただし、フード付きの外套は着ている。俺達が向かった先は街の中央にある噴水広場だ。そこにはたくさんの人が行き交っている。屋台や露店などもたくさん出ている。この街は王都ほどではないが、それなりに大きな都市だ。

 俺が歩いていると、視線を感じる。チラホラとこちらを見ている人もいるようだ。おそらくだが、リリアナがいるからだと思う。隣にいる金髪碧眼の少女はとても可愛いからな。きっとすれ違う人は皆振り返っているに違いない。

 しばらく歩くと、噴水が見えてくる。そこに一人の女性が立っていた。年齢は十代後半くらいに見える。身長は高くスタイルもいい方だが、どちらかといえばスレンダーといった感じの体型をしている。髪の色は茶色っぽい黒で長さは肩にかかるくらいの長さのセミロングヘアにしている。そして頭には猫耳がついている。



「あっ!サラー!」



 リリアナが嬉しそうに駆け出す。



「リリアナ!久しぶり!」



 女性は嬉しそうな笑顔を浮かべる。



「うん!元気だった?私はすっごく元気だよ!」

「あたしもだよ。ところで、そちらの方々は?」

「えっとね、私のお父さん!」

「初めまして、オーフィアと言います」



 俺はペコリと一礼をする。



「お父さん……? リリアナを捨てたんじゃなかったの?」

「そっちじゃなくて、新しいお父さん!」

「……?」

「リリアナ……」



 少し面倒なことになりそうだ。……説明してあげたほうがよさそうだな。



 ***



「リリアナちゃんを拾った方でしたかこれはどうも失礼を……」

「いえ、いえ。いろいろな事情があるようで……」



 リリアナの両親の話はいまだに聞けていない。

 ……聞くつもりもないが。



「それで、サラさんはリリアナとどんな関係が?」

「昔捨て子だった彼女を世話した時期がありまして……その時に仲良くなったんですよ」

「そうでしたか……」

「あの時は本当にお世話になりました」

「気にしないでください。リリアナちゃんが幸せそうに暮らしているなら、私も嬉しいですから」

「ありがとうございます」

「リリアナちゃんが、住める家を持てて本当に良かったです。私ではどうすることも出来なかったですから」

「ええ、そうですね」

「リリアナちゃん、また会いに来てくれてありがとね」

「私もサラに会えて本当に嬉しいです」

「それじゃあ、どこかのカフェにでも行って一緒にお茶でもしようよ」

「はい!」



 俺達は近くにある喫茶店に入った。店内に入ると、店員に案内されて席に着く。



「私は紅茶をお願いします」

「私はケーキセットをお願いします」

「かしこまりました」



 注文を終えた後、俺達の会話が始まった。



「リリアナちゃん、元気にしてた?」

「はい、元気でしたよ」

「そっかぁ、それはよかったよ」「サラこそ、元気にしていましたか?」

「もちろん、バリバリに元気さ!」

「ふふっ、それは良かったです」

「リリアナちゃんの方は最近どうなの? 新しい暮らしになったんでしょ?」

「はい! パパもやさしくしてくれますし、毎日が楽しいですよ!」

「そう……それは良かった。私の時は大したことしてあげられなかったから……」

「いえ、サラさんの時も楽しかったですよ!」

「そ。やさしいのね」



 そんな二人の仲のいい姿を見て、俺は微笑ましく思った。



「そういえば、リリアナちゃんのパパさんはどこの国の人なの? 見たところ、人間のようだけど……」

「! えっとですね……」

「まあ、隠れ里でひっそり暮らしてると思ってくれ。たまに街にはでてくるけどな」

「へえ、そうなんですか」



 詮索されると何か困ったことになりそうだからフォローした。リリアナが少し小さく頭を下げてくる。このくらいの事はしないとな。それからはリリアナの近況報告が続いた。

 リリアナが話す内容はどれも楽しそうだった。

 サラはリリアナのことをとても心配していたらしい。リリアナが幸せに過ごしていることを知れたことが、一番嬉しかったと言っていた。



「そろそろ出ましょうか」

「そうだな」



 俺達三人は会計を済ませて、店を後にする。



「リリアナ、これからどこにいくんだ?」

「ちょっと買い物に行きたいなって思ってるんだけど、付き合ってもらってもいいかな?」

「ああ、いいぜ」

「やったー」



 俺達三人組は歩き出した。



「パパ、これなんか似合うと思うんです」

「お、おう」



 俺が今いる場所は、リリアナが服を選んでいる場所だ。俺が適当に選ぼうとすると、リリアナが俺に服をあてながら、あれでもないこれでもないと悩んでいた。



「これとかどうかな?」

「おお、いいんじゃないか?」

「本当ですか!?」

(……やれやれ)

「じゃあ、試着してみますね!待っててください」



 リリアナが着替えを終えて戻ってくる。



「ど、どうかな……?」

「よくにあってるぞ」

「ほんとに?」

「ああ」

「えへへ」



 俺が選んだのは白いワンピースだ。



「じゃあ、次はサラちゃんにあうものを選びに行こう!」

「え、ちょ、おい!」



 リリアナはサラの手を引いて走り出す。



「サラ、どれが似合いそうかな?」

「う~ん……このあたりとか?」

「わぁ、かわいい!」



 リリアナは目を輝かせている。サラも自分の娘のように接していて、とても可愛がっているように見える。俺は二人の様子を眺めていた。

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