第34話 ミハルの訪問
「リーリアーナちゃん、あそびーましょ」
その声は、ミハルの声であった。
「……突然何しに来たんだ」
とりあえずやってきた彼女らに応対する。
「ちょっと近くまで来たので、お目見えしようかと思いまして! あ、これお土産のブタのお肉です」
「どうもこれはご丁寧に。……おーいリリアナーよんでんぞー」
「は、はいっ!」
リリアナは慌ただしく玄関へと向かう。しばらくして、リリアナはミハルとアリサを連れて戻ってきた。
「おじゃましま~す」
「お、お邪魔いたします」
二人は靴を脱いでからリビングへと入ってきた。……この二人、仲が良いみたいだな。
「前の誘拐事件の時はありがとうございました」
アリサが頭を下げる。これはご丁寧に。
「あの事件以降、二人でパーティを組んでるんですよ!」
ミハルが楽しそうに話す。そうなのか。
俺は椅子に座るように促してから話を切り出す。
「それで今日は何しに来たんだ?」
「いえ、近くに寄ったので遊びに来ようかなと」
「それだけのためにわざわざここまで?」
「はい! ついでにリリアナちゃんを街に連れたくて!」
笑顔で即答するミハル。……まったくこの子は。相変わらずだな。
「オーフィアさん、今失礼なこと考えませんでしたか?」
「いや別に」
「本当ですか?」
「ああ」
「なら良いんですけど……。あ、リリアナちゃん、このお菓子おいしいね」
ミハルがリリアナに話しかける。
「はい、美味しいですね」
リリアナが微笑みながら答える。
「勝手にお菓子を食うんじゃねえ」
「まあ、いいじゃないですか」
まあちょっとくらいならいいが……
「それで、リリアナちゃんを連れてっていいですか?」
「うーんどうだリリアナ? 行きたいなら言っていいが」
「はい! 行きたいです!」
「んじゃしょうがねえ行ってこい」
「わーい」
そういうことになった。
***
ミハル・アリサ・リリアナの三人が街の中を歩いている。
「それで、どこいきましょうか!」
「そうだな、まずは服屋に行こっか」
ミハルが提案する。
「えっと、それはなぜでしょうか?」
リリアナが不思議そうに尋ねる。するとミハルとアリサが説明を始める。
ミハル曰く、リリアナの服装は少しボロいらしい。そこで新しく買おうということらしかった。
「ボロいって……これはパパからもらった大事な服なんですよ!」
「あははーごめんごめん、でもいろんな服、あった方がいいでしょう?」
「うっ、まあそうですけど……」
「それじゃあ、行きましょうか!」
そういってアリサが声をかけた。
***
「……何してるの?」
「はっ! ユリス!」
突如として後ろから声をかけて来たのは、彼女であった。
「てめえなんでこんなところに……!」
「ちょっと近くまで来たから寄ろうとしただけよ……で、何してるの?」
「うっあいつらが一緒に出掛けるっていうから……監視だ監視」
「女の子たちの自由にしてあげなさいよ……」
「だが、気になるだろ!」
「……全く」
そうして俺たちは三人の後を追う。
***
……あれからしばらく歩いて、目的の店へとたどり着いた。
「わぁ、可愛い洋服いっぱいありますねぇ!」
ミハルは目を輝かせている。
「うん、たくさんあるからどれにしようかなぁ」
アリサも楽しそうだ。
そんな様子を見ていたリリアナはというと、
「私には似合わないと思いますよ……」
遠慮がちに呟いていた。
「そんなことないですよ! ほらこれとか似合いますし」
ミハルがそう言うとリリアナにワンピースを当てた。……確かにリリアナに合ってるかもな。可愛い。
「さすがにこれを着るのは恥ずかしいですよぉ」
「大丈夫だって、これ試着とかしちゃいけないのかな?」
ミハルが店員さんに声をかける。
「はい、大丈夫ですよ、サイズが合えばお持ちください」
そう言われ、リリアナは渋々といった感じで着替えに行った。
***
……リリアナが戻ってくる。
「ど、どうでしょうか……?」
リリアナが不安げな表情で聞いてくる。
「うん、すごくいいと思う!」
ミハルとリリアナは嬉しそうな顔をした。
「はい、凄く素敵です!」
アリサも絶賛している。
「あ、ありがとうございます!」
リリアナは照れくさそうにしている。
その後もリリアナは色々な服を着せられていった。
***
……リリアナたちはいろんな服を買って、出て来た。
今は三人で喫茶店に来ているところだった。俺はリリスと二人で紅茶を飲み遠くから彼女らの様子を眺めている。
「ふぅ、満足した!」
ミハルはとても楽しげにしている。一方のリリアナは、疲れているのか、ぐったりしていた。
「……私、あんなにたくさんのお洒落な服を見たのは初めてです」
リリアナが感慨深そうに言った。
「また、見に行こうね!」
ミハルが笑いかける。
「はいっ!」
リリアナもつられて笑っていた。
ミハルがリリアナに聞く。
「はい、私お腹空きました」
「おっけー! お昼ご飯にしましょう!」
……ミハルは元気だな。
***
「よし、俺たちも飯食うか」
「おごりなさいよ」
「くそっケチなやろうめ」
そういいながらも、俺たち二人は彼女たちを尾行していく。
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