第28話 二人の家
家に帰る。久しぶりの二人の家だ。やれやれ、少し読んだだけなのになんだかんだしばらくあいつと一緒になってしまった。
図々しいというかなんというか。
まあ、リリアナが喜んでくれたのならば幸いだ。
「ただいまー」
「よっと、ただいま」
二人の家。その家に俺たちは声をかける。
「……さて、そろそろ夕ご飯を作らなくてはな。リリアナは風呂の準備をよろしくな」
「はい、わかりました」
リリアナは浴室へと向かう。その間に俺は夕食を作る。今日の献立はオムライスだ。卵を焼いている間に、チキンライスを炒める。味付けはシンプルに塩コショウのみだ。そこに溶き卵を投入。半熟になったら火を止めて完成だ。俺は完成した料理を食卓に並べる。
リリアナが戻ってきた。
「いい匂いですね」
「だろう?もうすぐできるからな」
俺は出来上がったばかりのオムレツを半分に切る。すると中からトロリととろけた黄色い玉子が現れる。ふっくらとしたケチャップライスの上に乗せる。
「よし、できたぞ」
「わぁ、美味しそうです」
リリアナは瞳をキラキラさせながら言う。
全く、その姿もかわいいな。
「冷めない内に食べるとするか」
「はい、いただきます」
リリアナはスプーンを持って、早速食べ始める。
「ん~、美味しいです」
リリアナは頬に手を当てながら言う。
「そうか、よかった」
「パパの作るご飯はいつも美味しいです」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
俺は照れ隠しのために頭を掻く。
「パパは将来、料理人になれると思います」
「ハハッ、それは褒めすぎだよ」
「そんなことないですよ。パパが作ってくれたおご飯どれも最高に美味しいですもん」
リリアナは微笑む。
その笑顔に、俺は見惚れるほど見つめてしまった。
「…………」
俺は無言でリリアナを見つめる。
「?、どうしたんですか、パパ」
「リリアナ、お前は本当にいい娘だな」
俺はしみじみと言う。
リリアナが恥ずかしそうに顔を赤らめる。
「な、なんですか急に!?」
リリアナはとても可愛らしい女の子だ。
リリアナにはこれからもずっと笑って暮らして欲しいものだな。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
俺は空になった食器を流し台まで運び、洗う。しばらくすると、リリアナが声をかけてきた。
「お風呂が沸いたので入っていいですか?」
「ああ、いいぞ」
リリアナが着替えを用意している間、俺はソファーに座って待つことにする。
リリアナが戻ってくる。
「お待たせしました」
「おう、ゆっくり浸かってこいよ」
「はい」
リリアナが脱衣所に向かう。
「ふう、やっと落ち着けた」
俺は背もたれに体を預け、息をつく。
「ったく、リリスに付き合うのも疲れたな」
あいつは昔から俺のことが大好きで、事あるごとに俺に絡んでくるんだよな。俺としては鬱陶しいんだけどな。まあ、悪い奴じゃないし、何より俺の幼馴染みなわけだしな。俺が魔王の座についてからは、ほとんど会う機会がなかったんだが、まさかこのタイミングで再会することになるとは思わなかったぜ。
ユリスのことは嫌いではない。むしろ好きだ。だけどな、俺にだって心の準備というものが必要なのさ。いきなりあんな風にされたら、誰だって驚くだろう?それにリリスは美人だからな。正直ドキドキしっぱなしだったぜ。
俺は目を閉じ、物思いに耽る。
今頃、リリアナは入浴しているのだろうか。
彼女のことを考えていると、自然と頬が緩んでしまう。俺は慌てて引き締めようとするが、上手くいかない。
彼女は俺のことを慕ってくれている。俺にとってリリアナは大切な家族であり、守るべき存在なのだ。だから、彼女に何かあれば、俺は全力で助けに行くつもりだ。例えそれが、命懸けの戦いになるとしてもな。
彼女のことを考えるだけで、こんなにも胸が高鳴ってしまうなんてな。俺らしくもない。
「パパ、上がりました」
彼女の声を聞いて、俺は目を開ける。
「おう、おかえり」
「はい、ただいま戻りました。あの、少し相談したいことがあるのですがいいでしょうか?」
「いいぜ、話してみろよ」
「実は私、明日、友達に会いに行きたいと思っているんです」
いつのまに、友達がいたのか?知らなかった。
「それで、その、もしよければ、一緒に来てもらえないかと思いまして……」
「いいぜ、連れていってやるよ」
俺は即答する。
「ありがとうございます!パパは優しいですね」
リリアナは嬉しそうに笑う。
「別に大したことじゃねえよ」
「それでも、私は嬉しかったです」
「そうか……でも、俺が竜って事はいうなよ?それだけは約束だ」
「はい」
「そういえば、その友達の名前は?」
「えっと、サラっていう女の子です」
「わかった。そんじゃあ、明日の朝にでも行くとするかね」
「はい!」
こうして俺達は眠りについた。
果たして、リリアナの友人と一体どんな人間なのだろうか。
さては、悪い虫でもついたんじゃないだろうな……まあ、女の子だからまずもってそんなことはないか。
少し楽しみにしながらも、眠りに落ちていく。
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