第20話 決戦



「さて、どうしたものか」



 相手は、巨大な体を持っている。

 おそらくは、かなりの防御力を持っているはずだ。

 それに加え、あの怪力……まともにやり合って勝てるかは微妙なところか。



「どうした、かかって来ないのか?」

「そうだな……まずは小手調べといこうか」



 そう言い放つと同時に、無数の闇の刃が飛んできた。

 俺はとっさに防御するが、いくつか喰らう。幸いにも大したダメージはないが……この威力、並大抵のものじゃないな。



「ほう、耐えるか」

「舐めるな」



 俺は爪を伸ばすと、相手に突っ込んでいった。


「はあっ!」



 爪を振り下ろす。しかし、それはあっさりと受け止められてしまう。




(くっ……!強いな……!)



 俺は体勢を立て直すと、再び突っ込んで行く。



「何度やっても同じことだ!」



 また爪を弾かれる。しかし、それは想定内だ。



「まだまだ……!」



 俺は何度も攻撃を繰り出す。しかし、その全てを受け流される。



「くそ……」

「私もいるよっと!」



 ミハルさんが、剣を振りかぶってこちらにやってくる。しかし、それも簡単に受け流された。



「おっと、危ねえ」

「ちっ、避けられたか」

「ミハルさん、大丈夫ですか?」

「はい、なんとか」

「なら良かった」

「さて、そろそろいいか?」

「そうだな……いくぞ!」



 俺は、爪を巨大化させる。



「なに……?」

「はあぁ……!」



 俺は一気に加速し、敵に接近する。



「速い……!」



 俺は腕を振り上げ、相手の脳天に叩きつける。が、寸前で止められる。



「なかなか良い動きだな」

「そりゃどうも」



 俺はそのまま蹴り飛ばす。



「ぐ……!」

「さすがにタフだな」

「はは、当たり前だ。この程度で倒れるわけがないだろう」

「まあ、そうだろうな」



 俺は爪を戻す。そして、魔法を唱える。



「ダークネス・ニードル!」



 すると、地面から闇属性の棘が大量に生えてくる。

 そして、それは相手を串刺しにする。



「ぐあ……!」

「よし、効いてるな」

「はあ!」



 ミハルが、敵の顔面に剣を叩き込む。



「ぐふ……!」

「今のうちに畳み掛けるぞ!」

「はいっ!」



 俺達はさらに追撃を加える。



「ぐ……調子に乗るなよ!」



 すると、敵はミハルに向けて光線を放った。



「はぁ!」



 それを聖剣で打ち落とすミハルさん。



「何っ!」

「すげえ……」



 今の一撃は相当なものだったはずなのに……。やはり、勇者というのは伊達じゃないようだな……。



(だが……!)



 敵は再び光を放つ。今度は俺に向かってだ。



「ちぃ……!」



 俺は大きく飛び退く。だが、敵はそれに合わせて突進してきた。



「くらえぇ!!」

「うおぉ!」



 俺は咄嵯に身を捻り、直撃を避ける。



「どちらにも決め手がないようだな……」

「そのようですね……」



 俺達は息を整える。

 俺達は一旦距離をとる。そして、俺達は同時に攻撃を仕掛けた。

 まずはミハルが斬りかかる。

 それを受け止めたのを見て、俺はすかさず魔法を唱えた。

 そして、そのまま爪で切り裂く。

 その攻撃も防がれるが、今度は俺が隙を作る。

 その瞬間、背後からミハルが剣を突き刺す。

 だが、それはギリギリのところでかわされてしまう。そして、カウンターを仕掛けてきた。

 それを俺が止める。そして、二人で挟み撃ちにする形で攻撃を続ける。

 だが、それでも決定打を与えることは出来なかった。


「このままではらちがあかないな……」

「そうみたいだな……」



 俺達は睨み合う。



「仕方ありませんね……少しだけ本気を出します」

「ああ、頼む」

「はい!」



 ミハルは、手に持っている剣を掲げる。

 その瞬間、刀身に光が宿る。



「なんだ……それは……!」



 ミハルさんは、聖剣を振りかぶる。



「はああああああ!!!!」



 凄まじい光が放たれる。



「これは……!」



 その輝きはやがて収束していき、一本の剣となった。



「これが、私の全力だよ!」



 その剣は、まるで生きているかのように脈動している。



「な、なんだそれは……!?」

「これはね、聖剣グランディアっていうんだよ」



 そう言うと彼女は剣を構える。そして、駆け出した。



「やああああ!!!」

(すごいスピードだ!)



 その速度は、常人の目では捉えることすら出来ないだろう。

 そしてその勢いのまま、敵を切り裂いた。



「グオオォッ!?」

「やったか!?」



 だが、すぐに傷口は塞がれていく。



(なんて再生能力だ……!)

「ちっこんな場所で使いたくなかったが……俺も本気を出させてもらおう!」



 喉奥に力を貯め、そして放つ。



「食らえ、フレイムブレス!」



 それは、悪辣な炎。そしてあらゆるものを焼き尽くす地獄の業火だ。

 その灼熱の吐息が、竜の牙が如き火炎が敵を襲う。



「ぐあああああ……!」



 そうして、敵が消え去っていく。後には何も残らなかった。

 俺は辺りを見渡す。そこは一面焼け野原となっていた。

 俺は思わず苦笑する。



「ふう……」



 俺は一息つく。そして、ミハルさんに向き直る。



「ありがとうございました」

「いえ、当然のことをしたまでですよ」

「さてと……今回の事件について聞く前に倒してしまったがどうするかな」

「とりあえず奥を探してみよっか」


「おーい!」


奥から声がする。


「あれは……アリサちゃん!」

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