第19話 洞窟の罠


「……ここが目的地なのか?」



 そこは、とある洞窟の中であった。



「それにしても暗いな……灯りをつけるか」


 明かりをともし、辺りが明るくする。


「これは……?」



 そこには、様々な武器が置かれていた。

 槍・斧・刀……他にも色々ある。どれも見たことのないものばかりだ。

 奥には祭壇のようなものがある。おそらく、あそこに何かが祀られているのだろう。

 俺はその祭壇へと近づいていく。そして、その前にたどり着いた時だった。


「おい、何者だ」



 後ろを振り返ると、そこには黒いローブを着た男がいた。



「……」



 ……しまったな。俺は心の中で舌打ちをした。

 おそらく、こいつが例の事件の犯人なのだろう。

 しかし、さっきの奴とは姿が少し違うな……。



「……なるほど、お前たちが行方不明事件を起こしている犯人か」



 俺はそう言って、爪を伸ばした。



「だったらどうした?」

「大人しく投降しろ。今なら命だけは助けてやる」

「はははは!それは出来ない相談だな」

「……そうか」



 俺は爪を伸ばしたまま、じりじりと間合いを詰める。



「無駄な抵抗はしない方がいいと思うけどね」

「……それはどうかな?」



 すると、背後から声が聞こえてきた。

「なに……?」



 振り返ると、いつの間にか入口が塞がれていた。



(結界……?)


「はは!まんまと罠にかかったな」

「どういうことだ?」

「簡単な話だ。この洞窟に入った時点で、お前たちの負けは確定していたんだよ」



 ……なるほどな。つまりは、最初から嵌められていたというわけか。



「なるほど、それで?一体どうやって俺たちを倒すつもりだ?」

「こうやってだよ!」



 すると、天井から大量の魔物が現れた。



「これは……」

「お前たちには生贄になってもらう」

「……なるほど、俺たちを殺すのではなく生け捕りにするつもりか」

「そういう事だ」

「ははは!馬鹿め、誰がそんな手に引っかかると思っている!」

「そうか?なら、やってみればいいじゃないか」

「いいだろう」



 俺は、ゆっくりと前に進む。そして、魔物たちを見据える。



「いくぞ!」


 俺は――その身を竜に変化させた。

 洞窟の壁が破壊され、天井に穴が開く。

 その巨体に、皆は驚くばかりだった。



「何っ!?」

「悪いな、俺は普通の人間じゃないんでな」



 俺は尻尾を振り回し、魔物たちを薙ぎ払う。そして、そのままの勢いで突進し、壁に叩きつける。



「ぐああ!!」

「くそ、化け物め……!」

「はは、褒め言葉として受け取っておこう」



 俺は爪を伸ばし、次々と敵を切り裂いていく。



「どうだ?降参するか?もう勝ち目はないぞ」

「ふざけるな……!」

「ならば、このまま死にゆくといい」

「……調子に乗るなよ!」



 すると、敵は懐から拳銃を取り出した。



「なんだ?それは」

「これか?これは魔銃だ。この引き金を引くだけで強力な魔法が放てる」

「なるほどな。それがお前の切り札という訳か」

「ああ、そうだ。これでお前も終わりだ」

「残念だが、俺は死なん」

「ならば、試してみるか?」

「いいだろう」



 俺は爪を伸ばし、構える。



「いくぞ……!」



 男は銃を構え、撃つ。だが、俺はそれを難なくかわす。



「なに……!?」

「今度はこちらの番だ」



 俺は口から炎を吐く。



「くらえ!」



 だが、その攻撃も男に防がれる。



(やはり、障壁魔法か……)

「どうやら、俺の障壁魔法を破ることは出来ないようだな」

「そのようだな」

「だが、いつまでもつか見ものだな」

「その余裕もそれまでだ」



 俺は次の攻撃に備える。



(次はどんな魔法を使ってくるんだ……)

「……!」



 すると、突然男が苦しみ始めた。



「な、なんだこれは……ま、まさかこれは!勇者!」



 その時、入り口の結界がばりんとわれる。



「大丈夫ですか!」



 現れたのは、ミハルさんであった。

 その手には聖剣を持っている。


「その聖剣は……ぐわあ!」


 ミハルさんの一撃が敵を襲う。


「ミ、ミハルさん……」

「オーフィアさん、無事でよかったです」

「大丈夫!? パパ!」

「リリアナも……しかし、どうしてここに?」

「話は後です。今はこいつを倒しましょう」

「わかりました」

「く……勇者だと……!?」

「観念しなさい。あなたはここで終わりよ」

「黙れ!俺はまだ終わらんぞ……」



 そう言って、奴は立ち上がる。



「まだ動けたか……」

「くそ……だが、竜の体を持つものと聖剣を持つ者がいるとは誤算だったぜ」

「確かにそうだな。だが、これでお前の運命は決まったようなものだ」

「……ふん、果たしてそうかな」



 そう言うと、奴は指を鳴らす。すると、彼の瞬く間に巨大化していく。



「な……あれは!?」

「ククク……俺の正体を見せてやる! その名もサイクロプスだ!」



 その体は、巨人と呼べるほどの巨体である。



「これで、形勢逆転だ!」

「ほう、果たして本当にそうかな?」



 俺は爪を伸ばした状態で身構え、サイクロプスと相対する。

 その二つの巨体が互いににらみ合っていた――


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