第15話 ある二人組の末路
「がっはっはっは!」
酒場で酒を飲んでいる二人組がいる。
「へっ勇者様をだまして飲む酒は上手いぜ!」
「持ってる金も装備も高いもんでしたからねぇ! こうしてしばらく遊び暮らせるってわけでせえ!」
「全く、世の中はうまくできてるよなぁ!」
「ほんとですわ! ひゃはは!」
下品な笑い声を上げる二人組。
「おっ! 姉ちゃん! 酌してくれよ!」
「はい! 喜んで!」
女は笑顔を浮かべながら近づいて行く。
「おお! 美人じゃねぇか!」
「ありがとうございます!」
「へへ、早速飲もうじゃないか!」
「はい! わかりました! どうぞ!ぐいっといってください!」
俺が差し出したコップに口をつけて一気に飲み干す二人組の男達。その瞬間を狙って、女は睡眠薬入りの水を盛った皿を差し出す。それを二人が口に含んだ直後、二人の意識は完全に刈り取られた。
***
「よし、これでいいだろう」
俺は気絶している男たちを見下ろしていた。
「しかし、この世界にはこんなものがあるとはなぁ」
俺は感心しながら手の中にある手錠を見る。これは手錠の形をした拘束具で、魔力を流し込む事で使用者の魔法・スキルの発動を阻害する効果があるという代物だ。これのおかげで、俺達は難なくこいつらを無力化できた。
「さてと、後は……」
「ん……んん……ん?」
目を覚ます男。
「よぉ、気分はどうだ?」
「ん……?……ひっ!?」
俺の姿を見た途端に怯え始める。
なぜなら、そこにいたのは竜だったからだ。
「な、なんだてめぇは……!?」
「ああ、怖がる必要はない。……ところで、聞きたいことがあるんだが」
「な、なんだ……?」
「ミハルさん……という名前に覚えはないか?」
「ミハル?誰だそれ?」
「そうか、知らないならいいんだ」
俺はそう言って翼を広げる。
「勇者、と言えばいいか」
「なっ!?」
男が目を大きく見開く。
「なあ、なぜあいつをだまして金を奪い取ってあまつさえ一人ぼっちにさせたんだ?」
「……あ、あのガキがいけないんだ……! あのガキが……! 俺達の言うことを聞かないから……!」
「……なるほどな」
俺はため息をつく。
「ま、待ってくれ!」
「ん? どうかしたのか?」
「な、なんでも言うことを聞く!だから命だけは……!」
「そうか。……じゃあ、死ね」
俺はそう言って、炎を履いた。
「え?」
男が呆然とした表情をする。そして、その体がゆっくりと黒い黒い炭に代わっていく。
「な……なん……で……?」
「悪いな。まあ、八つ当たりみたいなもんだ。」
俺は後に残った残骸を気にせず、もう一人の方に向かう。
「ひぃっ!」
「大丈夫だ。一瞬で終わる」
俺はそう言って、口を開く。そして、そのまま熱い熱い炎を履いた。
「がっ……はっ……!」
男は真っ黒になり、そして動かなくなった。俺はその死体を一か所に集めてから燃やす。
「さてと、これで証拠隠滅完了っと」
俺はそう呟いてから羽ばたいてゆき、その場を離れた。
***
「あ、パパだ」
「ん? ああ、リリアナか」
リリアナが駆け寄ってくる。
「ねえねえ、パパは何をしていたの?」
「ん? ああ、ちょっと仕事をな」
「ふーん、どんな?」
「教えなーい」
俺は笑って誤魔化した。
「むぅ~」
リリアナが不満げに頬を膨らませる。
「そんな顔しても駄目だぞ?」
「ぶ~! パパのケチー!」
「はっはっは!残念だったな!」
そう言いながらリリアナの頭を撫でてやる。リリアナは気持ち良さそうにほほ笑む。
「ま、今日はこれくらいにしておいてやろう」
「やった!」
嬉しそうに笑うリリアナ。俺は苦笑しつつ、家の中に入っていった。
***
「ふう、疲れた」
風呂に入り、湯船に浸かる。人間体になってこういうのも乙なものだ。
(しかし、勇者か)
正直、面倒なことをしたものだ。
(……だが、まあいいか)
別にこの世界に愛着があるわけでもない。だというのに珍しい事をしたものだ。
(ま、これも何かの縁ということか)
俺は小さく息をつく。
(それにしても……)
勇者か。
俺はミハルの事を考える。ミハル・シラサキ。異世界から召喚された勇者の一人。
すっかりこの世界に馴染んでいるように見えるが、さぞかし苦労したことだろう。
(元気にしているだろうか?)
俺はミハルの顔を思い浮かべる。まだ分かれて数日しか経っていないが、ミハルは俺にとって大切な存在だ。だからこそ、彼女のことが心配になるのだろう。
(今度会いに行ってみるかな……いや、迷惑かもしれないな)
……さすがに会いに行くのは止めておこう。そう思いつつ風呂から上がる。
***
「オーフィアさん。お手紙ですよ~」
「お、サンキュー!」
ある日、配達人から受け取った手紙を読む。そこにはミハルの名前があった。どうやら、無事王都に着いたらしい。そのことにホッとする。それからしばらく他愛のない内容の手紙が続いた後、唐突に話題が変わる。
『突然のお便り申し訳ありません。実は折り入ってお願いしたいことがあります』
何だろうと首を傾げる。
『実は、私は今とても困っているのです。なので助けてほしいんです!』
「……はぁ?」
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