第17話 聞き込み調査


「実は、その子は冒険者ギルドに所属しているんです」

「ほお」



 冒険者ギルドとはその名の通り、依頼を斡旋したり、魔物退治をしたりして生計を立てている連中の集まりである。冒険者ギルドに所属する冒険者はギルドに登録することで冒険者となり、ギルドからの依頼をこなして報酬をもらうことで生活している。



「その子は結構有名な冒険者なんです」

「ほう」

「実は私も会ったことがあるんです」

「へぇ」

「その子の名前はアリサさんといいます」

「……ん?」



 俺は思わず首を傾げる。どこかで聞いた名前だ。どこだったかな?



「その子がいなくなったのは三日前なんです」

「……なあ、ひょっとして、その子の名前って『アリサ・トツカ』じゃねえか?」

「は、はい、そうですけど……どうして知ってるんですか?」



 俺は思わず頭を抱える。やっぱりか。



「実はな……そいつのことは知ってるんだよ」

「えっ!?」

「いやまあ、正確に言うと『知ってるかもしれない』だが」

「ど、どういうことなんですか?」

「実はな、そいつとは面識があるかもしれなくてな」



 俺はアリサとの出会いを話し始める。



「実はな、そいつは俺の家を昔襲撃したことがあってだな」

「なにしてるんですかアリサちゃん」

「まあ瞬殺したんだが」

「ええ……」

「その後も時折襲撃に来てだな……まあ暇つぶし程度には思ってたんだが」

「ええ……」

「なんかそのうち来なくなったんだが」

「……」

「まあ、とにかく、そんな感じで知り合ったわけだ」

「……はぁ」



 ミハルは微妙な顔をしている。まあそりゃそうだろうな。いきなりこんな話をされても困るか。



「あの、オーフィアさん……それ、ほんとうのことなんですよね?」

「ああ、嘘じゃないぞ」

「なにやってるんだあの人……まさかオーフィアさんに喧嘩売るなんて」



 ミハルは呆れたような目で俺を見る。俺は苦笑する。



「あの、オーフィアさん」

「ん?」

「今度また私と勝負してくれませんか?」

「は?」

「私も強くなりたいので」

「まあいいが……前は俺が勝ったろう?あんまり無理しない方がいいんじゃねえか?」

「いえ、勝ち逃げは許しません」

「……そうかい」



 俺は肩をすくめる。まあ、やる気があるのなら止める理由もない。



「わかった。また機会があればな」

「はい!」

「さて、じゃあさっさと本題に入るか」

「はい!」



 俺はミハルと共に歩き出した。



 ***



 とりあえず、3人で手分けをして聞くことにした。


「さて、とりあえずは聞き込みから始めますかね」



 俺は町の人間に話を聞いてみることにした。



「すいませーん」

「はいはい、何かしら」



 ……反応が冷たいな。



「最近この辺りで女性が行方不明になっていると聞いたのですが」

「……それがどうかしました?」

「心当たりはありませんか?」

「ないわね」



 ……ふむ、これは手ごわいな。どうしたものかな。



「……そういえば、最近この辺りに変な男がうろついているという話を聞きましたね」

「男?」

「ええ、なんでも全身黒ずくめの怪しい奴で、フードで顔を隠していたとか」

「……へえ」

「……まあ、あくまで噂ですけどね」

「そうですか……ちなみにその男はどこに?」

「……さあ? 私は知りませんね」

「そうですか……どうもありがとうございます」



 俺は女に礼を言う。



「いえいえ、こちらこそ」

「では失礼します」



 俺はその場を離れる。……さて、どうするか。



(とりあえずは町の中で情報を集めよう)



 俺は町中を見て回ることにする。

 しばらく歩いていると、前方から二人の男が歩いてくる。俺はその二人に声をかけた。



「ちょっといいかい?」

「ん? なんだお前は」

「悪いが急いでいる。後にしろ」……こっちはこっちでつれないな。

「少しぐらい時間を割いてくれたっていいだろ?」

「……仕方がないな」



 男の方はため息をつく。



「それで、用件はなんだ?」

「最近このあたりで行方不明事件が起きてるらしいが、何か知らないか?」

「知らんな」

「さっきまで一緒にいた仲間にも聞いてみたんだが、誰も知らなかった」

「そうか」

「なにか知っていることはないか?」

「……いや、特には」

「そうか」

「ああ」

「……ところで、一つ気になることがあってな」

「……なに?」

「実は最近この辺に妙な連中がいてな。黒い服に身を包んで顔を隠すようにしていたらしい。心当たりはないだろうか?」

「……」



 男たちは黙り込む。



(こいつはいったい何を言ってるんだ?)



 困惑しているのを悟り、俺は言葉を続ける。



「まあ、あくまで噂だがな」

「そうか……ちなみに、そいつはどこに?」

「さあ? 俺は知らないな」

「そうか……どうもありがとう」

「いえいえ、こちらこそ」

「では失礼」

「おう」



 ……そして、二人は去っていった。

 ***



(……どう思うよ)

(さあな)

(どうやら俺達の存在に気づいていないようだ)

(そりゃ好都合だ)

(だな)



 男たちは顔を見合わせると、そのまま通り過ぎていった。

 ……しかし、あいつらは一体何者なんだ?

 ***




「結局収穫はなし……か」



 俺はため息をつく。……しかし、あの男の言葉は気になる。本当に無関係なのか?……考えてても仕方ないか。

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