第50話 勇者と魔王の力


「ハァー!」


ミハルのその一閃は、レイジを切り裂いた。


「馬鹿な、こんな人間ごときに……ぐふっ……」


膝を落とし、地面に倒れこむレイジ。


「当然だね! だって私、勇者だもの!」


周りには、大量の魔物の残骸が落ちている。


「ちょっとっ、こっちも頑張ったんだよっ」

「ごめんごめんアリサちゃんー」

「こ、こんな奴らに……だが、止まらん、マスターは止まらん……」


そう言い残して、レイジはチリとなって消えた。


「さてと……大変なのはあっちの方だよね」


城の上では、一機の巨大ロボットと竜が戦っている。


「とんでもないですよっあの……巨人? ゴーレム?」

「ロボットだよ多分。しかしなかなか強そうな能力持ってるね……」

「魔力を吸収してるみたいだねっ……どうやって倒せば……」

「よしっ」


ミハルが上を向く。


「ちょっと、そろそろ私の本気、見せちゃおっかな」

「えっ……どうやって?」


そういって、ミハルはぴょんと高く飛びあがった。


「行くよ聖剣……全力で!」


***


「くそっ……」

「ふふふ……」


魔法の通用しない相手に、攻めあぐねている。

物理攻撃で対応しようにも、相手の装甲は鋼。爪の攻撃を通さない。


「どうするか……」


と、その時だった。


「助けに来たよ!」


どこからともなくミハルちゃんが飛んできて、頭の上に立つ。


「ミハルちゃん! 何か策が……」

「確かに相手は魔法が効かないかもしれない。でも……」


ミハルちゃんは、聖剣を空高く掲げる。

そして、きらりと剣が光り輝いた。


「この力は――神からいただいた、勇者の力だ!」


そうしてその光の塊を――振り下ろした。



「そんなもの……! っ! 何っ!」


聖剣から出る光が、相手のアマルガムに当たる。

その光は――確実に相手を蝕んでいた。


「くっ、だがこの程度――!」


だが、耐えるアマルガム。


「くっ足りない……?」

「ミハルちゃん俺から何かできることはないか!」

「魔力を……! 私なら、力に変換できるから!」

「おうよ!」


俺からも魔力を送ると、光が一層濃くなる。

だが――まだ、足りない。


「――」


遠くから、リリアナが見ている。


「――ユリスさん」

「リリアナちゃん……私たちが出来ることは何も――」

「いえ、私にはわかります――力になれるって!」


リリアナが駆けだすと、俺の背をよじ登って、背中に上ってくる。


「リリアナ、何を!」

「ミハルさん、魔王と勇者ってのは――なにか、関係があるんですよね!」

「! そう……私にもわかる!勇者と魔王は相反する物! その力の源流は――対立するものであり同じ!」


背中を走り、よろよろと転びそうになりながらも、ミハルちゃんの元まで、たどり着く。


「私の力を使って――!」

「いや、違うよ! リリアナちゃん、魔王の力を――私と共に放つんだ!」

「っ――! 出来るかどうかわからないけど、全力で――!」


背中から、力を感じる。


「パパ、見てて、私の、全力――!」

「うおおおおおおおおおお!!!!」


ミハルと、リリアナの力が、重なる。


「光と闇の力が、相反しあって、さらに強力な力になる――!」

「私に、出来ることを……!」


その白と黒の力が、相手に襲い掛かる。


「なんだ、この力は、これが、魔王の――!」


そして――世界に、光が満ちた。

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