第49話 機神「アマルガム」

「オーフィアさん、リリアナちゃん、大丈夫かな……」




 ミハルは、城の残骸の跡でアリサと二人で待っている。




「何かあったら突入するって約束でしょっ。静かに待ってようよ」


「うん……」




 心配そうに見つめるミハル。




 ――と、そのときだった。




「フフ……やれやれ、お忙しいところ失礼します」


「何者っ!?」




 現れたのは――ネクタイのないスーツ姿の男――




「レイジと言います。以後お見知りおきを……」


「むう、魔王を復活させようとしている奴らの一味だっけ?」


「その通りです。僕がこんなに知られているとは思いませんでした」


「何しに来たの?」


「それはもちろん……」




 レイジは、すっと構える。




「邪魔ものの……足止めですよ」




 ミハルとアリサは構える。




「一人で立ち向かう気?」


「それは不可能です。なので……」




 周りの地面から、ずずず、ずずずと何やら魔物のようなものが沸いて出てくる。




「こんなものを用意させていただきました」


「集団戦ね……行くよ、アリサ!」


「うんっ!」




 ミハルとアリサは、駆けだした。


 ***



 真黒な銀の装甲を纏い、黒色の腕を持ち、細々とした胴を持ち、どでかい足を持ったその機体は、禍々しいオーラを放っている。

「オーフィア……あれは一体」

 ユリスが俺に尋ねる。

「俺にもわからん……だが」

 俺が見たこともない。だが、それがとても邪悪な存在だという事はわかった。

「……パパ」

 リリアナが不安そうに言う。

「大丈夫だ。心配するな」

 そう言って、安心させてやる。

 俺達の前で、奴は悠々と降り立つ。その背丈は、俺よりも明らかにでかい。

 その機体が、こちらを向く。




「オーフィア……気を付けて。あのでかいの、とんでもない魔力よ」




 ユリスがそう忠告する。




「ああ、わかっているさ」




 俺はそう答える。




「リリアナ、ユリスと一緒に下がっていろ」

「でも」

「大丈夫だ。すぐに終わらせる」




 そう言って、俺は戦闘態勢に入る。




「ほう、これはまた珍しいものを出してきたものだ」




 アルスがそう言った。




「アマルガム。古代文明の遺産の一つにして、最強の兵器――」




 そして、その機体の胸元にあるコアのようなものが光ったかと思うと、そこからビームが発射される。




「ちっ!」




 俺はそれをかわすが、地面が大きく溶けていた。




「うお!?」

「なんて威力……!」




 ユリスとリリアナが驚く。




「流石わが右腕!素晴らしい!」




 アルスの声が響く。




「オーフィア……!」




 ユリスが叫ぶ。




「任せておけ」




 俺は前に出る。




「来い!アマルガム!!」




 すると、敵はこちらに近づいてくる。

 敵は黒い腕を振り上げている。

 俺はそれを避けながら、竜の爪で敵の胴体を殴りつける。

 敵は少し後ろに下がるが、大して効いている様子はない。




「硬いな」




 俺は竜の爪で何度も切りつけようとするが、全て弾かれる。

 敵は今度は拳で攻撃してくる。




「ぬぅ」




 何とか避けるが、地面に大きな穴が開く。

 敵は続けてもう片方の手で殴ってくる。




「ちぃ」




 俺は避けきれず、竜の翼でガードするが、吹き飛ばされてしまう。




「……強いな」




 敵はゆっくりと歩いて近寄ってくる。




「ふん、なら……これならばどうだ!」

 俺は竜の息吹を放つ。巨大な炎の塊を敵にぶつけてやったが、敵は平然としている。




「やはりダメか……」




 俺は舌打ちをする。




「オーフィア!」




 後ろからユリスが叫んだ。




「あいつは魔法を吸収している!」

「なんだと」

 魔法を吸収するだと? なんていう能力を……


 これでは早々手を出せないではないか。




「ふはははははは!!!」




 アルスの笑い声が響き渡る。




「これが!これこそが!我がアマルガムの力!!最強無敵の存在だ!!」




 そういって、さらに攻撃を繰り出してくる。俺はそれを避ける。

 リリアナ達が巻き込まれないように、離れさせる必要があるな。




「リリアナ!ユリスを連れて逃げろ!」

「嫌です! 私も見届けます!」

「余計なことはするな……俺だけで片づける!」



 そう言うと、リリアナ達は渋々といった感じで引き下がった。

 俺は再び接近し、攻撃を仕掛けるが、全て防がれてしまった。

 そして、敵の攻撃が飛んできた。




「ぐおっ」




 どうにか回避できたが、かすってしまったようだ。

 ダメージはそれほどないが、衝撃は来る。




「ち、厄介だな」




 竜の鱗で守られているので、致命傷にはならないが、それでもダメージは来る。




「くそ、このままでは」




 長期戦になれば不利になるだろう。

 俺は一旦距離を取る。




「ふむ、なかなかしぶといですね」

「そりゃあ、こっちは竜だからな」

「ならばこちらは鉄の装甲……根比べではどちらが勝つでしょうか?」




 そういって、再び戦闘が始まる。

 相手の動きは鈍重だが、その力は強力だ。




「この……!」




 俺は必死に応戦するも、決定打を与えられない。




「はははははははははははは!!!」

「くっ……!」




 相手はこちらの攻撃を全て受けきって、反撃して来る。




「ぐぉ……」




 なんとか耐えたが、かなりのダメージを受けた。




「パパ……!」




 リリアナが心配そうな声で俺の名を呼ぶ。




「大丈夫だ……お前たちは絶対に守る」


 俺は相手を、にらみつけた。


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