転生したら竜でした!~拾った少女にパパと言われて懐かれてしまった件~

秋津幻

第1話 パパになった竜

 俺は、転生したら竜になっていた。

 前世での名前は、八房英二と言った。だがある日突然、車に轢かれて死んでしまったのだ。

 それから神様と名乗る女の人に転生させてもらったのだが、なぜか竜になっていた。

 それも、伝説に謳われる神竜王という最強の邪竜だ。辺境の遥か高い山脈のある一角の洞窟の中に住んでいる。

 名は、オーフィア。魔族四天王だの魔王候補だの言われているが知ったことではない。

 そんな俺を倒そうと挑んでくる奴らも後を絶たない。

 まあ、大抵は雑魚ばかりだったがな。

 しかし、中にはそこそこ骨のあるやつもいて楽しませてくれたぜ。

 だが、俺の敵じゃなかったけどな!


「……さてと」


 いつものように退屈で惰眠を貪っていた時のことだ。

 突然、何者かの気配を感じ取ったのだ。


「なんだ?」


 気になった俺は、その気配の方へ行ってみたんだ。

 そしたら、そこには小さな女の子がいた。

 しかも裸足だった。

 すてられた子か? と思って声を掛けようとしたら、その子の目を見て驚いたよ。

 なんせその子の両目は、金色に輝く宝石のような瞳をしていたんだからな。

 こんな綺麗な目をした人間なんて見たことがなかったぜ。

 そして同時に確信したね。

 この子は間違いなく将来、とんでもない大物になるってことが。

 だから、俺はその子を育てることにしたんだ。

 俺は、羽を広げその子の目の前に現れる。



「ひぃっ! りゅ、竜だ!」

「怖がることはない、取って食うつもりはないからな。お前、名前は?」

「……リリアナ、といいます」

「そうか。いい名前だな。俺は神竜王オーフィア。今日からよろしく頼むぞ」

「よろしくって……?……あっ! あなたが私のパパですか!?」

「パパッ!? い、いきなり何を言ってんだよ! 」

「やっとみつけた! パパ!」

「ちょ、ちょっと待ってくれよ! 一体どういうことだよ!?」



 俺は訳がわからず混乱していた。

 だってそうだろ? 今までずっと独りぼっちで過ごしてきた俺の前に、急に現れた小さな女の子が自分のことを『パパ』と呼んだんだぜ? 誰だって驚くだろうよ。



「私、ずっとパパを探してたんです! ママが旅してれば絶対会えるって言ってた! パパ! パパ!」



 ……やれやれ。

 俺はパパになってしまった。



 ***



「おーい、リリアナ。朝飯出来たぞ~」

「は~い」



 二人で住むようになってしばらくたった。

 最初はどうなるのかと思ったが、今ではすっかり馴染んでいる。まあ、娘が出来て嬉しい気持ちもあるがな。

 それにしてもリリアナは可愛いなぁ。

 今も、笑顔でこっちに向かって走ってきている。



「おはようございます! 今日のご飯は何ですか?」

「今日は目玉焼きとベーコンエッグとトーストだ」

「……どうやって作ったんです?」



「失礼な。俺は竜だが人間体にもなれるんだぞ。ほら」



 俺は体を人間と同じ姿に変える。違うのは、頭に角が生えていることくらいだ。ちなみに今の姿は、黒髪の短髪で身長190cmほどの細マッチョ。顔つきは整っている方だと思う。

 彼女のために人間でも住めるような家も建てた。山を登っていたら家が現れたとなればさぞ驚くだろうな。……ここまでくる奴がいるとは思えないが。



「おお~」



 リリアナが感嘆の声を上げる。



「すごいです! でも、どうして人間の姿になれるように?」

「ああ、それはな。人間として暮らした方が色々と都合が良い事もあるからだ。例えば、リリアナと一緒に街に買い物に行く機会が出来た時とか、な?」



 俺はニヤッと笑う。



「むぅ……。ずるいです。パパのいじわる」

「悪い悪い。それより、早く食べないと冷めるぞ」

「はい」

「「いただきます」」



 俺達は声を揃えて言う。

 これが我が家の決まりごとの一つ。

 食事は一緒に食べる。

 これはリリアナが来た時からの習慣だ。



「んっ! このパン、おいしいですね!」

「おう。実は最近、お気に入りのベーカリーで買ってきたやつなんだ」

「そうなんですね。それで美味しいのも納得です」

「リリアナには少し大きかったか?」

「いえ。そんなことないですよ」



 リリアナはまだ子供なので背が低い。

 その為、テーブルに置いてある椅子だとリリアナの頭が隠れてしまうのだ。そのため、リリアナの分の食器は小さめのを使っている。



「そういえば、リリアナ。ここの暮らしには慣れたか?俺に遠慮せず何でも言えよ?」

「はい! パパは優しいし毎日が楽しいし、最高に幸せです! だから、私は大丈夫です!」



 屈託のない笑顔を浮かべながら答えるリリアナを見て俺も思わず頬が緩んでしまう。

 こんなに素直な子に育ってくれて良かったよ。本当に。

 しかし、一つ気になることがあった。

 それは―――。



「なぁ、リリアナ。何か困ったことはないか?もしあればすぐに言って欲しいんだ」

「特にありませんけど……どうしてですか?」



 リリアナの問いかけに対して俺は真剣な表情で言った。



「……実はな。お前は俺の娘になったわけだが」



 俺はリリアナの顔をじっと見つめる。



「お前が本当の家族に会えるようにしたいと思っているんだ」

「私……今は、パパがいるからいいんです」



 リリアナは寂しげな笑みを見せる。その様子からは嘘を感じられない。

 だが、もしもということもあるからな。



「いや、よく考えてみてくれ。親がいないわけではないだろう? だから……」



 そこまで言って俺は口をつぐんだ。

 なぜならば……



「うぐ……ひっく……えーん!」



 泣き出してしまったから。

 どうすればいいのか分からない俺がオロオロしているとリリアナが落ち着かせてくれた。



「ごめんなさい……。パパを責めてる訳じゃないんです。ただ、私の事を気にしてくれるパパの心遣いが嬉しくて泣いてしまっただけなんです」

「そっか……。それなら安心したよ。いきなりあんな事言って悪かったな」

「いえ。私を心配してくれるのは分かりましたから。だから、謝らないでください」



 リリアナの言葉を聞きホッとする。



「これからも、ずっと一緒だぞ」

「はい!」



 彼女は満面の笑みになった。


☆☆☆


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