第22話 強くなりたい!
「私も、強くなりたいです!」
リリアナが突然、そういいだした。場所は俺の家である。
ミハルさんたちと別れたあとにリリアナにそう言われたのだが……正直困ったな。
おそらくミハルさんにあこがれての事だろうが、リリアナが強くなるというのは危険が伴う。それに、リリアナにはここで待っていてほしいという思いもある。……とはいえ、この子は一度言い出すとなかなか折れてくれないだろう。
ここは少し、説得を試みるか。
「なあ、リリアナ」
「なんですか?」
「どうして、強くなりたいんだ?」
「だって、ミハルちゃんは強いんですよ!? それなのに私は弱いままで……」
「リリアナ、強さっていうのはな。簡単に手に入るものではないんだよ」
「そうかもしれませんが……私は、やっぱりミハルちゃんみたいになりたいんです! 強くなって、ミハルちゃんを守りたい!!」
「そうか……でもな、俺はお前に危険な目にあってほしくないんだ」
「大丈夫です!! 私がミハルちゃんを守ってあげますから!! だから……お願いします」
そう言って、頭を下げるリリアナ。
ここまで言われちゃあ……断ることはできないな。
「わかった。ただし、約束してくれ。絶対に無茶はしない、危なくなったら逃げるということを。これは絶対条件だからな?」
「はい!!」
「よし、いい返事だ。じゃあ、明日から特訓を始めるか!」
「はい、パパ!!」
そして、俺はリリアナを鍛えることにした。
***
翌日。俺はリリアナを連れて森に来ていた。
「さて、まずは基礎からだな。剣の扱い方を教える」
「は、はい!」
「まあ、最初は素振りだな。ほれ、やってみろ」
「は、はい……」
「おい、力が入りすぎているぞ? もう少し力を抜いて……」「は、はい……っぐ、ぅぁあっ……!!!」
「お、おい、大丈夫か!?」
「は、はい……なんとか」
「無理すんな。いったん休憩しよう」
「すみません……足を引っ張っちゃいましたね」
「気にすることは無い。誰にだって失敗はある」
「ありがとうございます」
「おう。それにしても、まさか剣を握ったこともないとはな」
「ははは……お恥ずかしながら」
「別に恥じることでもないが……これから少しずつ覚えていけばいい。焦らずにな」
「はい! 頑張ります!!」
「その意気込みは大事だな。だが、あまり力を入れすぎるなよ?」
「わかりました」
リリアナに剣術を教え始めてから数日が経った。
リリアナは毎日、俺と一緒に鍛錬をしている。
リリアナはとても真面目で飲みこみが早い。これならすぐに上達しそうだ。
だが……リリアナが努力家なのは良いのだが、どうも力み過ぎてしまう傾向があるようだ。先ほどのようなことも何度かあった。……この子の性格を考えれば仕方がないのかもしれないがな。だが、それでも力み過ぎるのはよくない。適度に力を抜くようにしないとな。
***
今日もまたいつものように二人で森の中を歩いている。
リリアナがこちらを見て微笑んでいる。どうやら今日の訓練が楽しみで仕方が無いようだ。
彼女の笑顔を見ると自然とこちらも笑みがこぼれてくる。
その笑顔は、まるで太陽のようだ。見ているだけで心が温かくなってくる。
頭をなでると、気持ち良さそうに目を細めた。
リリアナと出会ってから、もうどれくらいが経つだろうか? 初めは彼女のことを拾って育てることに抵抗があった。
だって、いきなり現れた女の子が自分のことを『パパ』と呼んで慕ってきたんだぜ? 誰だって驚くだろうよ。
だが、今ではすっかりリリアナのことが可愛くてたまらない。
娘として愛おしいというのもあるが、それだけではない。
彼女は、俺にとって大切な存在なのだ。
俺は、この子に救われた。だからこそ、今度は俺がこの子のことを守るのだ。
「さあ、行くか」
「はい、パパ!!」
俺はリリアナの手を引いて歩き出した。
***
リリアナを鍛え始めてから、しばらくが過ぎた。
リリアナも大分実力がついてきた。
俺の教えたことはきちんと守ってくれるし、本当に優秀な子だ。
だが、まだ完璧というわけではない。まだまだ伸びしろがある。
これならば、いつかは俺よりも強くなる日が来るのかもしれないな。
まあ、そうなっても俺の方がリリアナより年上のようだし、保護者みたいな感じになるだろうがな。
しかし、リリアナを鍛えていて一つ気になることが有る。
リリアナの体力だ。この子はどうも体力が少ないらしい。確かに、子供のころから運動をする習慣が無かったのだから当然と言えば当然だ。
そこで、俺はリリアナに提案をした。
「リリアナ、お前は魔法を使えるか?」
「えっと……使えないです」
「そうか。なら、今度からは魔法の使い方を覚えよう」
「はい! でも、私なんかが覚えても……」
「そんなことはない。それに、リリアナはまだ幼いんだ。これからいくらでも強くなれるさ」
「パパ……」
肉体を鍛えるのはもしかしたら向いていないかもしれない。なら、魔法で体を強化してしまえばいい。そういう考えの下の提案だ。
「よし、やってみよう! とにかく、今は魔力を感じ取ることから始めないとな」
「はい!」
そうして、魔法の鍛錬が始まった。
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