第5話 二人の関係
それからしばらくして。リリアナの絵が完成した。
「できたぁ!」
リリアナは、完成した絵を見て喜んでいる。
「おー、いい感じに描けてるじゃないか」
「うん、我ながらうまくいったと思う」
ユリスも感心しているようだ。
「お、見せてくれないか」
「はい、いいですよ」
リリアナは絵を見せてくれた。そこには、ユリスの姿が描かれていた。
初めてならではの初々しさがありつつも、人の形がちゃんと書かれている。
初めてにしてはなかなかうまいのではなかろうか。
「ほう、なかなかうまいじゃないか」
「えへへ」
とても嬉しそうなようすで満面の笑みになっている。とてもかわいい。
「……なぁ、ユリス」
「ん?なぁに?」
「二人の絵を飾ってもいいか?」
「え!?」
ユリスは驚いている。リリアナも同じ反応だ。
「……まぁいいんじゃないかな?」
そして額縁に絵を入れる。
「お、ぴったりだな。いい絵になったぞ。うんうん」
「うぅ、恥ずかしいなぁ」
リリアナも少し頬が赤い。
俺は彼女が描いた絵をじっと見つめる。
「……いい絵だな」
リリアナがユリスを描いた絵。その絵には、リリアナの優しさが表れていた。
「うん、いい作品ができたな」
俺は、リリアナの頭を撫でる。
「おー、よかったねぇ」
ユリスも、リリアナをなでなでしている。
「はいっ」
リリアナは元気よく返事をした。
「リリアナちゃん、何か欲しいものとかないかい?」
「え?急にどうしたんです?」
「だって、頑張ったからね。何かあげたいなぁって思って」
「う~ん、特にないです」
「遠慮しなくていいんだよ?」
「いえ、本当に大丈夫ですよ」
「そっか、でも何かあったら言ってね」
「はい、分かりました」
そうして彼女はいつものようににっこりと笑った。
***
「そういえば」
リリアナは言う。
「二人の関係ってどんなものなんですか?」
「私達の関係?」
ユリスは首を傾げる。
「うーん、そうだなぁ」
ユリスは考えている。
「確かに、オーフィアとは長い付き合いだけどね」
「おう、そうだな」
「うーん、幼馴染みたいなもの?」
まあ、そんなもんか。
俺もこの世界に転生して長いが、初めて会ったほかの竜がコイツだった気がする。「うーん、なんか違うような」
ユリスは納得がいっていない様子だ。
「なら、ライバルとか?」
「ライバル?俺とお前がか?」
「ああ、オーフィアに私が負けるかって話さ」
「なんだよ、それは」
「私は、最強の竜なんだよ。その私と対等の存在なんて、君くらいしか居ないだろう?」
「む、それは言い返せないな」
「でしょ?だから私達はライバル同士だよ」
「……そうなのか」
「ふふん、分かったかい? 私の気持ちが」
「ああ、なんとなくだが」
「よろしい」
ユリスは嬉しそうだ。
「なるほど、仲がいいんですね!」
リリアナは言う。
***
「じゃ、私はそろそろ帰るわね」
ユリスは言う。もう夕方になっていた。
「お姉さま、今日はありがとうございました!」
リリアナは笑顔で言う。
「私こそ楽しかったよ。また遊びに来てね」
「はい!」
「それじゃあね」
「はい、さようなら」
ユリスは帰って行った。……人間体のままで。
「……竜にならないのか?」
「やだよでかすぎて目立つもん」
「ここ、山の上だぞ……人間の姿で降りるのは大変じゃないのか?」
「その大変さが楽しいんじゃない。じゃねー」
そのまま、徒歩で歩いて行った。
……変わり者だな。あいつは。
まぁいいか。さて、夕食の準備をしよう。
「オーフィアー、お腹すいたー」
リリアナの声が聞こえてきた。
***
今日の夕飯は、鶏肉を使った料理にしてみた。
「美味しい!」
そのご飯を食べて、彼女は満足げな表情をしている。
「お、そうか。たくさん食べてくれよ」
「はい!」
「あ、そうだ。リリアナ」
「はい?」
「明日出かけようか」
「本当ですか!?」
「ああ、街に行ってみようか」
「やったぁ!」
リリアナは大喜びしている。
「お、おい。落ち着いて食えよ」
「はい!パパの作るご飯は美味しいから、ついいっぱい食べちゃいます」
「そうかそうか」
俺はリリアナの頭に手を置く。
「ふわぁ」
リリアナは嬉しそうな顔をしている。
そうして彼女は俺の手に自分の手を重ねた。
「あ、こら」
「えへへ」
リリアナはいたずらっぽく笑う。まったく、しょうがない奴だ。
俺は頭から手を離す。
「お、そろそろ寝る時間だな。ほら、歯を磨いてこい」
「はぁい」
リリアナが部屋を出ていく。……やれやれ、あの子も子供だな。
微笑ましく思いながら、俺は食器を洗っていた。
***
「パパ、まだ起きてる?」
リリアナが扉の向こう側から話しかけてくる。
「ああ、起きているぞ」
「入ってもいいかな?」
「いいぞ」
部屋に入ってくる彼女。その様子はどこかもじもじしている。
「どうかしたのか?」
「うん、一緒に寝たいなって」
「そうか、お休み」
「お休みなさい」
リリアナはベッドに入り、横になる。
「ねぇ、パパ」
「なんだ?」
「ぎゅってしてもらってもいい?」
「別にいいけど……」
抱き着かれる。少し驚いた。
だが、その体は少し暖かかった。
「えへへ、ありがとう」
「……まぁいいけどな」
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