第25話 ユリスのいる日


修練が終わり、二人は家に帰ってくる。



「っと、おかえり。飯を用意しておいたぞ。今日はステーキだ」



ユリスとリリアナは、それをみて喜ぶ。

「わぁ、美味しそう!」

「ありがとうございます」

「たくさん食ってくれ」

「いただきます」



ユリスとリリアナは、肉を食べていく。



「美味しい!」

「おいしい!」

「喜んでくれているようで何よりだ」



俺は微笑む。

ユリスとリリアナは、幸せそうに食べている。

ユリスはともかく、リリアナの笑顔を見ていると癒されるな。



「パパ、これすごく美味しいですよ!」

「ああ、そうだな」

「パパも早く食べた方がいいですよ!」

「わかっている」



俺は自分の作った料理を食べる。



「うん、うまいな」

「よかった」

「パパはすごいんですよ。なんでも作れるんですから」

「へぇー、そうなんだ」



ユリスは俺のことを興味深げに見つめてくる。



「ねぇ、私にも何か作ってよ」

「えっ、俺が作るのか?」

「いいじゃん別に。減るもんじゃないし」



ユリスは子供のように駄々をこねる。



「うっ、仕方ないな。何をご所望だ? 何でもいいぜ」

「甘いものがいい」

「了解。じゃあ、さっき作ったものがあるぜ」



俺はキッチンへと向かう。

そして、ユリスが好きなケーキを取り出す。



「ほら、出来たぜ」

「おぉ、これが噂の……!! では早速」



ユリスはフォークで一口サイズの大きさに切り分けると、口に運ぶ。



「ん~、甘くて美味しい!!」



ユリスは嬉しそうに食べる。



「そんなに急いで食べなくても大丈夫だよ」

「だって美味しいんだもん」



ユリスはパクパクと勢い良く食べている。



(まるで小動物みたいで可愛い)



そんなことを思いながら、ユリスのことを見る。



「そんなに気に入ったのかい?」

「もちろん! だってこんなに美味しいんだもの」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」

「ところでオーフィア」

「なんだい?」

「オーフィアの好きな食べ物はなんですか?」

「俺の好物か……」

「はい」

「そうだな……。特にこれといってないんだが、あえて挙げるとするならば……やっぱり、甘いものだな」

「えっ、意外です。もっと渋い感じの食べ物が好きなのかと思っていました」

「ははは、確かにな。だけど、甘いものは好きだな」

「そうなんですか」

「リリアナちゃんは、甘い物とか好きか?」

「はい、大好きです!」

「そうか、それなら今度一緒にお菓子でも作ろうか」

「いいんですか!? やったぁ!!」



リリアナは無邪気に喜んでいる。

リリアナの年齢を考えると、まだ幼いところがあるようだ。

俺はそんなリリアナの様子を見ながら、思わず笑みを浮かべる。



「ふぅ……、お腹いっぱいになりました」

「満足したか?」

「はい!」

「そうか、なら良かった」

「パパ、ありがとう」

「どういたしまして」



リリアナは満面の笑みで答える。

するとユリスがリリアナの肩に手を置く。



「リリアナ、お風呂に入りましょうか」

「はい!」



リリアナと一緒にお風呂場へ向かう。

二人がいなくなった後、俺は一人で考え事をしていた。

ユリスの奴、リリアナに対して随分と優しく接しているな。

最初は警戒していたが、今ではすっかり心を開いているように見える。

リリアナがあんなに懐くなんて、ユリスは良い母親になれるかもしれないな。なーんて。ユリスとリリアナが戻ってくると、今度は俺が入ることになった。

俺はいつも通り、体を洗った後に湯船に浸かる。

ふう、気持ちいいな。

俺はゆったりとした気分を味わっていた。

だが、突然背後から声が聞こえた。



「お背中流しに来たわ」



振り返ると、そこには裸のユリスがいた。



「ちょ、お前……なにしてんだよ」

「何って、見ればわかるでしょ。あんたが入ってきたから、私が代わりに身体を流そうと思ったのよ」

「そ、そうだったのか。だが、わざわざそこまでしてくれなくていいんだぞ?」

「遠慮しないでよ。私が好きでやってることだからさ」

「ま、まあいいか。じゃあお願いするよ」

「任せて」



ユリスはスポンジで石鹸を泡立てる。


そして、タオルでゴシゴシと洗い始めた。



「どう?痛かったりしない?」

「大丈夫だ。丁寧で気持ちいいよ」

「それはよかった」



ユリスは丁寧に俺の身体を洗っていく。

俺はその様子をじっと見つめていた。

ユリスはスタイルが良いな。胸も大きいし、腰も引き締まっている。



「オーフィアさん、どうかしましたか? 私のことじろじろ見てますけど」

「ああ、すまない。綺麗だなって思って見惚れてしまっていたんだ」

「もう、オーフィアさんたらお上手ですね」



ユリスはクスッと笑う。



「そんなことはないと思うがな。本当に思ったことだぜ」

「またそういうことを言う……。私をドキドキさせないでください」

「はは、悪いな」



ユリスは恥ずかしそうにしている。



「次は前を頼む」

「わかりました」



ユリスは、後ろから前に移動して、再び身体を洗い始める。



「オーフィアさん、失礼しますね」



ユリスは俺の背中を流し終えると、そのまま前の方へと移動する。



「はい、これで終わりですよ」

「そうか、ありがとよ」

「いえ、お役に立てて光栄です」



ユリスは微笑む。



「じゃあ、私は先に上がっていますね」

「わかった」



ユリスは浴室から出ていった。



「ふう、まさかユリスが入ってくるとは思わなかったぜ」



正直驚いた。いきなりすぎて、心臓がバクバク鳴っている。

そのまま悶々としながらお風呂に入るのであった。

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