第8話 勇者来たれり
私は、ミハル。異世界から転生してきた勇者だ。
今日は、村人に頼まれて山の上の竜を倒すこと依頼を受けた。
竜の討伐なんて初めてだけど、私は負ける気がしない。だって私は強いもん。
そして私は山を登る。竜が住んでいるという洞窟に向かって進む。
私は歩きながら考える。私は何のために生きているのだろう? 私はなぜこの世界に呼ばれたのだろう? 私はこの世界に必要とされているのだろうか? 私は……生きる意味を見出せていない。
私は前世の記憶を持っている。私は、かつて日本で女子高生をやっていた。
私は両親と妹と一緒に暮らしていた。父は会社員、母はパート、妹の唯春は中学3年生。どこにでもある普通の家庭だ。
私の家族はとても仲が良い。父と母と妹、そして私。四人が仲良く暮らしていた。
幸せだった。ずっとこんな日々が続けばいいと思っていた。
そんなある日の事だった――私がこの世界に召喚されたのは。目が覚めるとそこは、見知らぬ部屋だった。白い壁に囲まれた部屋の真ん中にポツンと置かれたベッドの上に私はいた。辺りを見ると、そこには私と同じように召喚されたと思われる人たちがいた。皆、困惑していた。
私たちは全員、学校の制服を着ていた。どうやら、学校帰りに私たちを召喚したらしい。私を含めた召喚された人たちは勇者として召喚された。
勇者は魔王を倒し、世界に平和をもたらす存在。
勇者は選ばれた特別な人にしかなれない職業だと聞いている。
私が選ばれた勇者。とても誇らしく思った――
そして、私は魔王を倒すべく旅を続けている。
やる事は魔王を倒すことだけではない。それ以外にも人々を脅かしているものはたくさんある。
そんな風に、人を助けながら、私は旅をする――
***
リリアナは、いつものように朝早くから起きて、俺の手伝いをしている。俺はいつものように彼女の頭をなでる。
「おはよう、パパ」
「あぁ、おはよう」
リリアナは嬉しそうに笑っている。俺もそんな彼女を見て微笑む。
「じゃ、ご飯作ってくるね」
「おう」
そして台所へと向かう。俺はその後ろ姿を見送った。
***
しばらくして、リリアナは朝食を持って戻ってきた。
「はい、パパ」
「ありがとう」
俺はリリアナから皿を受け取る。今日のメニューはトーストに目玉焼きにサラダといったシンプルなものだ。
俺は手を合わせてから食べ始める。
「美味いな」
「本当!?」
「あぁ」
「良かった〜」
と安堵する。
リリアナは料理が上手いと思う。それに毎日俺の為に料理を作ってくれるしな……。
本当に感謝しているぜ?
「ごちそうさま」
「お粗末様です」
「美味かったぜ」
「ありがとう!」
とリリアナは照れくさそうにしている。
それから俺たちは片付けを始めた。
食器を洗うのは俺の仕事だ。俺は黙々と作業を続ける。すると、後ろから視線を感じたので振り返ると――リリアナは俺の方を見て笑っていた。
「なんだよ?」
「ん〜?なんでもないよ?」
「ふぅ~ん」
俺は再び、洗い物を始める。リリアナがこちらを見ている気配を感じるが、俺は気にせずに作業を終わらせた。
「終わったぞ」
「ありがとう」
リリアナはソファーに座っていた。俺はすぐ隣によりそって座る。
「ねぇ」
「なんだ?」
「えへへ~」
リリアナは笑いながら、俺に抱きついてきた。俺はリリアナの頭を撫でる。
「えへ~」
リリアナは気持ち良さそうな顔をして、さらに強く抱きしめてくる。
リリアナの頬が緩んでいるのがわかる。俺もリリアナの体温を感じられて幸せな気分になる。しばらくこのままの状態が続くのであった……。
と、その時だった。
「……」
「パパ? どうしたの?」
「殺気がする」
「えっ……? どういうこと? パパ」
「何者かが、この家に近づいてきている」
「……ッ!」
リリアナの顔が強ばる。……心配ないよリリアナ。大丈夫だからな。
俺はリリアナに話しかける。
「リリアナ、お前はここにいろ。俺はちょっと出てくるからな」
「え? でもパパ、危ないよ? 相手は誰だかわかんないし……それにパパに何かあったら嫌だよ……!」
不安げに言う彼女に対し、頭に手をのせる。
「大丈夫だ。俺は死なないよ。だからリリアナは何も心配しなくて良いんだぜ? わかったか?」
頭をなでながら、俺は目を見る。
「う、うん……。気をつけてねパパ……。絶対に帰って来てね……?」
「ああ、約束だ」
俺は笑顔で答えてから立ち上がる。そして、家の外へと向かった。
そして、俺は竜になる。
その姿は漆黒の鱗に覆われた巨体を持つ、四足歩行の生物。
俺は翼を広げて飛び立つ。そして、上空から殺気を放つ存在に向かって急降下した。
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