第8話
「ラウル、あんたのおかげで本当に助かったぜ! さすが、SS級パーティーの支援をやってただけある!」
「まったくっすよ! ラウルさん、あっしはあなたの神業に感動しっぱなしで……なんていうかもう、感謝の言葉しかねえっす!」
「うん。自分も、ラウルが凄すぎて嫉妬とか通り越しちゃった。こんな気持ち初めて。どうもありがとう……」
冒険者ギルドから出た途端、俺はダリア、セイン、リシャールの三人に感謝されてしまった。お礼の言葉なんて久々に聞いた気がする。
「い、いやいや、みんながそんな風に言ってくれるのは嬉しいけど、大袈裟だし照れるって。俺の力なんて些細なもんだし、こっちのほうこそ助かったよ」
ちなみに、今回のクエストの成功報酬は銀貨四枚だった。
それでも自分は大したことはやってないと思うし、報酬は一切貰わないつもりだったが、彼らがそれじゃ到底納得できないというので一枚だけ貰うことになった。
むしろ、パーティーから追放されたばかりの身としては、お金よりもこうして感謝されるほうがよっぽどありがたかった。なんというか、心の底がじんわりと熱くなるような感じなんだ。
「というか、ダリア、セイン、リシャール。別れる前に最後に一つだけいいかな?」
「ん、もちろんだぜ、ラウル! なんでも言ってくれ! あれか、臨時の延長とかか!?」
「おー、それなら大歓迎っすけど、お金が欲しいんだったら今からでもラウルさんに残りの報酬全部貰ってほしいくらいっすよ!」
「ラウル、自分とデートでも、いいよ? やんっ」
「ははっ」
本当に気さくで親切なパーティーだし、このまま彼らと別れるのが名残惜しいくらいだが、俺が望むのはそういうことじゃなかった。そもそも、パーティーは四人までと決まっているからな。
「『暗黒の戦士』は問題ありのパーティーって聞いてたけど、全然そうは感じなかったよ」
これだけはどうしても言っておきたかった。リシャールの件も含めて、彼らは問題ありどころか至ってまともなパーティーだったと。
「ぐっ……ラウル……泣かせるんじゃねえよ。そっちだって、超有能だし性格もいいしで、なんで追放されたのかって考えてはみたけど、私にはさっぱりわからなかったぜ……!」
「本当っすよ……。ラウルさんみたいなすげー技術を持った人格者を追放したパーティー、超絶ドアホだって思うしきっとそのうち天罰が下るっす!」
「自分も同感。できれば、ラウルを正式な仲間にしたいくらい」
「みんな……ありがとう」
自分も正直ぐっと来るものがあったが、このまま笑顔で終わらせたかったので泣くのを堪えた。
それから俺は、彼らの姿が見えなくなるまで手を振り合っていたが、視界は終始湿りっぱなしだった。
捨てる神あれば拾う神あり、という言葉を思い出す。まさに彼らは後者のほうだ。
『神々の申し子』パーティーから追放されたときは頭が真っ白になり、一時は冒険者を辞めようかと思ったものだが、こうして良い出会いに恵まれてよかった。
そういう意味じゃ、辞めないようにと説得してくれた受付嬢のイリスにも助けられた格好だ。彼女にも感謝しないとな。
「…………」
そういや、俺を追放した『神々の申し子』パーティーのバルド、シェリー、エミルは今頃どうしてるだろうか?
自分があのパーティーでやってきたことは、大したことはないかもしれないが少なくとも貢献できていたという自負はある。それだけに気にはなったが、もう俺は彼らとは無関係だからな。
こんな俺を応援してくれた人たちのためにも、終わったことは忘れて前に進んでいかないといけない。
俺は銀貨一枚を握りしめ、宿へと向かって黄昏に染まりつつある道を噛みしめるように歩き始めた。
ダリアたちと別れるときはとても悲しかったが、今は虹がかかった空のようになんとも清々しい気持ちだ。また良い出会いがあるといいなあ。
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