第15話
『ウバアァァッ……!』
また一体、また一体と全身を光り輝かせたエンシェントミイラが、『浄化魔法』を使った俺の足元に倒れて消え去る。
今のところ、問題なく倒すことはできている。できているが……こんなんじゃダメだ。圧倒的に数が足りない。
これで五体目の古代ミイラを片付けたわけだが、普段はもっと湧いてくるはずなのに何故か今日は全然見当たらないんだ。
この程度じゃあ、『聖域の守護者』パーティーに俺の実力を証明するなんてできやしない。何故なら、今まで自分がやってきた『浄化魔法』はほぼ同じ結果になっていて、アピールにはならないと思うからだ。
アンデッドモンスターを浄化する際の威力、すなわち祈りの気持ちを抑えることで、それまで三秒ほどかかってたのが二秒で倒せるようになったとはいえ、一瞬で退治したとまではいえない。
「「「……」」」
俺の後ろを歩くルエス、ユリム、カレンの三人から無言のプレッシャーを感じる。
そういえば、彼らから『化け物……』だの『ありえないです……』だの『これって現実……?』だのといった声が聞こえてくるが、どういう意味なんだろう?
察するに、治癒使いなのにたかが化け物退治にこれだけ時間がかかるなんて、そんなのありえないし夢なら覚めてほしい、といったところだろうか?
クッソ……。もっとモンスターが出てきてくれたら自分の実力を証明できるっていうのに、なんとももどかしい状況だった。
「…………」
てかこれだけ古代ミイラが出現しないってことは、どこかで溜まってるのかもしれないな。モンスターが溜まれば溜まるほどその処理は難しくなるし、冒険者たちからは放置されがちになるからだ。
ってことで、俺は視覚を活性化させた『探知魔法』を使用し、周辺を探ってみることに。
「――あっ……」
「ラ、ラウル君? 一体どうしたんだい……?」
「ラ、ラウルさん……?」
「ラ、ラウル……?」
「ルエス、ユリム、カレン。ここから東北東、250メートル先にエンシェントミイラの塊が出来てる。ざっと数えても百体以上はいるな」
「「「っ……!?」」」
これぞいわゆる『モンスターハウス』ってやつで、最早手がつけられなくなった状態。一定数以上は湧かない仕組みだったはずなので、道理で数が少ないわけだ……。
自然にこういう風になったのか、あるいは誰かが意図的にやったことなのかはわからないが、早くなんとかしないとほかのパーティーが古代ミイラの大群に遭遇し、深刻な被害が出てしまうことだろう。
「ラ……ラウル君、ちょっといいかな……?」
「え?」
「君って治癒使いだったよね? なのにそんなことまでわかるなんて、凄いなんてもんじゃないよ……」
「ですです……。ラウルさんって……まるで高名な支援使いみたいなのです……」
「て、てか、その中でもラウルは別格よ。支援使いでもここまで詳細なことが言えるはずないし、あたしそんなの聞いたことすらないもの……」
「ははっ……」
みんな、見え見えのお世辞を言うのに声まで震わせちゃって演技が上手だな。まあそれだけ気を使ってくれてるってことなんだろう。
ん、まもなくルエスが我に返った様子で俺たちの先頭に立った。
「それだけの『モンスターハウス』なら、耐えられるかどうかはわからないけど、僕が食い止めてみせるよ」
「そうですね……。急がないといけませんです……」
「うんうん。でも、慎重にね?」
「みんな、ここから動く必要はないよ」
「「「えっ……?」」」
「自分たちの存在感を活性化させた『誘導魔法』を使って、古代ミイラの群れをこっちに呼び寄せるから大丈夫だ。それだけ歩く手間も省けるし、ここへやってくるまでに準備することもできる」
「「「……」」」
なんだ、またみんな口をあんぐりと開けたまま固まってしまった。一体どうしたんだろう?
もしかしたら、サポート役としては当たり前のことなのに、偉そうに説明してると思われちゃったのかもしれないな。
うーむ……苦しい状況ではあるが、なんとかここから挽回して、彼ら『聖域の守護者』パーティーの仲間入りを果たしたいところだ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます