第14話
『聖域の守護者』パーティーに自分の実力を見せるべく、早速俺たちが向かったのは古代遺跡ダンジョンであり、その中でもエンシェントミイラが出現する区域だ。
このモンスターはいわゆるアンデッド属性なため、治癒魔法でもダメージを与えることが可能である。
こういうやり方を『ヒールアタック』というのだが、これを使っていかに早く倒すかで治癒使いは自分の回復力の高さを周囲に示すことができる。
同じ不死モンスターでも、そこら辺の洞窟にいるただのスケルトンやゾンビと違ってエンシェントミイラはかなりの体力を持っているため、『ヒールアタック』を試すにはうってつけの相手ってわけだ。
『――ウゴォォッ……』
深淵から響くかのような不気味な呻き声を聞けばわかるように、やがて俺と『聖域の守護者』パーティーは古代ミイラたちが棲息するゾーンへと到達した。
「よし、これで準備完了っと……」
リーダーのルエスが俺たちの先頭に立ち、向かってきた一体のエンシェントミイラを大きなシールドで受け止める。
古代ミイラはタフなのはもちろんのこと、そこそこパワーもあるわけだが、さすがにルエスは頑丈な盾使いなだけあってビクともしない。
「ラウル君、これから君の入団テストを行うけど、その前に話しておきたいことがある」
「話しておきたいこと?」
「ああ。僕たちは君の力を疑っていないとはいえ、『ヒールアタック』で倒すにはそれなりに時間がかかると思うし、その時点で数匹くらい古代ミイラが溜まってるかもしれない。でも、このモンスターの攻撃力程度なら耐えられるから問題ないよ」
「ですね……。なのでラウルさん……私たちのことはどうか心配せず、古代ミイラさんを倒すことに集中してくださいです……」
「うんうん。ラウル、あんまり古代ミイラが増えるようならあたしの魔術とユリムの剣術で倒すから大丈夫よ」
みんな俺のことを気遣ってくれて優しいなあ。こんなことは以前のパーティーでは一切なかったことだ。こうなったら、こっちも精一杯自分の力を出して迷惑をかけないようにしないとな。
「それなら大丈夫。すぐ終わらせるから」
「「「えっ……?」」」
ルエスたちがぽかんと口を開ける中、俺は治癒魔法によってエンシェントミイラを倒すことに成功した。およそ三秒ほどかかってしまったので、凡庸すぎてルエスたちがどんな反応を見せるのか不安なところだ。
「こ……こんなのありえるのか……?」
「……し、信じ、られないです……」
「……う、嘘ぉ……」
ん……? みんな放心状態になってるっぽい。
ってことは……内心じゃ一瞬で倒せると思ってたのに、期待外れだったから呆れ果ててしまっている状態なのかもしれないな。
何故なら、俺はSS級パーティー『神々の申し子』の一人だったんだからそれくらい期待されていてもおかしくないし、これは言い訳しておかないとまずいだろう。
「えっと……わかりやすく説明すると、俺の場合『ヒールアタック』っていうより相手を人間に見立てた『浄化魔法』をやったから、祈りの気持ちを活性化させて威力を高めた分、倒すのがちょっと遅くなってしまったんだ」
「「「……」」」
うわ、今度はみんな黙り込んじゃってる。ダサい言い訳だと思われちゃったんだろうか? このままじゃすぐに不合格を言い渡されそうだ。
「ラ、ラウル君、もう一回見せてもらってもいいかな?」
「わ、私も見たい、です……」
「あたしも……」
ルエス、ユリム、カレンの三人が同じようなことを言ってきた。ってことは、俺にもう一度チャンスをくれるってことか。やっぱりみんな優しいなあ。
「ありがとう、みんな……」
かつてのライバルパーティーである彼らに自分の実力を認めさせるには、この程度のクオリティじゃ不充分だったのは明らかだ。
「今度こそ、もっと早くエンシェントミイラを倒してみせるよ」
「「「……」」」
俺の言葉に、ルエスたちは何も返してこなかった。おそらく、つべこべ言わずにさっさと口だけじゃないところを見せてみろってことだな。よーし、見てろ。次こそみんなをあっと言わせてやる……。
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