第18話
「お、おのれ……な、何故だ……何故こんなことになったというのだ……」
「ひぎいぃっ……顔が……あたしの顔がぁ……」
「エミル、大丈夫、大丈夫です、必ず治りますから……」
古代遺跡ダンジョンから、焦げ臭さや喪失感とともに脱出した三人組パーティー『神々の申し子』。
リーダーのバルドは険しい表情で独り言をブツブツと呟き、エミルは自身の焼けただれた半面を手で覆い、シェリーの肩を借りながらフラフラと歩いていた。
「……どう考えても僕にはわからない……。何故だ、何故大魔法が発動する前に、
「あのですね……バルド。あなたは一応リーダーでしょう? エミルがこんな目に遭ったのですから、少しは心配したらどうなのです!?」
「……は、はぁ!? シェリー、僕を責めるのはお門違いというものだろう! こうなったのも、間抜けなエミルが逃げ遅れたのが悪いんだろうが!」
「そういうことではありません。少しはリーダーとして仲間のことを心配したらどうかと言っているのですよ!」
「チッ……。死んだわけでもないのに大袈裟な。そいつのミスなのだから、いちいち甘やかさずに黙って高級ポーションでも飲ませておけばいい!」
「バルド、そんな言い方はあんまりです。エミルも何か言ってください」
「……うぅ……顔、あたしの顔がぁ……」
「……はあ……」
会話が一向に噛み合わず、呆れたように首を横に振るシェリー。
「それより、今は時間がない。このままだと時間切れで自動的に格下げされるから、ギルドへ失敗報告に行くぞ」
「え、ですがバルド、このまま報告しに行ったとしても結局は降格になってしまいますよ?」
「それならば問題ない。僕にいい考えがある」
「いい考えですか。上手く行けばいいのですがね」
「僕を疑うのか、シェリー?」
「いえ……」
「やだ……。あたし、こんな醜い顔、誰にも見られたくないし、ギルドなんて行きたくない……ひっく……」
「エミル、我儘言うなっ! それなら仮面をつければいいだけだろうが!」
「え……仮面……?」
「そうだ。それならいいだろう。とあるタイミングで、少しの間外してもらうが」
「うぅ、一瞬でもやだ――」
「――黙れ! 引き摺ってでも連れていくからな!」
「エミル、我慢してくださいな」
「……ひっく……ぐすっ……」
二人でエミルを引き摺るような格好で、バルドたちは冒険者ギルドへと向かった。
「――これはこれは、超有名な『神々の申し子』ご一行様ですね。なんのご用件でございましょう?」
イザベラが声高に言い、バルドが露骨に顔を歪める。
「チッ、またお前か……。言っておくが、失敗報告とはいえ勘違いするなよ。これには深い事情があるのだからな……」
「はて、深い事情とは一体なんでございましょう?」
「僕たちはエンシェントマジシャンを五体倒すクエストを受けたわけだが、そのうちの一体が、なんとあの変異種だったのだ……」
「「「「「ザワッ……」」」」」
バルドの口から変異種という言葉が飛び出した途端、受付嬢の顔が強張り、俄かにギルド内がどよめく。
「変異種でございますか……。それは只事ではございませんね。記憶している限りでいいですので、なるべく詳細をお願いします」
「フンッ。バカにもわかるように説明してやるからよく聞くがいい。あれは、エンシェントミイラ並みにタフな古代魔術使いだった。三人で集中攻撃したにもかかわらず、やつの詠唱が終わるまでに倒すことができなかったのだ……」
「……はあ。僭越ながら申し上げますが、それは単にあなたたちの火力が足りなかっただけでは?」
「なっ、なんだと……!? 僕たちはSS級パーティーだぞ! 唯一、クエストの合否を判断する監視員がつかない、すなわち
「バルドの言う通りですよ。私たちに対して妬んでいるのが見え見えで恥ずかしいです。ねえ、エミルもそう思いますよね?」
「…………」
「エミルッ、黙ってないであなたも何か言いなさい!」
「う、うぅ……顔……じゃなくて、あたしたちの面子を汚さないでよ……」
「それはそれは、申し訳ございませんでした。しかしながら、一切の証拠がないというのもどうかと思いますので、何か参考となるものを提出していただけるとありがたいのですが」
「フンッ。証拠ならばある。僕たちは相手が変異種なのもあり、異変を察していち早く後退したのだが、エミルだけが転んでしまい大魔法で大火傷を負った。さあエミル、仮面を脱げ」
「脱ぎなさい、エミル」
「ひっく……わ、わかったわよ、脱げばいいんでしょ!」
ほんの僅かな間、仮面を脱いで受付嬢に火傷を見せるエミル。
「なるほど……よくわかりました。では、変異種モンスターへの注意喚起をするとともに、今回のクエスト失敗は無――」
「――異議ありっ!」
「「「……っ!?」」」
バルドたちが安堵した表情を浮かべたのも束の間で、異議を唱える人物が登場するのだった。
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