第23話
「「「「――おおぉっ……」」」」
あれから、俺たちはおよそ一日ほどかけて獣道を進み、ようやく山奥にあるという小さな村が見えてきたところだった。
大量の緑に囲まれた長閑な村といった感じか。まさかこんな閑散とした場所で変異種が誕生するなんてな。
なんせ変異種のモンスター自体、数多く同一種を倒さないと発生しないと言われてるんだ。
ってことは、最近卵や羽毛を狙う冒険者によって、大規模なカラス狩りでもされたんだろうか……って、ルエスたちがあの村を眺めながらやたらと感動している様子。一体どうしたんだ?
「ま、まさか、もうこんなところまで着いちゃうなんてね……。かなり前、C級の依頼で卵を取りに来たとき以来だけど、四日はかかったのを覚えてるからさすがにびっくりしたよ。さすがはラウル君……」
「ですです……。早くても三日はかかるって言われてるのに……。これも全部ラウルさんのおかげです……」
「うんうん。あのときはユリムがホームシックにかかるくらい時間がかかって苦労したのに、たった一日でここまで来られるんだもんねえ。ラウルって本当にすごぉい……」
「…………」
ん、そうなのか? 俺はこのエレイド山にも行ったことがなかったから基準がよくわからないが。
まあ、別に大したことはやってないと思うし、褒め称えて俺に自信を持たせようっていうみんなの配慮だろう。
「――それじゃ、ジャイアントレイブンの変異種を探してみるよ」
「「「了解っ……!」」」
ほどなくして、変異種が出現した村へ着いたってことで、俺は早速『探知魔法』で周辺の様子を探ってみる。
「――あれ、いない……」
「「「えぇっ……?」」」
「村を中心に、300、400、500メートルと、捜索する範囲を徐々に拡大しつつ探知していったんだけどな。やっぱりどこにも見当たらない……」
「「「……」」」
あれれ、ルエスたちが黙り込んでしまった。こりゃ、期待外れだと思われた可能性があるな。彼らは苦労してきたからか我慢強いし、バルドたちみたいに簡単に口には出さないだろうけど、俺はその優しさに甘えたくはない。
「ま、まさか、僕たちに……というか、主に化け物クラスのラウル君に警戒してどこかへ逃げたんじゃ……?」
「……ルエス……それ、ありえますです……」
「えー? ラウルにビビるって確かに普通にありそうだけど、どうしよお……」
「ははっ。いやいや、ルエス、ユリム、カレン。そんなはずはないよ。俺なんて大したことないし、それに災害級まで進化したならともかく、変異種のモンスターはその場に残り続けるっていう習性があるんだ。よーし、それならアレを試すか」
「「「アレ?」」」
「ちょっと待ってて――お、いた……」
「「「えっ……!?」」」
「試しに嗅覚を活性化させる『感知魔法』を使ってみたら、普通のジャイアントレイブンとは異なる匂いがしたんだ。おそらく、変異種なだけに姿を隠す能力が追加されている」
「な、なるほど、そんなことまでわかるなんてね……。それならラウル君、隠れた変異種カラスをどうやって炙り出すんだい……?」
「どうやるんです……?」
「どうやるのぉ……?」
「…………」
変異種を炙り出す方法か……。正直そこまではわからないが、だからって『わかりません』という回答じゃダメだ。考えろ、考えるんだ。
メンバーから大いに注目を浴びている今こそ、新人である俺の真の力が試されているといっていい。もう役立たずだからとパーティーを追放されるのは御免だからな。
俺は雑念を振り払う『瞑想魔法』を使い、しばし考え込んでいるとパッと名案が浮かんだ。
「――よし、『誘導魔法』を使おう」
「「「『誘導魔法』?」」」
「あぁ。この魔法は変異種自体には通用しないが、ジャイアントレイブンは鳥類で仲間意識が強いから、同種をひたすら倒していけば変異種も仲間を助けようといずれ出現するはずだ」
「「「な、なるほど……」」」
そういうわけで、村に被害が出ないように俺たちはそこからある程度距離を取り、テリトリーの範囲内で『誘導魔法』を使って大型カラスたちを誘き寄せることにした。
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