第4話
『暗黒の戦士』の臨時メンバーに加えてもらった俺は、早速その足でオルサム山へと向かうことに。
その山でピンクハーブっていう薬草を5つ採集するクエストを受けたんだ。
薬草の中でもかなり珍しいものみたいで、今の時期にそこにしか生えない代物らしい。
クエストランクはCで、薬草は急な斜面に生えることが多くて足場が悪く、発生するモンスターもそこそこ強いとのこと。俺は行ったことがないからよくわからないが。
ちなみにパーティー構成はというと、両手斧使いのダリア、短剣使いのセイン、大鎌使いのリシャール、それに治癒使いの俺だ。
「いやぁー、楽しみだなー、SS級パーティー『神々の申し子』のラウルの実力が!」
「マジ、あっしもワクワクするっすよ」
「いや、俺は全然凄くないから」
俺はそう苦笑しながら本音を零しつつ、リシャールとかいう巨大な鎌を持った少女に目を向けてみたが、やはり無表情でうなずくことさえなく、視線まで逸らされた。
なんでも、リーダーのダリアによるとリシャールは極度な人見知りとのこと。ただ、あの態度を見れば俺の実力を疑ってるのは確定っぽい。
まあ追放されたことも彼女たちには伝えてるわけで、そういう目を向けられても仕方ないのかもしれない。だからって自分が無能とまでは思わないものの、大した力がないというのは否定できないし。
「ラウル、さっきから浮かない顔してるぜ。大丈夫か?」
リーダーのダリアに心配そうに話しかけられる。
「あ、ちょっと考え事を」
「まあ、追放されちまったんならしょうがねえよな」
「ああ。テンションを下げてしまって申し訳ない」
「アハハッ、そんなこと気にすんなって! てか、あの爺さんがいたらもっと盛り上がってたのになあ」
「あの爺さん?」
「治癒使いの爺さんで、私たちの正式な仲間さ! なんせ同職だからってラウルのことをよく話してたからな。『わしもいつかああいう風になりたいものじゃ』って」
「へえ……。そりゃ光栄だ。でも、今回はなんで外れたのかな?」
「ぎっくり腰ってやつ。もう歳だからなあ」
「なるほど……」
ってことは結構な年齢なんだろうな。まあそのおかげで俺がこうしてこのパーティーに入れたんだから感謝しないと。
それからしばらく歩いていると、ようやく目的地のオルサム山が見えてきた。あの場所へは行ったことがないだけに、内心ワクワクするものがあったが、こうしてすぐ向かうのは事情がある。
今はとにかく金が欲しいんだ。
SSランクパーティーに所属していたとはいえ、資産の管理はリーダーのバルドが担当していた上、追放される際も手切れ金さえ貰えなかった。
つまり、もし今回のクエストがなかったら一文無しになるのも時間の問題だったわけだ。
なので渡りに船なのだが、懸念もある。受付嬢のイリスによれば『暗黒の戦士』は問題ありのパーティーらしいから、逆に金品を巻き上げられる可能性もあると思ったんだ。
ん、ダリアたち三人がふと立ち止まった。なんだ? まさか、豹変して襲ってくるつもりじゃないだろうな……。
「……てか、結構進んでるっていうのに全然疲れねえな」
「あ、マジっすね。めっちゃ不思議っす」
「ああ、それなら『自動体力回復魔法』をかけておいたからだよ」
「「「っ!?」」」
「ん、どうしたんだ、みんな?」
ダリアを筆頭にみんな驚いた顔をする。肉体の自然治癒力を活性化させただけの魔法なんだけどなあ。
「い、いや。治癒使いって単純に傷の回復しかできねーはずなのに、やっぱり本物はすげえなあって」
「さすが、天下のラウルさんっすねえ」
「ははっ、二人ともお世辞が上手だなあ」
「…………」
ダリアとセインがお世辞の言葉を並べる中、リシャールが項垂れつつ首を横に振っていた。
これくらいで有頂天になってると思って呆れられた? まあ俺がやったことなんて普通のことだろうしな。彼女にも認められるように頑張らないと。
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