第3話
翌朝の冒険者ギルドの待合室。
俺は早速、臨時の仲間を募集していたCランクパーティーと対面することになった。
「あなたたちが、『暗黒の戦士』の方々?」
「その通り! 私がリーダーで両手斧使いのダリアだ。あんたが臨時のパーティーを求めていた治癒使いだな? よろしく頼むぜ!」
大柄な女が笑顔で握手を求めてきたので、俺はそれに快く応じたわけだが、見た目通り凄い握力だった。
「よろしく。俺は治癒使いのラウルっていうんだ」
「そうか、ラウルっていうのかあ――って、え、ラウルって、マジで!?」
女が目を飛び出さんばかりに大きくする。
「ん、どうしたのかな?」
「ま、まさか、あ、あの『神々の申し子』のラウル!?」
「……そうだが、知ってるのか?」
「そ、そりゃそうだ! SSランクパーティーっていやあ、この国に一つしか存在しないんだからな!」
そうか。よくよく考えてみたら、このダリアとかいう女が驚くのも無理はないのか。
Sランクパーティーであれば、一つの町に一つは存在するのでそこまで珍しくはないが、SSランクとなれば話は別で、余程のことがない限り到達することはまず不可能だと言われている。
今から一月ほど前、S級パーティーでさえも敗北した災害級モンスターを俺たちが倒したことがあり、それが高く評価されて昇格したんだ。
だからこそ、治癒使いのような地味な役職の俺でも名前が知られてるってことか。
ただその分、そんな超有名パーティーから追放されたってことですぐ冒険者たちの耳に入ると思うが、彼女の反応を見るにまだそこまで広まってはいないようだ。
「や、やべーよ。鳥肌もんだ! ウルトラレア引いちまった……。て、てか、なんでそんなすげーのがパーティーを募集してるんだ!?」
「…………」
失望されそうだし本当のことを言おうかどうか迷ったが、どうせすぐばれることだ。
「それが、追放されてしまってな」
「は、はあぁあっ!? つ、追放って、なんで!?」
「正直なところ完全には納得はしてないが、無能扱いされたんだ。そんな俺でいいなら……」
「いやいや! 謙遜しすぎ! 100%納得してないんだったらきっと、無能だからじゃなくてアレでしょ。仲間同士でいざこざがあって、それで嫌われたとか……」
「うっ……」
いざこざというか、メンバー全員に総スカンされたことは図星だっただけに、思わず表情に出してしまった。
「やっぱり! でも、あんたってそんなに性格が悪そうには見えないけどなあ」
「ははっ……」
まあ、昔から真面目そうとか優しそうとか言われるしな。てか、まじまじとダリアに間近で見つめられてなんとも照れる。
「ま、リーダーの性格に比べたら悪くないんじゃねえっすか?」
そこで、モヒカン頭の小柄な男が下卑た笑みを浮かべながら前に出てきた。
「はあ!? おいおい、セイン、私のどこが性格悪いって!?」
「いでっ!? ほ、ほら、そういうとこっすよお!」
頭を小突かれて痛そうにしつつも、おどけたように舌を出すセインという男。びっくりしたが、この感じだと慣れてるっぽいな。
「へへ……。どうも、ラウルさん。あっしはセインっていうっす」
「よろしく」
俺はセインとも握手を交わした。見た目はいかついが意外といい人そうだ。
「てか、ラウルさん。あっしが一つ聞いても?」
「ん? 構わないよ」
「なんでそんなすげーお人が、あっしらなんかのパーティーに? 別にあっしらのパーティーじゃなくても、引っ張りだこっしょ!」
「ん-、それは……今はそっちのパーティーしか募集してなかったのもあるし、臨時だから気楽だっていうのもある。あと、なんか問題ありって聞いたから」
「えぇ!? そ、それってどういう意味っすか?」
「お互いに問題ありな冒険者同士で気が合うのかなって」
「なるほど!」
「なるほどっす!」
どうやら納得してくれたらしい。
「てか、問題ありっていうけどよ……ラウルっていい人そうだし、追放するとかとんでもねえぜ。私はそんな酷いことをするくらいならまずセインを追い出す!」
「ちょっ!? リーダー、ひでえっす!」
「ははっ……」
面白いパーティーだ。
「…………」
ただ、彼らの後ろにいる少女が終始無表情かつ無言なので気になった。
彼女のほうを見たら、はっとした様子で顔を背けられたし、人見知りな性格なんだろうか? それなら無理に自己紹介してもらうのも気が引けるし、もう少し慣れてきたらでいいかもしれない。
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