#017 舐めプは駄目

 ミドリとコレットはホーンラビットを納めるためにギルドに来ている。ナンシーさんの列に並び、ホーンラビットの角と魔石と毛皮と肉を4セット提出した。

 

 「どれも綺麗だね。優秀優秀」


 うんうんと手際よく査定がすすみ、ミドリたちは銀貨12枚を手に入れた。討伐証明の角はポーションの素材にも使われるらしく意外と良い値で売れた。買取が終わるとナンシーさんがミドリとコレットの格好をジロジロ見ながら。


 「ミドリ君とコレットちゃんは狩りに行くときも同じ格好なのかな?」

 「そうだよー」

 「ふーん、かなり危ないね。装備を整えた方がいいよ」

 「体力がないから重い装備はちょっと厳しいんだけど」

 「ミドリ君は大きなケガをしたことがないんだね。装備を甘く見る冒険者は早く死ぬよ」


 いつになく厳しい表情と口調のナンシーさん。本気で心配してくれてるみたいだ。コレットもそれが分かるから文句を言わない。


 「わかった。防具屋に行ってみる」

 「まだミドリ君とコレットちゃんは子供なんだから安全第一だよ!」


 ナンシーさんは笑顔でウィンクした。



◆◆◆



 ミドリとコレットは商業区で武器と防具の看板を見つけ中に入る。すぐにカウンターに座っている若い男性が声をかけてくる。


 「いらっしゃい。今日は何のようだい?」

 「二人の防具を見せて欲しい」

 「噂のミドリ君とコレットちゃんだろ?もう冒険者登録したのかい?大したもんだ」


 そう言って店内を案内してくれる。狭い村なのでミドリたちのことは村人みんなが知っている。


 「ミドリ君はまだ体力がないだろうから、これなんてどうだい?革製の頭巾とズボンに軽鎧とブーツだ。急所の部分の素材を特に厚くしてある。全部で金貨16枚だ」

 「これは何の革?」

 「基本はオーク、急所の部分は岩トカゲだよ」


 ミドリは細部まで観察する。軽くて動きやすくて丈夫で、いい感じだ。


 「じゃあ。これにする」

 「僕も同じのでいいや」


 二人の防具はあっさり決まった。


 「まいどあり。サイズが気に入らなかったらタダで調節するからまたおいで。ところで冒険者にはなりたてなんだよね?」

 「まだ戦闘経験が少ないぺーぺーだよ」

 「武器は何だい?」

 「木の槍」

 「僕は銅の短剣と丸盾」


 男性の目がキラッと光ったような気がする。


 「飛び道具は使わないのかい?」

 「使ったことない」

 「試してみたらどうだい?先手を打てるし牽制にも使えるから便利だよ」


 たしかに先制攻撃ができるメリットは大きい。


 「どんなものがあるの?」

 「ミドリ君が使うなら投石器にパチンコに軽弓。あとは変わり種で吹矢なんてのもあるよ」


 飛び道具が並んでるスペースに案内してくれる。本当に様々な飛び道具があるなかで、特に目についたのが。


 「あれは何?」

 「あれはクロスボウだよ。力が弱くても強力な矢を放てる。でも次の矢の装填に時間がかかるし、命中率は弓に劣る。使う時と場所を選ぶ武器だね」


 おじさんは嬉しそうに説明してくれる。ミドリの視線に気が付いたおじさんは照れながら。


 「僕は飛び道具の職人なんだ。防具は父親の仕事さ」


 おじさんの照れた顔を見せられても嬉しくないな、などと失礼なことを考えながらパチンコを手にする。ゴムのような紐を引いてみると、ミドリの力でも十分に引ける。


 「この伸び縮みする紐は魔物の素材なの?」

 「それはブルーカメレオンの舌だね。良く伸びるし丈夫なんだ」

 「パチンコいいかも。試してみよう」


 ミドリの飛び道具が決まり、コレットはクロスボウを興味深そうに見ている。


 「ちょっと引いてもいいかな?」

 「もちろんだよ。先におじさんがやってみせるよ」


 おじさんはクロスボウ先端のフットストラップを踏み本体を固定、両手で弦を引っ張りフックに掛ける。最後に矢をセットして準備完了。安全装置が付いており解除しトリガーを引くことで発射となる。おじさんはクロスボウを初期状態にしてコレットに渡す。コレットは試しにやってみる。


 「うーーーん。かなり力がいるね」


 背筋を全力で使ってなんとかセットできた。


 「僕はクロスボウを使ってみるよー」


 全部で白金貨4枚と金貨7枚を払って店を出た。出費は痛いけど大ケガをする可能性が減ったと思うことにした。


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