Chap3.魔の森と薬師の少女
#020 リベンジ
ミドリは身体強化の訓練をしつつホーンラビットを狩り、【クラフト】を繰り返す毎日を送っていた。コレットがミドリに提案してきた。
「ミドリ、そろそろいいんじゃないかな?」
「何が?」
「魔の森に入ってみようよー」
「まだ早くない?」
「リベンジだよ。リベンジ」
コレットはこの村に来る途中にゴブリンの群れに襲われ震えることしか出来なかったことを気にしているようだ。ミドリもゴブリンにあえなく吹っ飛ばされてコレットを守れなかったことを悔やんでないと言えば噓になる。あの時は冒険者に助けてもらえて運が良かっただけだ。後悔じゃなく反省して次に生かすべきだというのは分かっているけど、なんだか胸の奥がモヤモヤする。魔の森のゴブリンを討伐しても、そのゴブリンはロナウドさんの腕を奪ったゴブリンじゃないのも分かっている。
防具を整え遠距離武器を手に入れ、ラプタが仲間になった。焦りは命取りだけど、慎重にいけば大丈夫な気がする。そろそろホーンラビットを卒業してもいいかもしれない。そしてミドリは現状を確認する。
■■クラン Lv2■■
【メンバー】 3/10
ミドリ Lv14
コレット Lv15
ラプタ Lv2
■■ステータス■■
名前:ミドリ(10歳男)
種族:人間
Lv 14
HP 46/46
MP 10/58
固有スキル:クラン Lv2(スキル付与・クラン内念話)
固有スキル:クラフト Lv3(Dランク作成)
■■ステータス■■
名前:コレット(13歳女)
種族:人間
Lv 15
HP 52/52
MP 30/34
固有スキル:時空庫 Lv2(中容量・時間遅延)
スキル:鑑定 Lv2
■■ステータス■■
名前 ラプタ(4歳オス)
種族:ウッドアウル
Lv 2
HP 5/5
MP 8/8
固有スキル:索敵 Lv1(小範囲)
固有スキル:知恵 Lv1(言語理解)
スキル:気配遮断 Lv1
「よし、やろう」
ミドリたちは魔の森に接する北門から外に出る。魔の森はなぜか奥に行けば行くほど魔力が濃くなり、現れる魔物も強力になっていく。最奥にたどり着いた冒険者は確認できる限りいない。
村兵のおじさんは10歳のミドリが魔の森に入ることに間違いがないか何度か確認した。ここでは子供だろうと死んだら自己責任、ミドリを止めることはしなかった。
森を慎重に進む。森というだけあって木が多く、ホーンラビットがいた見晴らしのいい草原とは圧迫感がまるで違った。魔力の濃度が少し濃いせいか息苦しく感じる。ミドリの頭の上にのってるラプタから念話が入る。
『主。この先に大きめの魔物の反応があるぽ。単独行動で距離は700メートルぽ』
ラプタが【索敵】にひっかった魔物の場所を教えてくれる。ゴブリンにホーンラビットと同じ戦法は通じないだろう。ミドリは右手に木の短剣、左腕に丸盾を装備する。丸盾は腕に装備する小さな盾だ。ブンブンと短剣を振ってみる。
(よしっ)
人型の魔物と戦う。やるかやられるかの勝負、文字通り明確に勝ち負けが決まる。勝てば報酬を得、負ければ全てを失う。毎週末はチェリーに死にそうになるまでボコられて覚悟は体に染みついている。以前のガタガタ震えることしか出来なかったミドリとは違う。忍び足でゴブリンに近づき、木の陰から覗く。
(・・・いた)
ゴブリンはリスのような小動物を黙々と食べており、こちらには気が付いていない。ミドリはパチンコを左手に取り出し紐を引く。よく狙いを定めて銅の玉を発射。
(外れた!)
ゴブリンは自分より小さなミドリに気が付き、ミドリを認識するとニヤッと笑みを浮かべる。そしてボロボロにかけたナイフを片手に走ってくる。こいつもミドリを舐めてくれるらしい。
もう一度パチンコで銅の玉を発射、今度は左足に命中した。ゴブリンは立ち止まりジワリジワリと距離を縮めてくる。ミドリのパチンコを警戒し、視野が狭くなった。
サクッ
その瞬間ゴブリンの腹に矢が刺さった。木の陰に息をひそめて隠れていたコレットが放ったクロスボウの矢だった。狙ったのは胸、命中したのはその下20センチの箇所。それでも十分と身体強化を施し一気に詰めたミドリの突きがゴブリンの顔面に突き刺さる。槍先は眼球を突き破り脳に到達、ズブリと脳を掻き混ぜる生々しい感触がする。ゴブリンはビクッと痙攣したのちに動かなくなった。
念のため短剣で心臓をもう一突き、ズブリと肉を抉る感触がした。討伐部位の耳を切り取り、心臓をホジホジするとコロンと魔石が落ちてきた。初めての人型魔物の討伐。
『主。お疲れぽ』
「やったねミドリ。格好良かったよ」
「ラプタもお疲れ。コレット助かったよ」
「気分は悪くない?」
コレットが心配そうに覗いてくる。
「不思議と落ち着いている」
ずっと喉につかえていた魚の骨が取れたような気分だった。自分が思ってたより気にしていたのかもしれない。休憩し村に戻ると、なぜか門の前で待ってた村長に夕食を誘われた。アンさん手作りの夕飯は豪勢だった。
「ミドリにしてはよくやったわね」
チェリーに初めて褒められた。
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