#021 魔の森は宝石箱

 初めてのゴブリン討伐からひと月、ミドリたちはゴブリンを狩りまくった。ラプタの【索敵】で単独行動のゴブリンのみを狙い、複数行動のゴブリンからは全力で逃げた。


 ミドリのパチンコの命中率が上がり8mの距離ならゴブリンが多少動いても狙った部位に当てられるようになったが、コレットのクロスボウの命中率は相変わらず低い。武器屋のおじさんが言ってたようにクロスボウの精度自体に問題があるのだろう。

 

 ミドリとコレットは冒険者ギルドで魔石と討伐部位であるゴブリンの耳を納める。ゴブリンは肉が売れないので儲けが少ない。受付のシェリーさんが提案してきた。


 「魔の森に慣れてきたみたいね。そろそろ植物の採取なんてどう?」

 「植物の自生地を見つけるの大変じゃない?」

 「自生地は大切な稼ぎの元だからみんな秘密にするのよ。最初は大変だけど経験を積んでいくつかの自生地を見つけたらいい稼ぎになるわよー」

 「うーん、植物の知識がなさ過ぎて実感が湧かない。詳しく知りたいかも」

 「それならいいものがあるわよ」


 待ってましたと受付のお姉さんはギルドの奥にダッシュし、一冊の本を持ってきてミドリにわたす。表紙をみる。植物図鑑と書かれている。


 「1年くらい前に夜逃げした商人から買ったの。今なら、たったの金貨5枚!」


 この世界の本は高い、お姉さんはニコニコしてるけど絶対に知ってる。売ったのはミドリが来る前に夜逃げした前店長だ。格安で手に入れたに違いない。


 (ぐぬぬぬぬぬ、商売上手め)


 ミドリは金貨5枚で植物図鑑を手に入れた。



◆◆◆



 その晩、ミドリはベッドに寝転がって植物図鑑を眺める。図鑑は草や木の実の生態や採取方法などが詳しく書かれていて面白かった。ポーションの材料になる草、病気に効く草、毒になる草、魔物の餌になる木の実、などなど、かなり奥が深い。そしてミドリの隣で図鑑を眺める従魔のラプタ。


 『主。植物に興味あるぽ?』

 『うん、いい稼ぎになるかもしれないんだって』

 『見たことがある植物が沢山あるぽ』

 『マジで?』

 『ウッドアウルは森の賢者って言われているぽ。森はラプタの庭も同然ぽ。案内するぽ』


 どや顔のラプタが可愛い。でも危ないからあまり遠くに行くなよ。



◆◆◆



 次の日、探索の準備を整えて家を出る。木製の短剣と丸盾をいつでも取り出せるように準備。北側の門番のおじさんに挨拶して村を離れる。


 ミドリが前衛、コレットが後衛、そしてミドリの頭の上には従魔のラプタが止まっている。


 『一番近い自生地はココぽ』


 ラプタが賢すぎる件。


 『主、これはポーションの材料になるブルーリリィぽ』


 ミドリは図鑑を見ながら丁寧に植物を採取し、コレットが【時空庫】に取り込む。【時空庫】は時間の流れが半分になるので保存に便利だ。


 『これは毒にも解毒薬にもなる、コカブトぽ』


 『これは薬になる、ウッドニンジンぽ』


 『これは貴重ぽ!凄く美味しいぽ!魔物はみんな大好きぽ!ココミッツぽ』


 ラプタのテンションが高い、食いしん坊?


 『主、これは・・・なにぽ?』


 これは前世の記憶で知ってる、犬にひかせて抜くマンドレイクとかいうやつ。植物図鑑にも載ってなかった。危険かもしれないので今回はパス、場所だけ覚えておこう。


 こうして植物を根絶やしにしないよう注意しながら採取を進めていった結果、初めての採取はかなりの成果を得ることができた。


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