#022 クッキーを作ろう
ミドリは植物採取の成果を眺める。
(思った以上に取れたな)
ほとんどラプタのおかげだ。ミドリは皿に採取してきたココミッツを分けるとラプタは嬉しそうにかじる。
ギルド受付のシェリーさんは採取は儲かると言ってたが、この素材をギルドに売ればいくらになるだろう。ただ前世の記憶があるミドリは知っている、魚は取ってそのまま売るより加工して売った方が儲かるということを。
『主、悪い顔をしているぽ』
食事が終わったラプタからの念話。
『今日とってきた素材を使って何か作ろうと思って。ポーションとか?』
『いきなりポーションは難易度高すぎぽ。簡単なものから始めてみるのはどうだぽ?』
『簡単な物って?』
『例えば・・・餌ぽ』
まだ沢山残っている保存便に入ったココミッツをチラチラ見ながら答えるラプタが可愛い。
『餌って魔物の餌?』
『作る価値は高いと思うぽ。強い魔物をテイムするのに美味しい餌を使うと成功率が上がるぽ』
『そうなんだ。魔物の餌ってどうやって作るの?』
『人間が食べるものと同じぽ。魔物にも食べ物の好みがあるから、そこは試行錯誤が必要ぽ』
◆◆◆
次の日、ミドリは村長の家を訪ねる。
今日用事があるのは。
「ミドリちゃんが私に用事があるなんて珍しいわね」
「料理を教えてほしくて」
「一人暮らしだもんね。男の子なのに偉いわ」
アンさんの料理はとても美味しい。
「どんな料理を覚えたいの?」
「とりあえずクッキー」
「可愛い!シッカリしていてもまだ子供ね」
アンさんがミドリをギュッと抱きしめる。
再び大きい胸に沈んだミドリは息が出来ずにアンさんをタップする。
「クッキーね、わかったわ。材料あったかしら」
「材料は買ってきました」
とりあえずラプタの好みで食材をチョイスした。トビトカゲの卵、アメノサイのミルク、キビキビ糖、小麦粉、そしてココミッツ。
「・・・高級食材ばかりじゃない」
アンさんがドン引きしている。確かに高かったけど可愛いラプタの勧めだ、多少の出費はしかたない。さっそくクッキー作りを開始した。
まずアンさんがミルクを煮て成分が凝固してできたチーズをすくう。
「うん。酸っぱくて美味しいわ」
卵白をひたすら掻き混ぜてメレンゲをつくるのはミドリが担当。
「大変だけど。頑張ってね」
卵黄に小麦粉とキビキビ糖を混ぜてメレンゲを少しずつ加え、最初に作ったチーズを加え混ぜる。
「やり過ぎないように切るように混ぜるのがコツよ」
余熱したオーブン皿上に適度な大きさに取り分け焼く。
3時間ほどで完成したクッキーの見た目は完璧だ。
「アンさん、ありがとうございました」
「あらあら。こういうお願いなら大歓迎よ」
クッキーをひとつ食べてみる。めちゃくちゃ美味い。
「上手にできたわね。とても美味しいわ」
アンさんのお墨付きをもらい、食堂でのんびり紅茶を飲む。食卓の上には皿に盛られたクッキーを黙々とかじるラプタ、その姿はまるでリス。
『主。とても美味しいぽ』
『よかったな』
可愛い仲間の姿を見ながらアンさんと楽しく話していると外から声が聞こえた。
「サクラ、突然どうしたの?」
その瞬間キーウィの従魔サクラが凄い勢いで食堂に飛びこんできた。そして食堂中を飛び回る。キーウィが一生懸命に宥めるもサクラの勢いは止まらない。その原因はわかっている。なぜならサクラの視線がずっと皿に盛られたクッキーをロックオンしているからだ。
ラプタはクッキーを一つ咥えるとサクラの前に置いた。
『一枚だけぽ』
サクラが凄い勢いでクッキーに飛びつき、サクサクサクサクとかじる。
偉いぞラプタ。
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