#013 開拓村到着
旅の15日目にして開拓村の見張り台が見えてきた。しかし商隊の雰囲気は暗かった。
ゴブリン襲撃の結果
死者1名
重症者5名
今回の規模の襲撃で犠牲者は少ないほうらしいが、重症者のひとりはロナウドさんで、命は取り留めたけど左腕を失った。御者台に座るミドリは後ろを見る。馬車で眠るロナウドさんは薬で眠っており、隣でコレットが額の汗を拭いている。
「坊主。上手いことは言えないが命があるだけ上等だ」
ロナウドさんの代わりに御者を引き受けてくれた護衛の冒険者ガロさんが言う。ガロさんは剣でゴブリンを切り裂きまくってた冒険者だ。ミドリとコレットを助けてくれた恩人でもある。
「こういった荒事は、ここでの日常だ。坊主も事情があってここに来たんだろう?気の毒だが慣れろ。そして強くなれ」
ミドリは得体のしれない様々な感情が溢れ、ただ泣くことしか出来なかった。
開拓村についたミドリたちは村長宅に向かった。親父から先方には連絡済みなので到着の挨拶をするようにと言われている。護衛のガロさんも馬車と一緒についてきてくれた。
住宅地の一番北側にあった村長宅は他の家より少し大きいくらいだ。村長宅につくと背が高く逞しい男性が笑顔で話しかけてきた。
「ミドリ君だね?君のお父さんから話は聞いてるよ。ようこそ開拓村へ、村の名前はまだないんだ。俺が村長のジャムだ。なにもないところではあるが歓迎する。幼いが優秀と聞いている、村の発展に尽くしてくれ」
「初めまして。ロイド商会の支店を任されることになったミドリといいます。こちらは一緒に来てくれた友人のコレット。今日からこの村で商売させてもらいます、何卒よろしくお願いします」
ミドリとコレットがペコリと頭を下げると。いつの間にかジャムの隣にいた女性がコロコロと笑って。
「あらあら。礼儀正しい子達ね。私が妻のアンよ。この村の子供はみんなウチの子同然だから困ったことがあったら遠慮しないで相談してね」
言うと同時にミドリを抱きしめる。大きい胸に沈むミドリは息が出来ずにアンをタップする。すると後ろにいた少女がアンに突っ込みを入れる。
「お母さん。いきなりミドリが死にそうになってるわよ。まったく」
黒い髪と瞳の勝気そうな少女はミドリを値踏みするようにジッと見つめ。
「私が長女のチェリーよ。今年で12歳。ミドリは10歳だったわね。この村じゃ弱いものに人権ないからしっかりしなさいよ。そして」
チェリーは後ろに隠れる少女を前に引っ張って紹介する。同じく黒い髪と瞳の大人しそうな少女だ。
「この子が妹のキーウィよ。10歳だからミドリと同い年ね。まだチビだから大丈夫と思うけど、エロイことしたら許さないわよ」
「姉さん、ミドリが引いてる。ゴメン、新しい友達が増えるから張り切ってる」
「ちょ、キーウィ。何言ってんのよ」
なんだか元気な一家だ。これくらいの元気がないと開拓村では生活できないのだろう。
「ミドリ、コレット。がんばれよ」
護衛のガロさんは村長に挨拶するとどこかへ去っていった。
「ミドリ、俺の腕のことは気にすんな。金を貯めるのに時間はかかるが、一番高いポーションを飲めば生えてくるからな。お前はガキのくせに頭がいいから余計なことを考えすぎだ。まずは自分のことだけ考えろ。これが預かってた支店のカギな。俺は荷物を客に納めてから別の街に向かう。支店にはベテラン商会員が一人いるから色々と教えてもらえ」
そしてロナウドは片腕で馬車を操り村の商業区へと去っていった。ロナウドの立ち直りの早さにビックリするミドリだった。あるんだ、凄いポーション。
「それじゃ、村を案内するわ」
ミドリとコレットはチェリーとキーウィに手を引かれて村中を連れまわされた。村は直径2キロメートルの円形で周囲は木製の柵で囲われている。柵の外側には幅3m深さ2mくらいの掘。前世の弥生時代の村を再現した環濠集落遺跡を思い出した。
村の中央が行政区、南部が住宅区、西部が商業区、東部が農業区、北部が軍用区。そして東西南北それぞれに高さ7mくらいの見張り台。
今の人口は400人ちょっとだが3年間で苦労してここまで村を大きくしてきたのだとチェリーは誇らしげに語る。最近では村で生まれた赤ちゃんもいるのだとキーウィが嬉しそうに話す。ミドリはそんな二人を眩しく思った。
「僕たちも頑張ろうね」
「ああ。まずは支店に行こう」
ミドリとコレットは二人と別れて支店がある商業区へと向かった。
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