#019 テイム
ミドリがこの村にきて半年、あることに気が付いた。
オオカミのような魔物を連れてる村兵さんがちらほら、物見棟では鷹のような魔物が周囲を警戒し、冒険者がダチョウのような魔物に乗っている。
休日の訓練の後に村長姉妹に聞いてみる。今日はコレットは私用でいない。
「もしかしてテイム?」
「今更なに言ってるのよ」
「ミドリはたまにポンコツ」
この世界では普通のことみたいだ。あとキーウィが辛辣。
「いいなぁ。俺にもテイムのスキルがあればいいのに」
「また、なに言ってるのよ?」
「ミドリ。あれはほとんどスキルじゃない。テイムは誰にでもできる・・・かも」
「マジで?」
「マジ」
だれでも時間と手間をかけて魔物との相性が良ければテイムすることが可能なのだそうだ。【テイム】というスキルも存在するが、かなり珍しいスキルらしい。
「俺もテイムしたい」
「・・・いいんじゃない。やってみれば?」
「この村では私たちの年頃になると初めてテイムを練習する。そして姉さんは無理だった」
チェリーも10歳のころ小型の魔物をテイムしようとしたらしい。そしてダメだったと。乱暴な性格だからかな?
「ミドリ、失礼なこと考えてないかしら?」
「・・・気のせいだよ」
「私たちはもう10歳。そろそろテイムを試してもいいころ」
ミドリは商業区の魔物を扱う店にやってきた。チェリーとキーウィは当然のようについてきた。
「お邪魔します」
「おやチェリーちゃん。いらっしゃい」
店の奥から優しそうなおじさんが出てきた。
「子供用の魔物が欲しい」
「キーウィちゃんも、そんな年か。時がたつのは早いね。ミドリ君も10歳だったね」
子供店長のミドリは狭い村で有名人だった。
「子供用の魔物というと定番は鳥型だね。このあたりの子たちだよ」
鳥かごが沢山並んでいる一角に案内される。
「この子、姉さんみたいでかわいい」
キーウィがさっそく赤色の目つきが鋭い燕のような魔物に目を付けた。チェリーが微妙そうな顔をしている。
ミドリは一頭ずつよく観察する。眠そうな目をした全身紺色のフクロウのような鳥が気になった。その鳥もミドリをジーっとミドリを見ていて、なんだかふてぶてしい。こちらが値踏みされてる気分だ。
「俺は、この子にする」
個室の中で鳥を放して餌をあげ、魔物が餌を食べて肩や腕にとまればテイムの準備完了。あとは一緒に生活して様子を見るのだが、気が合わずに逃げられることも多いらしい。
キーウィからテイムを試すことになった。キーウィはさっそく餌を準備し、籠の窓を開ける。赤い魔物は窓から飛び出し部屋中を何度か旋回するとキーウィの手の平から餌をたべ、腕にとまった。店長がニコニコと笑顔で。
「これはいけそうだね」
「やった。これからよろしく。名前はサクラ」
キーウィが珍しくハイテンションだ。指先でサクラの頭を撫でる。
次はミドリが餌を準備し、籠の窓を開ける。フクロウのような鳥はノッソノッソと窓から歩いて出てくる。
「なんか動きがじじむさ・・・落ち着いてるわね」
鳥はミドリの掌の上の餌を見つめプイと横を見る。店長の眉毛がへにょっとなった。
「これは駄目かもしれないね」
鳥が何故か胸のポケットをジーっと見ているのに気付いたミドリは、ポケットの中をまさぐり紙袋を取り出す。紙袋の中には姉妹に貰ったアンさんのクッキー、鳥は飛び立つとミドリの手から素早くクッキーを奪った。そしてミドリの頭にとまりホーホーと鳴きながら奪ったクッキーを食べる。頭が地味に痛いし食べカスが落ちてくる。
店長はさらに困惑顔で。
「相性は、いいのかな?」
何度か肩にとまらせえようとしたけど、どうしても頭にしかとまってくれない。剥げたらどうしよう。そんなことを考えているとポーン♪という効果音とともに画面が表示される。
[ウッドアウルが仲間になりたそうにしている。クランに加えますか?]
ミドリは困惑しつつ返事する。
(・・・Yes)
[ウッドアウルをメンバーに登録しました。固有スキル【知恵】を付与します]
■■クラン Lv2■■
【メンバー】 3/10
ミドリ Lv14
コレット Lv15
ウッドアウル Lv2(※New)
■■ステータス■■
名前:未定(4歳オス)
種族:ウッドアウル
Lv 2
HP 5/5
MP 8/8
固有スキル:索敵 Lv1(小範囲)
固有スキル:知恵 Lv1(人語理解)(※New)
スキル:気配遮断 Lv1
その貫禄と態度で4歳なのか、ミドリがウッドアウルのステータスをマジマジと見ていると。
『やっと念話が通じたぽ』
『へ?』
『主、はやく名前をつけるぽ』
ウッドアウルが念話で話しかけてきた。えっと名前名前。
『えーっと。ラプタとかどう?』
『いい名前ぽ。主、これからよろしくぽ』
普通に会話できるんだけど、固有スキル【知恵】の人語理解のおかげかな。
「ラプタかわいいわね」
「うちのサクラもかわいい」
「ぽーぽー」
「ありがとうと言ってるよ」
ラプタは金貨5枚だった。こうしてミドリに新しい仲間が出来、ラプタを連れて帰ったミドリはコレットに羨ましがられた。
「僕も10歳の時にやってみたけどダメだったんだよ」
(やさしそうなのに、実は乱暴者とか?)
「ミドリ、なんか失礼なことを考えてるよね?」
「・・・ぜんぜん」
その晩はラプタの歓迎会を開いた。コレットとラプタはスグに仲良くなった。
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