#018 スパルタ姉妹と身体強化
休日にミドリとコレットが家でゴロゴロしていると客がきた。村長の娘のチェリーとキーウィだ。村長の奥さんのアンさんが作ったクッキーを持ってきたので一緒に食べようと誘ってくれた。アンさんのクッキーはとても美味しいのでミドリもテンションが上がる。ちょっと高めの紅茶を入れてのんびりする。
「ミドリとコレットは、学校には行かないの?」
この村にも学校はあり、子供の数が少ないのでクラスは二つだ。ひとつは7歳から10歳までの小クラスで人数は8人、もうひとつは11歳から14歳までの大クラスで人数は5人。そして15歳で成人となり独り立ちする。
学校には村の子供ならダダで通え、午前は座学で専門職を持つ村の大人が先生をしてくれる。午後は家の手伝いで帰る子や広場で訓練をする子など様々で、要は自分で好きに鍛えなさいということだ。ミドリとコレットは自分で稼がないといけないので学校に行く余裕はない。そう言って学校の件は断った。
「とりあえずミドリの実力を見せてもらうわ」
何がとりあえずなのか分からないけど木刀をわたされる。そして店の近くの広場でチェリーにボコられ、通行人が観客になり大きな歓声が上がる。娯楽が少ないとはいえ見世物にされるのはたまったもんじゃない。
「姉さんが乱暴者でゴメン。次は私」
そして同い年のキーウィにもボコられ、観客は大喜びだ。なにこの武闘派姉妹。とにかく動きが速すぎてついていけない。ミドリがボコられる姿を見て観客と一緒に笑い転げてたコレットも一緒にボコられた。
「なによ弱いわね。話が違うじゃない」
どうやらクソ親父がミドリには商売の才能だけでなく戦闘の才能もあるとか村長に大嘘を吹き込んでいたらしい。
「まぁまぁ、姉さん。ミドリに当たっても仕方ない」
「そうね。ミドリ、安心しなさい。私が強くしてあげるわ」
「ミドリとコレットは、まず身体強化を覚えるべき」
「身体強化って?」
「なによ。そんなことも知らないの?」
チェリーはピョンピョンと50cmくらい垂直に跳ねた。
「普通に飛んだらこれくらいね。そして身体強化で跳ぶわよ」
チェリーはピョーンピョーンと1mくらい垂直に跳ねた。
(なにそれ?)
目が点になるミドリ。
「それって、魔法?」
「魔法ではない。魔力を全身に行き渡らせて体を強化する」
「訓練次第でどこまでも強くなれるわよ。騎士団長クラスになると化け物ね」
そんな方法があったのか。いくらなんでもチェリーとキーウィの動きが速すぎると思った。
「訓練ってどうやるの?」
「まずは魔力を体に流すことを意識するの。コツは人によって違うから試行錯誤が必要ね。そしてステータスを確認してMPが減ってたら成功よ」
「MPがなくなるまで繰り返す。下手だと効率が悪いからスグにMPがなくなる」
MPを使って常に【クラフト】を続けてるミドリには痛い話だった。訓練でMPを使ってしまったら【クラフト】が出来ない。現状全力で回している【クラフト】を半分に抑えるか。
「試してみる」
ミドリは魔力とやらを体に込めるのをイメージする。
「おおおおおぉぉぉお」
ステータスを確認するもMPは全く減っていない。
「うおおおおぉぉぉぉぉぉ」
ステータスを確認するもMPは全く減っていない。
「あぁあああぁあああああ」
パーン
「うるさいわね」
チェリーに後頭部をはたかれた。そしてミドリの両手をとって指を絡ませてくる。こ、これは、恋人つなぎ。
「なによ、女の子みたいな手ね」
柄にもなく照れるチェリーの手のひらの皮は厚かった。前世の高校時代の同級生で野球部のエースで四番だった斎藤君の手のひらの皮より厚かった。チェリーが今までどれだけ剣を振ってきたかがわかる。
「いい?これが魔力よ」
チェリーの両手から暖かい何かが伝わってくる、そしてその何かはミドリを満たしていく。ポカポカして気持ちいい。
「魔力でいっぱいになったわね?もっといくわよぉ」
チェリーがニヤリと悪戯っ子っぽい笑みを浮かべで更に魔力を流す。気持ちよかったのが一転して酒を飲みすぎた時のような状態になる。
「まって、ナニコレ?目が回る」
「魔力酔いよ。これがミドリの体が保持できる魔力の限界だから覚えておきなさい。何度も繰り返せば体にもっと沢山の魔力を保持できるようになるわ」
チェリーが手を放すと、ミドリは地面にへたり込んだ。隣を見るとコレットもキーウィから同じ洗礼を受けたらしく地面にへたり込んでいる。
「身体能力が上がってもミドリの剣の腕だと駄目」
「安心しなさい。それも私たちが鍛えてあげるわ」
これから休みの日はこの姉妹にボコられることになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます