#032 遺物はロマン
ミドリたち三人と一羽は商業区を散策していた。最近では店も増え、今までになかった珍しい食材や香辛料なども売られるようになってきた。特に買いたい物などはないのだが、掘り出し物を探すのも楽しい。
「なんか見たことない人が増えたわね」
「兵士が追加派遣されて大変って村長が言ってた」
『村の西側で隣国の兵をよく見るぽ』
「村が大きくなっていいことばかりじゃないんだねー」
屋台で買った串焼きを頬張りつつ散策していると、ミドリはある露店が気になった。
「らっしゃい、うちの商品は全て遺物だぜ。ゆっくり見て行ってくれ」
この世界にはダンジョンや遺跡で発見される遺物と言われるものがある。それらはアーティファクトとも呼ばれ、この世界の技術では再現できない物や国王でも手に入れるのが難しい物も多い。といってもダンジョンの低層や調査されつくした遺跡で見つかるガラクタがほとんどだ。
遺物は神が授けてくれたものだとか、今より優れた古代文明の道具だとか、異世界から流れ着いた物だとか説は沢山あるが正確なところはわかっていない。
露店の商品を眺める。武器や防具、本、ガラス瓶に入った液体、そしてドライバーにスパナ?
「こんなものまであるのか」
「お?坊主、初めて見るのか?面白いだろ?使い道が分からないものも沢山あるぜ。例えばこれだ」
店主が取り出したのは・・・ホチキスだった。
「複雑な作りなのに使い方が分からないんだぜ」
「何だろうこれ。ホチキス?不思議だね?」
コレットがマジマジと観察する。【鑑定】で名前はわかるが使い道はわからないらしい。なんでホチキスがこの世界にあるのかは謎だが、針がなければただの置物にすぎない。
「使い道がわからないのに売れるのかしら?」
「まだ嬢ちゃんに大人のロマンは早いかな?」
ガハハと笑う店主。その言葉は前世で古物商からガラクタを買ってくる祖父がよく言ってた。そしてよくわからない物を買ってくるたびに祖母にしばかれてた。まぁいいや、物は試し。
「面白いから、これちょうだい」
「お?坊主、分かってくれるのかい」
ミドリは双眼鏡を買う。とても古い物なのだろうレンズが全て失われており、価格は銀貨2枚。そして【クラフト】に取り込む。
■■クラフト Lv3■■
【素材】
・・・・・・・・・・
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壊れた10倍双眼鏡[C] ×1
【設計図】
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
10倍双眼鏡[C]
ランクCだから今のミドリには作れないが、設計図は出来た。この世界では物にもDNAみたいなのがあるのだろうか?仕組みは分からないが物が壊れていても設計図が出来ることが分かったのは大きな収穫だった。遺物を見つけたら出来るだけ買うことにしよう。
「おじさん、これとこれもちょうだい」
「坊主。ロマンを分かってくれるのか・・・おじさん嬉しいぜ!」
おじさんは小さな供が遺物に興味をもったことが嬉しいのか、サービスしてくれた。そしてコレットとマリーがミドリを見る目に覚えがあった。祖母がガラクタを買ってきた祖父を見る目がこんなだった。違うからね、役に立つからね、たぶん。
家に帰り、買ってきた物を【クラフト】に取り込む。
■■クラフト Lv3■■
【素材】
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
壊れた10倍双眼鏡[C] ×1
壊れたアルコールストーブ[D]×1
劣化した燃料用アルコール[D] 300cc
【設計図】
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
10倍双眼鏡[C]
アルコールストーブ[D]
燃料用アルコール[D]
燃料ボトル[D]
アルコールストーブに燃料用アルコール、前世のキャンプでよく使われていた道具だ。アルコールが入っているボトルも設計図が出来た。なんだろうキャンプ道具が眠ってる遺跡とかあるのだろうか?
この世界では旅先で石積みの竈を作って枯れた枝を拾って火をおこすのだが、落ちている枝はなかなか燃え辛く重労働だ。これは絶対に売れるはず、【クラフト】しておきたい。
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