#033 ミドリ商会始動
ミドリはさっそくアルコールストーブと燃料用アルコールと燃料ボトルの【クラフト】に取り掛かった。まずMPのみを素材にして【クラフト】するとMPも時間も鉄の武器の二倍必要だとわかった。材料の珍しさや構造の複雑さが関係しているのだろう。
まずはストーブの使い心地を試してみる。構造がとてもシンプルなタイプなので使い方も簡単だ。ストーブのタンクにアルコールを入れて火をつけ、最後に完全に蓋をして消化する。蓋の空き具合で火力も調整できる。
火をつけストーブの上に水を入れた鍋を置いてみる。灯油やガスのストーブと比べて火力は落ちるが調理や少し暖を取るくらいなら十分だ。
「すごく簡単だね。枝より断然火力が強いよー」
「ススが出ないし臭いもしないわ、不思議ね」
この世界の燃料は魚油や動物油なので燃やすと臭い。コレットとマリーはストーブの便利さに驚いている。これはいけそうな予感がする。
二日で1セットの【クラフト】では商売にならないので、出来るだけ構成素材を集めてMPと時間の節約を実現させたい。いけそうな素材を片っ端から集め試行錯誤した結果、大まかな素材を集めることが出来た。足りない分はMPで補うという方法で省MPと短時間での【クラフト】が可能になった。
・アルコールストーブの素材は鉄と銅と亜鉛とMPを少々。
・燃料用アルコールの素材はトウモロコシとMPを少々。
・ガラス瓶は砂とMPを少々。
燃料ボトルの【クラフト】は諦め、ガラス瓶で代用することにした。燃料ボトルの主な素材がポリエチレン、つまり原油だった。探せばどっかにあるかな黒くてドロドロして燃える液体。燃料用アルコールの材料が原油じゃなく植物由来で助かった。
■■クラフト Lv3■■
【素材】
MP18
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
鉄のインゴット 82kg
銅のインゴット 75kg
亜鉛のインゴット 52kg
トウモロコシ 32kg
砂 63kg
アルコールストーブ[D] ×8(※New)
燃料用アルコール[D] 20L(※New)
ガラスの瓶[E] ×10(※New)
【設計図】
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
アルコールストーブ[D] [クラフト中×1](※New)
燃料用アルコール[D] [クラフト中 1L](※New)
ガラスの瓶[E] [クラフト中×1](※New)
ミドリは全力で【クラフト】した。
◆◆◆
ミドリはずっと閉店していた店を開いた。扱う商品はもちろんアルコールストーブと燃料用アルコール。ミドリのターゲットは貴族への転売目的の大商会や遺跡の深層に潜る上級冒険者だ。荷物が軽くなり旅先での火おこしや調理が劇的に楽になるアルコールストーブはかなりの高額設定にも関わらず飛ぶように売れた。
ミドリは全力で作りまくって売りまくった。コレットとマリーも素材の入手や販売を手伝ってくれた。噂を聞きつけた他の街の商人が沢山やってきた。隣国のガウス帝国の商人までもやってきたのには驚いた。商魂逞しい隣国の商人は国同士は敵対関係にあろうと商人には関係ないと笑っていた。
「僕、こんなに沢山のお金を見るの初めてだよ」
「やったわね。これで一生お金に困ることはないんじゃないかしら?」
コレットとマリーは白金貨をテーブルの上に積み上げてニシシと笑っている。もしかしてお金持ち確定?あとは世界を旅してハーレム目指しちゃう?ミドリもちょっと浮かれていた。
【クラフト】と販売に明け暮れること3か月、ストーブは見事に複製された。まだお目にかかったことはないが、この世界にはドワーフがいた。やはり凄い技術をもってるらしく、ストーブは複製されるだけでなく改良までされた。さすがに燃料用アルコールまでは複製できなかったようだが、さすがドワーフと言わざるを得ない。ドワーフの手によりストーブは魚油や動物油でも使えるように改良された。ススが出るし臭いはするがストーブは庶民にも手に入るようになった。
この世界に特許なんてものはなく、複製され改良までされたらそれまで。ストーブの爆益タイムは終了した。でも高値で売れるだけ売りまくったので悔いはないし、決してぼったくりでもない。最初に世に出る製品は高いのが当たり前で、買った人も世に最初に出た商品を買ったという満足感を得ることができる。
ミドリはストーブ特需で小金持ちになり、【クラフト】しまくったおかげか、スキルレベルが上がった。ランクCのクラフトが可能になり、さっそく10倍双眼鏡[C] を二週間かけて【クラフト】した。
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