#006 コレットの商談
コレットと名乗った少女は露店の商品を手際よく片付けた。
「よしっと。僕の家はそこの孤児院なんだ。お茶を出すから付いてきて」
ミドリが連れられて行った先は大きくて立派な教会。ではなくその裏にある木造の建物だった。築50年以上はあるだろう。今にも崩れそうな建物だ。
「ここが孤児院だよ。教会は立派なのに孤児院はボロッちいでしょー」
「そうだね」
そんな失礼なことを話しているとコレットを見つけたガキンチョたちが突撃してきた。コレットは先頭のガキンチョを全身で受け止め頭を優しく撫でる。ガキンチョは顔をコレットに押し付け嬉しそうにしている。別の元気そうな女の子が話しかけてくる。
「コレット姉ちゃん。お疲れー。今日も稼げた?」
「ボチボチかな?君たちはちゃんとシスターの言うことを聞いてたかい?」
「ボチボチだよ。その子はだれ?彼氏?」
「マセガキめー。お姉ちゃんのお客さんだよ。客室を使うから院長先生に伝えといてくれるかな」
「はーい」
ガキンチョたちはダダダーっと勢いよく去っていった。そしてコレットはミドリを孤児院の客室に連れていく。暫くすると修道服を着た男性がお茶を持ってきた。かなり年配の男性だ。やせ型でとても姿勢が良い。
「コレットが友達を連れてくるなんて珍しいですね」
コレットに優しく微笑みかける。
「院長先生。お茶、ありがとうー」
孤児院長だった。偉い人がわざわざお茶を出してくれるのか。
「へへへ。友達のミドリだよー」
コレットは照れ笑いをする。そして院長は深いしわが刻まれた顔でミドリをジッと見つめる。なんだろう少し怖いくらいに見つめてくる。
「はじめまして。ミドリといいます」
「はじめまして。私はこの孤児院を任せられているアーデルハイトです。コレットは大切な孤児院の子供です。困ってたら助けてあげてくださいね」
丁寧に挨拶をして部屋から出て行った。コレットは院長先生は過保護なんだごめんねと笑う。そしてコホンと真面目な顔をして。
「ミドリはスキルを持ってるよね?【倉庫】かな?」
バレてる!どこまでバレてる?ミドリは身構える。
「ごめんね、ずっと見てたんだ。だって小さな子供が露天商やってるから珍しくて。そしたらリュックから商品を取り出すんだけど、どうみてもリュックの大きさより出した量の方が大きいんだもん。不注意過ぎだよぉ」
いや普通はバレないだろう。この子かなり鋭い。
「次からは気をつけるよ」
「そうした方がいいよー。【倉庫】持ちは貴重だからね。バレたら攫われちゃうかも?」
コレットはニシシと笑う。物騒な話だ。
「ちなみに他人のステータスを調べる方法とかあるの?」
「高レベルの【鑑定】持ちならわかるらしいよ。教会の司教様とか大商人とかだね。僕も鑑定は持ってるけどレベル1だから低ランクの植物や物の名前とかまでで人の名前すらわかんないよ」
「なるほどね。じゃあ偉い人には近づかない様にするよ。それで、話の続きは?」
コレットは今日一番の嬉しそうな表情をして。
「話が早くて助かるよー。僕は孤児院で作った物を露店で売ってるんだけどね。服とか聖水とか。教会がバックにいるからショバ代なんて求められないんだ。そ・こ・で、まだあるんでしょ?ミドリの商品。もっといい商品。ミドリも自分で売るしかないからあそこで店を広げたんだよね?僕が代わりにミドリの商品を売るってのはどうかな?そして手数料を貰えると嬉しいなー」
色々バレてる。どうやらミドリは余裕を見せすぎたようだ。チンピラに泣きつく演技とかしたほうがよかったか?でもこの少女はかなり頭が回る。悪い人間ではなさそうだけど。ミドリはフームと考える。
「こんなものがあるよ」
【クラフト】から銅製品を取り出しテーブルの上に並べていく。【クラフト】のことは秘密なので【倉庫】と言っておく。銅製品も並べていく。
「わぉ。すごいね」
年相応の少女らしく喜ぶコレット。
「俺は適正な価格で商品をコレットに卸す。コレットはその商品を売ろうが転売しようが自由だよ。俺の情報は絶対に秘密にしてもらう。それでいいかな?」
「もちろんだよ。最高だね」
コレットはバンザーイと全身で喜びを表現した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます