#007 商人コレットとアーロン商会

 ミドリが商品を【クラフト】し、コレットが売る。コレットは子供だが孤児院で作られた商品を売る立派な商人だ。バックに教会の信用もあるので飛ぶように売れた。この世界でも宗教の権力は強い。同業者の嫌がらせやチンピラのたかりなどはなかった。


 ミドリは週に一度は教会でコレットに商品を卸すことになった。孤児院の子供たちやシスターとは顔なじみになり仲良くなった。たまに売り上げの一部を寄付したりなんかもした。


 そうして2年が過ぎた。


 ミドリは9歳になったがちんちくりんのままだ。コレットは12歳になった。この年頃の少女は成長するのが早い。胸もあるかないか分かんなかったのに少しプルプル震えるくらいになった。ラッキースケベを装って触れたら殴られた。髪もショートヘアから肩くらいまで伸ばすようになって少し女性っぽくなった。出会った頃は男の子みたいだったので男友達の感覚だった。少し遠くに行ったみたいな惜しいような不思議な感じがするミドリだった。


 ミドリの商品は出品すると即完売だった。商品は木製の食器類から銅製の武器や防具まで幅が広く品質が良かった。ミドリはこの街でそこそこ有名な商会の息子だ。量は多くないけども品質の良い製品を回してもらっていると推測するコレットだった。ミドリが詳しいことを話したがらないのでコレットは聞かなかった。


 いつものようにコレットが露店で商品を売っていると二人の男が話しかけてきた。一人は背が低く丸々と太った愛嬌のある初老の男。もう一人はひょろ高く爬虫類のような目をした中年の男。二人は大きな商会の会頭と息子だった。似てないが実の親子だ。あまり評判の良くない商会だが教会に大きな寄付をすることで有名だった。孤児院で何度か挨拶をしているのでコレットとは顔見知りだった。コレットはこの親子をあまり好きではなかった。孤児院の子供たちを舐め回すように見るので気持ちが悪いのだ。


 「おやおやコレットさん今日も繁盛されているようで。羨ましい限りです」


 父親が満面の笑みで話しかけてくる。人懐っこい笑顔だ。


 「コレットもだいぶ大きくなったな。そろそろ子どもを作れるんじゃないのか?」


 息子がコレットの腰回りから尻の部分を舐め回すように見て言った。


 「こんにちは。今日は何の要件ですか?」


 コレットのそっけない対応に父親は表情を変えずニコニコとしたままだが、息子はチッと舌打ちをした。


 「そろそろ商品の仕入れ先を教えろ」


 商品の仕入れ先を教える商売人はいない。息子は商売に向いてないようだ。その後は少し世間話をして二人は帰っていった。


 「息子よ、そろそろよさそうだ。あの商才をウチの商会に取り込むぞ」

 「親父まってたぜ。もう少ししたら肉がついて楽しめなくなるとこだったぜ」

 「お前はどうしようもないロリコンだな。お前は俺の跡継ぎなのだ。ほどほどにしておけ」

 「へっへっへ。あのくらいの年頃が一番美味しいんだよ。あの膨らみかけの胸とまだ小さな尻がたまんねーぜ」


 父親はコレットの商才を買っていた。だが今まで幼過ぎて手を出してこなかった。コレットは13歳になった。この世界で一人前の商人になるには成人前に商人に弟子入りして学ぶのが普通だ。そして今日コレットの成長を確認出来たのであとは実行するだけだった。隣国との戦争や作物の不作が続き教会の資金繰りが良くないことは確認している。今まで撒いてきた寄付を活かす時が来た。二人は下種な笑いを浮かべ帰宅した。



◆◆◆



 ミドリとコレットはいつものように孤児院の客室で商談をしていた。


 コンコン


 客室のドアがノックされる。院長がお茶を持って来てくれた。院長に合うのは初めて来たとき以来二度目だった。


 「久しぶりですね。ミドリさん」

 「院長先生。久しぶりです」

 「今日はミドリさんに大切なお話があります」

 「なんですか?」

 「ここに来るのは最後にしてください」


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