#024 薬売りの少女
暇そうにしていたギルド受付嬢のナンシーさんに新しい装備を自慢したまではよかった。キズ薬しか持ってないことをジト目で突っ込まれた。冒険者にポーション、気付け薬、目薬、そして解毒薬は必須らしい。ミドリは薬を求めて商業区へ向かった。
残念ながらこの村にはポーションや薬を作る薬師がいない。というのも薬師は高度な技術を持つエリートなので、こんな辺境の危険で小さな村には誰も来たがらない。なので街で行商人が仕入れてきた物を買うのが一般的だ。
5畳ほどのスペースに商品を並べて売る露天商が並ぶ通りを歩く。アクセサリーを売る人、食材を売る人、本を売る人、使い道の分からないものを売る人、いろんな露天商があって楽しく、ついつい寄り道をしてしまう。そして薬を売ってる露天商を発見した。
「薬をください」
「いらっしゃい。いろんな薬があるから、ゆっくり選んでいってね」
明るい声で対応してくれる少女は、頭から足元まである赤いローブを着ておりフードで口元まで隠している。薬師の服装なのだろうか?それとも強度の恥ずかしがりとか?身長から言って10代前半くらいだろうか、唯一見える凛とした赤い瞳がやたら印象に残る。少女はその赤い瞳でミドリをジーっと見つめてくる。
「冒険者になったばかりなので、必要な薬を見繕って欲しい」
「それは責任重大ね張り切って選ぶわ」
楽しそうに色々と説明しながら選んでくれた。値段は金貨13枚。相場が分からないが、ミドリも健康な男児だ。美少女(おそらく)にはカッコつけたい。
「ありがとう。はい白金貨1枚と金貨3枚」
「え?」
「え?」
なぜか驚かれたのでミドリも驚いた。
「素直にお金を出してくるからビックリよ」
少女はケラケラと笑う。
ミドリも頭を掻きながら笑う。
「実は相場を知らないんだ」
「露天商では値切るのが基本よ、1割2割は普通に負けてくれるわよ」
「じゃあ最初の値段は高めに提示してるの?」
「ん-ん、うちは最初から大きな街で売ってるのと同じ値段よ」
首をフルフルとフリながら答える少女、商売が下手なのかな?
「商売が下手とか思ってる?」
「い、いや。そんなことはないかな・・・」
「フフ、隠さなくてもいいわよ」
「ごめん。最初の値段で買うよ」
「ありがとう。効きがよかったらまた買いに来てね。たまにここで店を出してるから。私はマリー」
「わかった。俺はミドリ」
お互い自己紹介して別れた。
家に帰ったミドリは買ってきた薬を【クラフト】に取り込み確認する。
マリーのポーション[C] ×2
マリーの気付け薬[C] ×2
マリーの目薬[C] ×2
マリーの解毒薬[C] ×2
すべての薬がランクC、そして
ポーン♪ ポーン♪ ポーン♪ ポーン♪
そしてポーンという効果音とともに次々と表示されるメッセージ画面。
[マリーのポーションは品質が<特上>のため設計図作成不可]
[マリーの気付け薬は品質が<特上>のため設計図作成不可]
[マリーの目薬は品質が<特上>のため設計図作成不可]
[マリーの解毒薬は品質が<特上>のため設計図作成不可]
あの子、何者?
◆◆◆
開拓村のとある宿屋の一室、二人の男たちがいる。一人は王都で有名な薬屋の三男サブロ、もう一人はサブロの親友ダミアン。サブロは長男が実家の薬屋を継いだのを機に独立しダミアンと共同で薬屋を立ち上げた。しかし薬師として三流なサブロとダミアンの薬は評判が悪く、いまでは借金の返済にも困る有様だ。借金取りからは、次の利子の返済が滞れば奴隷に落ちての借金返済を告げられている。
「ダミアン、あのガキを早く見つけろよ。そうしないと僕たちは奴隷落ちだ」
「ああ、わかってる。この村にいるという情報は確かだ。小さな村だからスグに見つかる」
「早く見つけないと、他の目ざとい連中に先をこされる!」
「わかってると言ってるだろう!」
テーブルの上にはポーションが三本。男たちは虚ろな目で何度も同じようなことを繰り返す。もう後がない二人は精神に異常をきたし始めている。
「このポーションがあれば僕も大商人の仲間入り、今まで馬鹿にしてきたやつらを見返せるんだ」
「ああ、あのいつも赤いローブを着たガキを見つけて仕入れ先を吐かせないとな」
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