Chap5.ダンジョンとスライム

#041 ダンジョン都市

 ダンジョン都市を目指すことにしたミドリたちは道具屋でフーコ用のくらあぶみ手綱たづなを作った。このままだといつか振り落とされて大けがをしてしまうと思ったからだ。特注品の鞍は3列シートとなっており、各シートにはベルトで体をしっかり固定できるようになっている。軽くて丈夫な素材を贅沢に使った仕様で金貨50枚が吹っ飛んだが、ギガバードを初めて見た皮職人の親方が張り切って作ってくれたので満足の出来だった。フーコが動きづらくないかなと心配したが。


 「よゆう、ギャ」


 さすがギガバードのフーコさんだった。

 

 フーコに乗ってダンジョン都市グラハムを目指し街道を爆走する。メガバードより一回り大きいギガバードのフーコはかなり目立った。前世で田舎道を超高級外車で爆走する地主のお爺ちゃんを思い出した。昔からの地元の名士で普段は温厚で穏やかなお爺ちゃんがハンドルを握ると狼になるのだ。スピードには人を狂わせる何かがあるのかもしれない。ああならないよう気を付けようと思ったものだ。


 旅は順調に進んでいたが、途中でメガバードに乗った冒険者たち三人が幅寄せして煽ってきた。世紀末のヒャッハーな雑魚兵みたいな恰好をしているが、三人とも高価なメガバードを所有しているので見かけで判断すると痛い目をみるかもしれない。そしてリーダー格の男が理不尽な要求を突き付けてきた。


 「ガキのくせしていいメガバードに乗ってるじゃねーか。おれのメガバードと交換しろ!」


 ミドリの頭の中にユーロビートが流れ騎乗型魔物による競争(バトル)が始まるかと思った瞬間、フーコが【疾走】に加え【風魔法】のエアリアルで加速、冒険者のメガバードを一瞬でぶっちぎった。


 領都と迷宮都市の間には村が点在しており夜は宿に泊まれるので、テントでの夜営ありの馬車旅に比べるとかなり快適だった。そして4日でグラハムに到着。領都のように壁で囲まれた大きな街だった。


 検問の列に並び、かなり待たされる。前に並んでる商人に聞いてみると、ダンジョンに入る人を管理するため、かなり厳密な身元確認があるそうだ。検問の待ち時間中もフーコは注目を集め他の商人や冒険者に色々質問されたが、教会の司教に借りてることにした。教会の偉い人の持ち物に手を出そうとする人は少ないだろう。そしてミドリたちは全員子供なので特に怪しまれることもなく冒険者証を見せることで無事に街に入ることが出来た。


 マリーの言った通り活気のある街だった。宿屋もたくさんあり立派な厩舎がある宿を選んだ。せまい厩舎だったらフーコが可哀想だからね。


  宿で一泊したのちにダンジョンギルドに行く。ダンジョンギルドというのはダンジョン専門の冒険者ギルドのことで、基本的にダンジョンに関する仕事しかしない。まずはギルドで情報収集だ。


 ここのダンジョンは未踏破で、すべての階層を合わせると大陸全土より広いと言われている。この大陸には1つの帝国、8の王国、3つの共和国と沢山の小さな国家群が存在する。その大陸と張り合う広さというのだからビックリだ。


 「もしかしてダンジョンがある国って圧倒的に有利?」

 「大きな国には必ずダンジョンがあるわね」

 「ダンジョンからとれる遺物や素材すごいもんねぇ」

 「もしかして帝国が戦争を仕掛けた理由ってダンジョンが目的だったりして?」

 「帝国にも大きなダンジョンがたくさんあるよー」

 「帝国は大きくなりすぎて内乱も多いと聞いてるわ。さらにダンジョンが必要かしら?」


 ダンジョンを多く抱えるガウス帝国が国土を拡大し続ける意図。地球の歴史では大きくなりすぎた帝国は漏れなく内部分裂で衰退している。帝国が戦争を仕掛けてきた理由も気になるけど、まずはダンジョンだ。レベルを上げて強くならなきゃ。


 ダンジョンの低層から中層には街や村があり、深層には砦が築かれている。深層ではかなり貴重な遺物や素材が見つかるらしく全世界から冒険者が集まる。そしてダンジョンから持ち帰られた遺物や素材が領や国を潤している。ここのダンジョンの最高到達記録は24階。現在も軍やA級B級の冒険者が攻略中らしく、前世で鬼畜な難易度のゲームが好きだったミドリのゲーム脳をチクチクと刺激した。


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