#042 ダンジョンに潜ろう

 ダンジョン都市の中心には直径50メートルほどの大きな穴が開いており、穴の奥まで緩やかな坂道が続いている。穴の向こう側からは冒険者や商隊が次々と坂を登ってくるのが見える。そして逆に大勢の冒険者や商隊が慣れた感じで緩やかな坂道を下っていく。ミドリたちも同じように坂道を下る。真っ暗なトンネルを松明の光を頼りに歩くこと30分、向かう先に微かな光が見えた。その光は少しずつ強くなっていき、トンネルを抜けたそこは一面の草原だった。空には太陽が昇り、雲が風に流されていた。


 「うわー。変な感じだねー」


 コレットが素直な感想を漏らすが、ミドリも同感だ。話には聞いていたけど地下に太陽が昇っているのは違和感しかない。そこはダンジョンの一階層、年中温暖な気候の草原エリアだった。地下なのに雨も降るらしく、遠くには広大な畑が広がっている。


 この階層には強力な魔物はいないので、他の冒険者や商隊は一直線に次の階層への入り口を目指す。ミドリたちは初めてのダンジョンなので軽く探索をすることにした。ギルドで買った地図を参考にした大雑把な探索。ミドリ、コレット、マリー、ラプタ、フーコ。まるで遠足に来たかのように散策していると現れた。


 地上にはいないダンジョン特有の魔物。透明感のある青色で牡丹餅のような形をした物体がポヨンポヨンと彷徨っている。ミドリは前世でお小遣いを貯めて初めて買った国民的RPGを思い出す。RPGというのがどんなゲームかも知らずに適当に進め、初めてモンスターに遭遇した時のドキドキしてワクワクした懐かしい感覚。


 スライムだ!可愛いタイプのスライムでよかった。


 ミドリは【クラフト】から槍を取り出し、スライムの中にうっすら見えるコアと呼ばれる部位をエイッと突き刺す。コアはミドリの突きでもあっさり砕け散った。

 

 「ぷるぷるー」


 スライムは断末魔の鳴き声を上げると黒い霧のような状態になって消えた。その跡には小さな水色のビー玉のような魔石が一つと見たことない銅貨が1枚残された。まんまゲームの世界だ。


 ダンジョンってなんなんだろう?地上のモンスターとダンジョンのモンスターの違いが気になる。ミドリがみんなの顔を見てみると、当然のこととして受け止めているようだ。この世界の人たちは何千年?何万年?このダンジョンと付き合ってるのだから当然のことなのだろう。


 ミドリは気を取り直して、拾った銅貨を観察する。


 「見たことない銅貨だねー」

 「ダンジョン都市では普通に使えるわよ」


 ダンジョン都市では王国が発行してるフレミング貨幣とダンジョンで魔物を倒すと残されるグラハム貨幣の両方が使える。王国はダンジョンで発生するグラハム貨幣の量を見てからフレミング貨幣の発行量を調整し、時にはグラハム貨幣を鋳つぶしたりもする。この匙加減を間違えると経済に大きなダメージを与えることになるらしい。


 ミドリ達は暫く1階層でスライム狩りをすることになった。スライムは凄く稀にスライムの涙というアイテムをドロップする。スライムの涙は貴重な薬の素材なのでマリーが欲しがったのた。手分けをしてスライムを狩り、50匹を狩ったころ。


 「ぷるぷるー」


 ミドリが仕留めたスライムの魔石を拾おうとすると、魔石が光を放った。


 「みんな注意して!」


 ミドリが叫ぶと光はスグに収束し、そこにスライムが現れた。ミドリがびっくりして後退するのをマリーが制した。


 「大丈夫よ。ダンジョンの魔物は、たまに仲間になって一緒に戦ってくれるの。ダンジョン産の従魔ってところね。でもスライムは弱いけど、どうするの?」


 (本当にまんまゲームだ。ダンジョンって一体・・・)


 ミドリが再びダンジョンについて考えていると、


 ポーン♪


 効果音とともに画面が表示される。


 [スライムが仲間になりたそうにしている。クランに加えますか?]


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