#047 初心者の町

 7階層の町の正しい名前はセブンス。元からあった遺跡を利用して作られた町で周囲は石垣で囲まれている。人口は3万人くらいで領主に任命された町長もいる。最初にこの町を拠点にする冒険者は多く、そのため初心者の町と呼ばれている。


 入り口で町兵に挨拶して町に入る。ダンジョン都市に入るときのチェックが厳しかったのでここでの確認はゆるい。町には店や宿やギルドはもちろん役場や学校もあり、普通の町だった。宿で部屋を借りると町に繰り出した。


 初心者の町は凄く賑やかだった。オープンテラスで昼間から宴会をしている集団。大声で値切り交渉をする冒険者。低レベル冒険者同士による決闘という名目の喧嘩。ギルドで買い取り額に不満があった冒険者が暴れギルド職員にぶちのめされている。どうか絡まれませんように。


 「元気のいい町だねー」

 「ね?ガラが悪いでしょ?」


 ミドリたちは建ち並ぶ商店で冒険に必要な物を揃え、遺物が並ぶ露店を物色する。


 「ミドリ遺物好きだねー」

 「ああ、掘り出し物がないかワクワクする」


 ミドリがコレットと話してると、露天商はコレットが抱いているスラッペに目を向けて言った。


 「嬢ちゃん、スライムをテイムしたのか?物好きだねー」

 「へへへー。可愛いでしょー」

 「ああ・・・、可愛いな」


 冗談でからかおうとしたのだろうが、コレットの笑顔に毒気を抜かれた店主。


 「でも持ち歩くのは大変だろ?モンスターボックスは使わないのか?」

 「モンスターボックス?」


 マリーも首をかしげている。 


 「なんだ知らないのか?ダンジョンは初めてか?」

 「うん、そうだよー」

 「なら仕方ないな。モンスターボックスってのはこれだ」


 店主はゴソゴソと袋から15センチ四方の箱を取り出した。みんな興味深そうに箱に注目する。なんで出来ているのだろう?金属のような陶器のような不思議な質感だ。皆の反応に満足した店主は説明する。


 「これはダンジョンで見つかるもので、テイムした魔物を出し入れ出来るんだ」


 なるほどモンスターボー・・・ボックスか。君に決めた!とか言っちゃいそうなのをミドリは自制した。つまりは、そういうことなのだろう。


 「これは、よく見つかるの?」

 「ああ、宝箱などからよく見つかるな。可愛いスライムに免じて金貨3枚でいいぜ」

 「在庫は一個だけ?」

 「魔物が仲間になるなんて凄く珍しいぞ、一個で十分だろ?」

 「遺物を集めるのが趣味なんだ」

 「小さいのに爺さんみたいだな」


 あるだけ7個全部購入した。宿に戻ったミドリたちは早速モンスターボックスを試すことにした。スラッペの前にモンスターボックスを置く。


 「スラッペ、これに入れる?」

 「ぷるぷるー」


 スラッペがピョンと跳ねて箱に触れると箱がまばゆい光を放ち、スラッペは吸い込まれるように箱に入っていった。ミドリは【クラン】を確認する。


 ■■クラン Lv2■■

 【メンバー】 6/10

  ミドリ Lv18

  コレット Lv19

  ラプタ Lv12

  マリー Lv21

  フーコ Lv22

  スラッペ Lv3(※モンスターボックス)


 念話を試してみる。


 『スラッペ、聞こえる?』


 ・・・


 モンスターボックスに入ってるときは念話は通じないようだ。


 「スラッペ出てこい」


 ミドリが念じると箱は光を放ち、スラッペが現れた。便利だけど、地上の魔物でもいけるのだろうか。


 「ラプタ、これに入れる?」


 ラプタはミドリの言ってることが理解できないといった感じで首をコテンとひねって答える。


 「主、そんな小さな箱には入れないぽ」


 やっぱり地上の魔物とダンジョンの魔物は全く違うみたいだ。この違いはなんなんだろう?考えても分かるはずもなく、とりあえず全てのモンスターボックスを【クラフト】に取り込んでおく。


 ■■クラフト Lv4■■

 【素材】

  MP33

  ・・・・・・・・・・

  ・・・・・・・・・・

  モンスターボックス[S] ×6

  モンスターボックス[S] ×1(※ミノタウロス)


 「あれ?」

 「ミドリ、変な顔してどうしたのー?」

 「・・・、たぶん買ったモンスターボックスの中に魔物が入ってる」


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